血液検査で胃がんのリスクがわかるという「ABC検診」とは何かを、松井太吾先生(まつい内科医院副院長)にMedical DOC編集部が聞きました。
監修医師:
松井 太吾(まつい内科医院)
東邦大学医学部医学科卒業。その後、仙北組合総合病院(現・秋田県厚生農業協同組合連合会大曲厚生医療センター)、東邦大学医療センター大森病院、社会保険中央総合病院(現・JCHO東京山手メディカルセンター)、日産厚生会玉川病院で経験を積む。2022年、神奈川県横浜市に位置する「まつい内科医院」の副院長に就任。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本内科学会認定医。
編集部
「ABC検診」とはなんですか?
松井先生
血液検査による胃がんのリスクスクリーニングのことです。胃がんそのものを見つけ出す検査ではありません。胃がんには「ヘリコバクター・ピロリ」の感染と、それに伴う胃粘膜の萎縮が強く関与しているものがあることがわかっているため、それらに着目することで胃がんのリスクをクラス分けしようというものです。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
松井先生
まず、「ヘリコバクター・ピロリ」が検出されなかった場合(陰性)は、胃がんのリスクが最も少ない「A群」とし、「ヘリコバクター・ピロリ」は陽性で、胃粘膜の状態を表す「血中ペプシノゲン値」が正常である場合は「B群」となります。
編集部
アルファベットのクラス分けにはどういう意味があるのですか?
松井先生
AからDまでの階層があり、順に胃がんのリスクが高くなっていきます。
編集部
さらにリスクが進むとどうなるのですか?
松井先生
ピロリ菌が陽性、「血中ペプシノゲン値」が一定以下・胃粘膜の状態が「中等度萎縮」とみなされた場合がC群となり、「血中ペプシノゲン値」にて胃粘膜の状態が「高度萎縮」とされた場合は、最もリスクの高い「D群」となります。「D群」になると、ピロリ菌が胃粘膜に住めなくなるため、「ヘリコバクター・ピロリ」は陰性になります。
編集部
「ABC検診」ではそのようにして自分の胃がんリスクがわかるわけですね。
松井先生
はい。もしハイリスク群に診断されれば、より積極的に胃内視鏡検査を受けていただくことが必要と判断できます。また、ピロリ菌に感染していた場合、除菌することにより、胃がんのリスクを下げることも可能です。また、低リスクと診断されたとしても、完全に胃がんのリスクがないわけではないので注意が必要です。
編集部
どのように胃がんと向き合えばいいですか?
松井先生
胃がんの早期発見・早期治療のためには、症状が出る前に検査や検診をしっかり受けていただくことが大事です。先ほど解説した「ABC検診」は保険適用外となりますので、「どうしても内視鏡が怖い」という方でなければ、まずは胃カメラ検査を受けていただくことをお勧めします。とくに、30歳以上の方で、これまで検査・検診を受けたことのない方は、まず一度、内視鏡専門の医療機関に相談してみてください。
※この記事はMedical DOCにて<胃カメラ・バリウム・ABC検診の違いをご存じですか? メリット・デメリットも解説>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
配信: Medical DOC
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