冴えた営業トーク、魅力的な新商品の企画書、ピンチの際のうまい言い訳……「優秀だな」「頭がいいな」と羨望の眼差しを向けてしまうあの人は、どうしてキラリと光る「ひらめき」を連発することができるのか。「ひらめき」のメカニズムと誰でも実践可能なメソッドを解説する『いつもひらめいている人の頭の中』(幻冬舎新書)より、一部抜粋してお届けします。
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日本経済が弱くなったのは「ひらめき」が失われたから?
最近は元気がないと言われていますが、かつては日本も多くの革新的な商品を生み出してきました。
特に1980年代から2000年頃にかけては、数多くの「ひらめき」からたくさんの世界的なヒット商品が生まれた時代だったのです。
今でこそ音楽は、スマートフォンで気軽に楽しむことが当たり前になっていますが、少し前までは応接間のソファに座ってスピーカーで聴く、あるいは部屋のラジカセで聴くのが普通でした。
そんな常識を打ち破ったのが、ソニーの「ウォークマン」です。それまで音楽は家の中で楽しむものだったのに対し、ウォークマンは「いつでも、どこでも音楽を楽しめる」という全く新しい体験を提供しました。
この製品がもたらした体験が、世界中の人々のライフスタイルを大きく変えました。スティーブ・ジョブズもこのウォークマンに深く感銘を受けた一人です。
ジョブズは常々「ソニーには私たちが学ぶべきことがたくさんある」と語っていて、ソニーの製品デザインや技術力から多くの影響を受けたことを公言していました。「iPod」や「iPhone」を生み出したのも、ソニーへの憧れが背景にあったとされています。
ウォークマン以外にも、ソニーが開発したものには「CD」や「ハンディカム」「プレイステーション」、そして「トリニトロンカラーテレビ」などがあります。
自宅で映像や映画を観るのに欠かせない「DVD」も、ソニーが開発したDAT(Digital Audio Tape)を基にした映像のデジタル処理技術から生まれました。
他の会社の例では、任天堂が開発した「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」は、現代のビデオゲームやスマホゲームの原点となり、これもまた日本のひらめきが生んだ世界的な成功例です。
環境への配慮が求められる中、電気自動車(EV)の先駆けとなった「ハイブリッドカー」もトヨタが開発して世界中でヒットしました。また今のスマートフォンの原型となる「iモード」もNTTドコモによって生み出され、携帯電話によるインターネット利用が世に広がるきっかけをつくりました。
こうした日本発の革新的な製品は、2000年頃までは次々と誕生していました。しかし、21世紀に入ってからは、日本発の画期的な製品がほとんど見られなくなってしまいました。
日本経済の勢いが衰えた一因には、この「ひらめき」や「革新的なアイデア」が出なくなったのが関係しているのかもしれません。
これからの日本にとって最も必要なのは、かつてのような「ひらめき」を再び取り戻し、日本発のアイデアを生み出すことではないでしょうか。
1%のひらめきがあれば99%の努力は不要
発明家トーマス・エジソンの有名な言葉「1%のひらめきと99%の努力」。
この言葉は、「努力が才能に勝る」という解釈で語られることが多いようです。しかし、エジソンが本当に伝えたかったことは、少し違っていたと言われています。
エジソンが言いたかったのは、「ひらめき」がなければ、その後のどんな努力も成果に結びつかないということです。
逆に言えば1%のひらめきがあれば、残りの99%の努力が無駄になることは避けられるということ。
もちろんエジソン自身、粘り強く努力を重ねた人でした。毎日長時間働き続け、電球のフィラメント材料を見つけるために1万回以上の実験を繰り返したという逸話は、彼がどれほど努力したかという象徴的なエピソードです。でもただ努力しただけではなく、最初の「ひらめき」があったからこそ、その努力が実を結んだのですね。
ひらめきは、ただ待っているだけでは生まれません。しかし少しの工夫や視点の転換で、誰にでも訪れるものです。そのひらめきを得るためには、私たち自身が自分の可能性を閉じ込めないことが大切です。
配信: 幻冬舎Plus