心|たかしまてつを

心|たかしまてつを

高校生のとき、自転車で30分くらいの距離にあるガソリンスタンドでアルバイトをしたことがあります。朗らかでやさしい店長、陽気で明るいお姉さんやお兄さんがかわいがってくれて楽しい職場でしたが、年輩のGさんに対してだけはちょっと苦手意識がありました。あまり話しかけてくれないし、いつもムスッとしている印象でちょっと怖かったんです。ある雨の日、いつものように自転車でガソリンスタンドへ向かう途中でカーブを曲がって来た車とぶつかってしまいました。幸い車は自転車だけに当たり、ぼく自身はボンネット上にうまく転がり軽い打ち身程度で済んだんですが、それを機にバイトは辞めることにしました。店長には事故当日に連絡を入れただけだったので、後日辞めることを徒歩で伝えに行きました。ガソリンスタンドに着いたとき、「おっ、来たな」と満面の笑みで真っ先に迎えてくれたのはGさんでした。その瞬間、なぜか涙が出そうになり、ぼくは辞めることだけ伝えると踵を返してそそくさと立ち去ってしまいました。黙々と帰宅の歩を進めながら、勝手な想像でGさんのイメージをつくっていたことを恥じ、もっと自分から話しかければよかったと後悔しました。表面だけでひとの心はわからないものだということを学べた貴重なアルバイトになりました<´ `

関連記事:

幻冬舎plus
幻冬舎plus
自分サイズが見つかる進化系ライフマガジン。作家・著名人が執筆するコラム連載、インタビュー、対談を毎日無料公開中! さまざまな生き方、価値観を少しでも多く伝えることで、それぞれの“自分サイズ”を考え、見つける助けになることを目指しています。併設のストアでは幻冬舎の電子書籍がすぐに立ち読み・購入できます。ここでしか買えないサイン本やグッズ、イベントチケットも。
自分サイズが見つかる進化系ライフマガジン。作家・著名人が執筆するコラム連載、インタビュー、対談を毎日無料公開中! さまざまな生き方、価値観を少しでも多く伝えることで、それぞれの“自分サイズ”を考え、見つける助けになることを目指しています。併設のストアでは幻冬舎の電子書籍がすぐに立ち読み・購入できます。ここでしか買えないサイン本やグッズ、イベントチケットも。