橋本病は正式には慢性甲状腺炎といい、甲状腺に慢性的な炎症が起きる病気です。20代後半以降の30代~40代の女性に多くみられます。
自己免疫異常が原因の病気ですが、異常が起きる原因は判明していません。
甲状腺の肥大による首の腫れやむくみが起こり、無気力になりボーっとした状態になることが代表的な症状です。
甲状腺機能に異常がない場合はほとんど自覚症状がありませんが、放置すると心臓に負担をかけて心不全や心筋梗塞など命に関わる病気を引き起こすリスクがあります。
この記事では、橋本病の症状・原因・兆候・放置した時のリスクなどを解説します。詳しくみていきましょう。
監修医師:
濵﨑 秀崇(医師)
東京大学理学部卒業、広島大学医学部卒業。国立国際医療研究センター病院、国府台病院勤務を経て、2024年9月より「うるうクリニック関内馬車道」に勤務。糖尿病を専門に、内科疾患および内分泌疾患を幅広く診療している。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本体力医学会評議員。
「橋本病」はなぜ30~40代で多く発症するのか? 甲状腺機能低下症の発症頻度も解説
※この記事はMedical DOCにて『「橋本病」とは?症状・原因・治療法についても解説!医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
橋本病とはどんな病気?
橋本病とはどんな病気ですか?
橋本病は甲状腺に慢性的な炎症が起きる病気で、正式な病名は「慢性甲状腺炎」です。
甲状腺はのど仏のすぐ下にある臓器で、全身の新陳代謝や成長の促進に関わる甲状腺ホルモンを分泌しています。
甲状腺の病気は女性がかかる割合が多いですが、とくに橋本病の男女比は約1対20~30といわれ、圧倒的に女性の患者が多い病気です。
年齢別では20代後半以降、とくに30代から40代の割合が高いことが特徴です。
甲状腺の病気のことなのですね。橋本病ではどんな症状がみられるのでしょうか?
甲状腺機能が正常な場合、とくに自覚症状はありません。
甲状腺ホルモンは体内の多くの組織の働きを調節しているため、不足すると全身にさまざまな症状が現れます。甲状腺機能の低下により現れる代表的な症状は無気力・疲労感・動作緩慢・むくみ・寒がり・体重増加・便秘などが挙げられます。
ただし、橋本病の患者には必ずこれらの症状が現れるというわけではありません。ゆっくりと進行するため、自覚症状がない場合もあります。
橋本病が発症する原因は何ですか?
橋本病は自己免疫疾患のひとつです。自己抗体が甲状腺を攻撃することで炎症が起こりますが、細菌やウイルスによる感染症ではありません。どのようなきっかけで起こるのかはっきりと判明しておらず、現在では下記のようなさまざまな原因が考えられています。
強いストレス
妊娠・出産
ヨードの過剰摂取
ヨードの過剰摂取とは海藻類・薬剤・造影剤などを多量に摂取した場合です。ヨードは甲状腺ホルモンの原料となりますが、大量に摂取すると甲状腺機能を抑制します。ただし、ヨードの過剰摂取が甲状腺機能低下の原因の場合、ヨードの摂取を制限すると機能が回復します。
橋本病の兆候などがあれば教えて下さい。
発症すると顔・まぶた・唇にむくみが生じるため、表情が乏しくなり顔つきが変わったように見える場合があります。
橋本病を放置することで考えられるリスクは何ですか?
放置すると体調不良が悪化するだけでなく、心臓に負担をかけるリスクがあります。心臓は甲状腺ホルモンの影響を受けやすいため、さまざまな循環器の異常を引き起こします。
甲状腺機能低下症の方は脂質異常症になりやすく、放置すると血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が多い状態になり、動脈硬化・心不全・狭心症・心筋梗塞などの発症に注意が必要です。
まれに「粘液水腫性昏睡」という重篤な合併症を引き起こす場合もあるため、自覚症状がある場合は放置せずに受診しましょう。
編集部まとめ
橋本病は甲状腺の病気の代表で、女性が発症する割合が高いのが特徴です。自覚症状がない場合も多いため、気づかずに進行している場合もあります。
甲状腺の機能低下に伴い首の腫れ・むくみ・無気力などさまざまな症状が現れますが、ほとんどの患者は自覚症状がありません。
しかし、甲状腺の機能が低下した状態を放置すると心臓に負担をかけるため、心不全や心筋梗塞など重篤な症状を引き起こすリスクがあります。
健康診断で甲状腺機能の低下を指摘された場合など、橋本病の可能性が疑われる場合は早めにかかりつけの内科や耳鼻咽喉科を受診してください。
参考文献
橋本病(慢性甲状腺炎)|日本内分泌学会
橋本病|恩賜財団済生会
妊娠と橋本病|国立成育医療研究センター
ヨウ素について|環境省
配信: Medical DOC
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