義歯の種類はいくつある?義歯を使った治療方法や治療ごとのメリット・デメリットについて解説!

義歯の種類はいくつある?義歯を使った治療方法や治療ごとのメリット・デメリットについて解説!

義歯(入れ歯)とは、歯を失った部分を補う治療の際に用いる、人工の歯を使用した取り外し可能な装置のことをいいます。義歯には、総入れ歯や部分入れ歯、保険診療で用いられるものと自費診療で用いられるものなど、さまざまな種類があります。本記事では、義歯の基本事項と種類、義歯が合わなくなる理由や、歯を失った際の義歯以外の治療方法について解説します。

義歯(入れ歯)とは


ここではまず、義歯の基本事項と、義歯の大きな種類である総義歯と部分義歯について説明します。

義歯(入れ歯)の基本事項

義歯とは、むし歯や歯槽膿漏などによって失われた歯を補うための、人工歯を用いた取り外せる装置のことを指します。大きく分けて総義歯と部分義歯の2種類があり、失われた歯の本数によって使用する義歯を選択します。

総義歯と部分義歯(総入れ歯と部分入れ歯)

部分義歯と総義歯は、どちらも欠損した歯を補うための装置ですが、それぞれ異なる状況で適用されます。 部分義歯は、天然歯が一部残存している場合に使用され、欠損している部分だけを補います。部分義歯を固定させるためには、クラスプというバネのような器具や、歯と入れ歯に取り付けるアタッチメントなどが用いられます。これらの器具は、部分義歯を支えとなる自分の歯にしっかりと固定し、装着を安定させるために機能します。

クラスプは主に金属が材質として用いられるワイヤー状のバネのような部品で、残っている自分の歯にかけることで義歯を固定します。見た目が目立ちやすいという欠点はありますが、強い固定力があり、しっかりと義歯を装着させることを可能にします。アタッチメントは、自分の歯と義歯のそれぞれに小さな金属製の部品を取り付け、それらをはめ込むことで義歯を固定します。クラスプよりも外見からは目立ちにくいため、見た目が自然になるというメリットがありますが、保険適用外の治療となるためクラスプを用いた義歯に比べて費用が高額になります。

総義歯は全ての歯が欠損している場合に使用されます。人工の歯を歯茎の役割をする床(しょう)に取り付けて作られており、上顎と下顎に吸盤のように密着させて装着します。総義歯も取り外し可能ですが、通常は就寝時や清掃時を除いて装着したまま過ごすことが一般的です。総義歯の中には、自分では取り外せないものや、取り外せるが外れにくくなっているものもあります。 また、総義歯を口の中で安定させるために、安定剤を用いることもあります。安定剤は正しい方法で使用すれば有効なものですが、誤った使い方をしてしまうと、痛みが生じたり、顎の骨の吸収が進んでしまったり、細菌が繁殖してしまう原因となってしまったりすることがあります。安定剤が必要になるということは、後述する理由で義歯が合わなくなってきている可能性があるため、義歯の装着に違和感を覚えるようになったら、早めに歯科医院で診てもらうようにしましょう。

義歯(入れ歯)の種類


義歯は保険診療で用いられるものと自費診療で用いられるものに分けることもできます。この段落では、保険診療と自費診療の義歯それぞれのメリットとデメリットについて、そしてその種類について解説します。

保険診療の義歯(入れ歯)

保険診療で用いられる義歯の何よりも大きなメリットは、自費診療の義歯に比べて費用が抑えられることです。また保険診療の義歯には、プラスチックで作られているため壊れた場合に修理がしやすい、完成までの工程が少ないため通院期間が短く済むという利点もあります。一方で、材質となっているプラスチックが熱を通しにくいため食べ物の温度を感じにくい、強度や耐久性が劣るため破損を繰り返す可能性がある、オーダーメイドではあるが自費診療の義歯のように精密に作ることはできないというデメリットがあります。

自費診療の義歯(入れ歯)

自費診療の義歯には、天然歯に近い感覚で噛める、強度があるため壊れにくい、食べ物の温度を感じやすい、シリコンでできたものや金属でできたもの、インプラントを用いたものなど様々な選択肢があるといったメリットがあります。デメリットとしては、保険診療の義歯に比べて費用が高額になること、患者さんごとに合わせてフルオーダーメイドで作るため完成までに時間がかかることが挙げられます。 メリットで述べたように、自費診療の義歯には多くの種類があります。ここではその主なものについて紹介します。

・金属床義歯
金属床義歯とは、主な部分が金属で作られた義歯のことです。保険診療で用いられるプラスチックの義歯よりも強度が高いため薄く作ることが可能で、装着時の違和感が少なく、舌の動きを邪魔しないため会話がしやすいというメリットがあります。温度を感じやすいので、食事を美味しく食べられるという利点もあります。一方で、素材となる金属によっては金属アレルギーを引き起こす可能性があることと、自費診療のため費用が比較的高額になるというデメリットがあります。

・ノンメタルクラスプ義歯
通常の部分入れ歯は金属製のバネ状の止め具で保持されますが、この場合、健康な歯を大きく削る必要があります。また金属アレルギーのある方には適用できない、口を開けたときに金属の部分が見えてしまい審美性が損なわれるなどのデメリットもあります。 これに対し、ノンメタルクラスプ義歯はプラスチック製の義歯床を使用しているため、金属アレルギーの患者さんでも安心して使用することができ、健康な歯を大きく削る必要もありません。その上、装着感が良く、義歯を入れていることに気づかれにくいというメリットがあります。 ただし、ノンメタルクラスプ義歯にも欠点があり、従来のものと比較して剛性が低いため適用できる症例が限定される点、素材の耐久性が低いため、3~4年程度で作り直さなければならない点などが挙げられます。

・コーヌスクローネ
コーヌスクローネは、従来の義歯と異なり、金属のバネを使用せず、摩擦力で義歯を固定します。この方式では、残存歯を支台歯として活用し、その支台歯に内冠を装着し、そこに義歯と一体化した外冠を被せる二重構造方式を採用しています。摩擦力によって外冠が内冠に密着するため、外れにくく、自然な噛み心地を得ることができます。取り外しが可能であり、また精密に作られているため支台歯にぴったりとフィットし、汚れなどが入りにくいことから、清潔に保つことも容易です。 コーヌスクローネのデメリットには、内冠を被せるために土台となる歯を削る必要がある点、製作するための技術的難易度が高い点などがあります。

・ミリングデンチャー
ミリングデンチャーは、通常の義歯のように健康な歯にクラスプをひっかけて義歯を支えるという構造ではなく、義歯と支台歯に特殊な加工を施し、その部分に入れ歯をはめ込むという構造になっています。それにより、義歯がずれにくいためしっかり嚙むことができ、支台歯が動きにくいため負荷がかかりにくいというメリットがあります。一方でデメリットとしては、支台歯を多く削る必要がある点、はめ込みが緩くなった際に調整できない可能性がある点が挙げられます。

・インプラントを併用したオーバーデンチャー
インプラントを併用したオーバーデンチャーとは、顎の骨に埋め込まれた人工歯根(インプラント)を利用して、総義歯を固定する方法のことをいいます。従来の総義歯は、歯茎に吸盤のように付けて装着するため、ズレが大きくなったり、食べ物が入ることで違和感が生じることがありました。しかし、インプラントを併用したオーバーデンチャーでは、インプラントによって義歯がしっかりと固定されるため安定感があり、食事や会話がしやすくなります。 インプラントを併用したオーバーデンチャーには、取り外す必要がないAll-on-4やAll-on-6などの治療方法もあります。これらには義歯のズレが少なくなるだけでなく、自然な噛み合わせを得られることや、発音しやすくなること、顎の骨の吸収を防げることなどのメリットがあります。一方で、手術が必要になることや、費用が高額になること、治療期間が比較的長くなることといったデメリットがある点にも留意する必要があります。