いびきは心臓病や脳卒中との関連もあり、「たかがいびき」ではありません。いびきに対するレーザー治療を検討されている方は、治療の目的や内容、さらには効果が出るまでの期間なども気になるかと思います。レーザー治療後、どのくらいでいびきが解消されるのでしょうか? そこでいびきのレーザー治療について、皆川クリニックの皆川先生に詳しく解説してもらいました。
監修医師:
皆川 真吾(皆川クリニック)
平成13年、秋田大学医学部医学科を卒業後、秋田大学医学部附属病院や虎の門病院、聖路加国際病院などで経験を積む。令和2年に皆川クリニックを開設し、院長となる。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器腹腔鏡技術認定医、CVP(接触式レーザー前立腺蒸散術)プロクター。
いびきって治療が必要なの?
編集部
どうしていびきが出るのですか?
皆川先生
いびきは、喉の奥にある「軟口蓋」や「口蓋垂」と呼ばれるところが振動することで起こります。寝ている間に、この部分が弛緩(しかん)して気道を狭めたり、塞いだりしてしまうため、空気が通るたびに振動し、いびきが発生するのです。
編集部
喉が振動しているのですね。
皆川先生
そうなのです。本人は気が付いていない場合も多いのですが、空気の通り道が塞がれて呼吸するたびに音が出るため、ご家族やパートナーの眠りが妨げられて困っているというケースは多く見られます。
編集部
周りの人が熟睡できないというのはよくある悩みですね。
皆川先生
じつは、熟睡できていないのは周りの人だけではありません。いびきをかいていると、熟睡しているかのような印象を持つかもしれませんが、気道が閉じて空気が取り込めなくなっているので、本人も決して熟睡できているわけではないことがほとんどです。
編集部
そうなのですね。
皆川先生
さらに、いびきは単なる睡眠の妨げだけでなく、命に関わる病気のサインの可能性もあります。睡眠中に気道が塞がれ、呼吸が止まる状態を「無呼吸」といい、これが繰り返されるのが睡眠時無呼吸症(SAS)です。SASは、放置すると高血圧や心臓病、脳卒中などの原因となるため、早めの対策が必要です。
いびきやSASにはどのような治療があるの?
編集部
SASは聞いたことがあります。
皆川先生
いびきそのものは病気ではないのですが、放置しておくと先述のような病気のリスクが上がります。突然死との関連も示されていますし、日中の居眠りも増えてしまうため、交通事故などを起こすリスクも約6倍です。心臓に負担がかかるため、夜間頻尿などの症状も伴います。「たかがいびき」と考えず、早めに医療機関に相談することをお勧めします。
編集部
SASは医療機関で治療できるのですか?
皆川先生
SASの治療は、症状の程度によって異なります。軽症の場合、マウスピースや寝具の工夫などで気道が狭まるのを防ぐことで、症状の改善が期待できます。中等度から重度の場合は、CPAP療法という治療法が有効です。さらに、肥満はSASを悪化させる要因の一つなので、減量することで症状が軽くなることもあります。
編集部
CPAP療法とはなんですか?
皆川先生
睡眠中に専用の機械を装着して鼻や口に空気を送り込み、気道を常に開いた状態に保つことで、無呼吸を防止する方法です。安全で効果的な方法ですが、あくまでも「CPAPをつけている間は気道が塞がれない」というアプローチのため、CPAPをやめると元に戻ってしまいます。マスクをつけて眠ることに抵抗がある、旅行や出張の際なども機械を持ち歩く必要があるといった理由から、医師からCPAP療法を勧められた人の約3割が、治療をしない、もしくは途中で辞めてしまうというデータもあります。
編集部
CPAPを使わずに症状を軽減するためにはどうしたら良いのでしょうか?
皆川先生
鼻腔を広げる手術や、レーザーを用いて咽頭部の口蓋垂を切除する手術などがあります。これらの外科的治療は根治が期待できる一方で、術後しばらくの間、食事や会話に制限がかかることが多いので注意が必要です。
編集部
手術に抵抗がある人はどうしたら良いですか?
皆川先生
特殊なレーザーを用いた治療法もあります。この治療法は、咽頭部を切開せずに、レーザーの熱で組織を引き締め、気道を広げるというもので、従来の手術に比べて術後の回復が早く、痛みも少ないというメリットがあります。
配信: Medical DOC