腹部大動脈瘤をご存じですか?
本記事では以下の点を中心に紹介します。
・腹部大動脈瘤の治療法
≫「腹部大動脈瘤の前兆となる5つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!
※この記事はMedical DOCにて『「腹部大動脈瘤」になりやすい人や症状・原因はご存じですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
腹部大動脈瘤の治療法
腹部大動脈瘤の治療法とはどのようなものですか?
腹部大動脈瘤の治療法は以下の通りです。
外科手術: 大動脈瘤が一定の大きさや成長速度を超える場合、外科手術が必要な場合があります。手術では、異常な拡張部分を切り取り、人工血管で置き換えます。これにより、大動脈瘤の破裂や破裂のリスクを軽減することが可能です。
内視鏡的手術: 一部の腹部大動脈瘤では、内視鏡的手術が選択されることもあります。内視鏡を用いて異常な部分を修復し、人工血管を挿入します。この方法は、開腹手術より侵襲が少なく、回復期間も短いとされています。
経過観察: 大動脈瘤が小さく、成長が緩やかである場合、定期的な経過観察が行われることがあります。医師は定期的に検査をし、大動脈瘤のサイズや成長をモニタリングします。必要に応じて治療の選択肢を検討します。
治療法は症例や患者の状態によって異なる場合があります。
腹部大動脈瘤はどのタイミングで治療しますか?
腹部大動脈瘤の治療は、瘤の大きさや成長の速度、患者の症状などを考慮して決定されます。
直径が5.5センチメートル以上の場合:一般的に、腹部大動脈瘤が5.5センチメートル以上に成長すると、手術的な治療が推奨されます。このサイズ以上の瘤は破裂のリスクが高まるため、早期の治療が必要です。
瘤の急速な成長:腹部大動脈瘤が短期間で急速に成長する場合、治療の検討が必要です。成長速度は個人によって異なるため、定期的な検査が重要です。
症状の出現:腹部大動脈瘤が症状を引き起こす場合、例えば腹部や背中の痛み、脈拍の異常など、治療の必要性が高まります。
ただし、個別の症例によって異なる場合もあります。治療のタイミングは、患者の状態を総合的に評価し、心臓血管外科医の判断に基づいて決定されます。
腹部大動脈瘤のセルフチェック方法を教えてください。
腹部大動脈瘤のセルフチェック方法は、まず横になり、腹部をゆっくりと触診してください。指の腹を使い、腹部中央の上部から下部にかけて、張りや膨らみがあるかを感じます。腹部が通常よりも膨らんでいる場合や、パルスが感じられる場合は注意が必要です。特に腹部の側面に広がるパルスが感じられる場合は、大動脈瘤の可能性があります。もし疑わしい症状がある場合は、直ちに医師に相談しましょう。大動脈瘤は重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、早期発見と治療が重要です。
腹部大動脈瘤になった場合どのようなことに注意すれば良いですか?
腹部大動脈瘤の予防には、以下のような生活習慣の改善が重要です:
メタボリックシンドロームの予防: メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に高血糖、高血圧、高脂血症のうち2つ以上が合併した状態を指します。これらの症状が重なると、動脈硬化性疾患のリスクが相乗的に高まります。したがって、体重管理を行い、適度な運動を心掛け、バランスの良い食事を摂ることで、メタボリックシンドロームを予防し、腹部大動脈瘤のリスクを低減することが可能です。
血液の健康管理: コレステロール値や中性脂肪値、血糖値を適正な範囲に保つことは、動脈硬化を予防し、腹部大動脈瘤のリスクを低減するのに役立ちます。定期的な健康診断を受け、必要に応じて医師の指導のもとで薬物療法を行うことも重要です。
禁煙: 喫煙は、腹部大動脈瘤のリスクを高め、既存の大動脈瘤の拡大を加速させることが知られています。したがって、喫煙をやめることは、腹部大動脈瘤の予防にとても重要です。
血圧管理: 高血圧は、大動脈瘤のリスクを増大させます。血圧を適正な範囲に保つために、塩分の摂取を控えめにし、ストレス管理を行い、適度な運動を行うことが推奨されます。
これらの生活習慣の改善は、腹部大動脈瘤だけでなく、心血管疾患全般の予防にも役立ちます。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
腹部大動脈瘤は、知らないうちに進行することもあります。自身の健康管理には常に注意を払い、定期的な健康チェックを受けることをおすすめします。早期発見と治療は重要です。症状やリスク要因に気づいたら、迅速に医師に相談しましょう。
編集部まとめ
腹部大動脈瘤について紹介してきました。
・腹部大動脈瘤は、主に腹部の大動脈が局所的に拡張し血管壁が薄くなる病気のこと。
・腹部大動脈瘤になる原因は、「血管の老化」「喫煙」「高血圧」「遺伝」「硬化斑」などがある。
・大動脈瘤が一定の大きさや成長速度を超える場合、手術を受ける必要がある。
これらの情報が腹部大動脈瘤について知りたい方の参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献
腹部大動脈瘤(済生会)
腹部大動脈瘤って?(日本血管外科学会)
腹部大動脈瘤(国立循環器病研究センター)
配信: Medical DOC
