創造力の限界は誰でも超えることができる
「ひらめき」は、誰にでも可能であると述べました。
具体的に言えば、脳の仕組みを理解することで、ひらめきや創造力を誰もが手に入れることができます。なぜならどちらも、私たちに備わっている基本的な機能だからです。
私たちは今からおよそ40億年前に、原始の海で生まれて以来、創造と進化を続けてきました。この長い進化の過程で、創造という力は私たちの遺伝子に組み込まれています。創造する力やひらめく力は、特別な才能ではなく、むしろ私たちにとって当たり前のものなのです。
創造性やひらめきがどのように生まれるのか、そのメカニズムは100年以上にわたる研究で徐々に明らかになってきています。このメカニズムを理解することで、誰でもひらめきを感じ、創造力を発揮できるようになるでしょう。
あなたが「ひらめきは難しい」とか「自分には限界がある」と思ってしまうのは、あなた自身がその限界をつくり出しているからにほかなりません。
脳には、限られた範囲の情報しか認識しない仕組みがあります。これを「バイアス」と呼びますが、この仕組み自体は私たちが物事に注意を払ったり、危険を回避するためなど自分自身を守るために必要なものです。
しかしこのバイアスによって、脳は無意識に多くの情報を見落としてしまっているのも事実です。
ハーバード大学の附属病院で行われた有名な実験があります。この病院に勤める25名の医師に、肺のCTスキャン画像を見せて、がん細胞があるかどうか診察をしてもらいました。実はその画像には、平均的ながん細胞の約50倍の大きさのゴリラの画像が写っていたのですが、25人のうち21人の医師たちはこのゴリラに気づきませんでした。視線は何度もゴリラの上を通過していたにもかかわらずです。
「肺の中にゴリラがいるはずがない」というバイアスが、見えるものも見えなくしていたのです。
このように、脳は自分が信じる常識の範囲内だけで答えを探そうとして、それ以外のことは見過ごしてしまうことがあります。
もっと身近な、私たち誰もが経験している例として「カクテルパーティ効果」がありますね。
パーティ会場のような、多くの人が話しているにぎやかな場所では、周囲の声は耳に入っているものの、その内容はほとんど意識されません。しかし後ろから誰かに自分の名前を呼ばれた瞬間、はっとして振り返ったという経験があるでしょう。
こういうのも脳が自分にとって重要な情報だけを選び取り、余計な(と脳が判断した)情報は捨て去ってしまう仕組みがあるからです。
このように脳は無意識のうちに「情報の関所」を設けて、必要だと感じたものだけを通過させています。
しかし時として、この関所が創造力やひらめきを妨げることがあります。「肺の中のゴリラ」のような、「世紀の大発見」や「イノベーション」を私たちが実際に目にしていても、「そんなことはありえない」とわざわざ目を閉じてしまうのです。
つまり私たちは自分の脳にリミッターをかけてしまっているのです。
新しいアイデアを思いつくためには、このリミッターを外すことが大切です。そのことが、私たちが創造力の限界を超える第一歩です。
配信: 幻冬舎Plus
