『明日に続くただいまを』が話題 / (C)横山よ紗/双葉社
コミックの映像化や、小説のコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、Chillche(チルシェ)にて連載された、横山よ紗さんが描く『明日に続くただいまを』をピックアップ。
横山よ紗さんが2月3日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、2,000件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、横山よ紗さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
■同級生とルームシェアする2人の男子学生
『明日に続くただいまを』(1/36) / (C)横山よ紗/双葉社
主人公・冴木洋輔は、高校の同級生である矢野潤也と福岡から上京し、大学に通うためルームシェアをしている。矢野は他の高校だった生徒がその名を知るほど、陸上界では有名な長距離選手の一人であった。しかし、怪我が原因で引退。そんな矢野を放っておけなかった冴木は、上京を機に同居を提案し今に至る。
一緒に暮らすうち、矢野のさまざまな一面を知るなか、彼が“思ったより距離が近い”ことも知っていく。他の友達にも同じようにしているのか、と考えるとなぜか複雑な気持ちになる冴木。高校時代に抱いていた“ただ一緒にいたい”という気持ちが、より複雑になっていることに気づき始めていた。
冴木のシャンプーを矢野が使ったことを巡って少し気まずくなった翌日、起きるとすでに矢野は登校しており、机の上には手作りのバナナサンドとメモが置かれていた。矢野を傷つけてしまったのではないかと案じてた冴木は、サークルで友人から合コンに誘われる。矢野に対し複雑な気持ちを抱いてしまわないためにも、外に目を向けようと合コンに参加することに。
するとそこへ矢野が突然やってきて、一緒に帰らないかと言う。一瞬にして合コンよりも矢野と一緒に帰宅することを選んだ冴木。モヤモヤした気持ちは、矢野と話すうちに普段通りに戻っていく。
しかし、ゼミの課題と准教授の開発研究の手伝いで来月から泊まりが多くなる、と言う矢野の言葉にまたもや複雑な気持ちが芽生える冴木なのだった…。
作品を読んだ読者からは、「尊さが限界突破した素晴らしい作品」「名作としか言いようがない」「キュンキュンしっぱなしで苦しいくらい」など、反響の声が多く寄せられている。
■作者・横山よ紗さん「その過程をどれだけ丁寧に描けるかを大切に…」
『明日に続くただいまを』(34/36) / (C)横山よ紗/双葉社
――『明日に続くただいまを』は、どのようにして生まれた作品ですか?きっかけや理由などをお教えください。
最初にいくつかネタ案を提出したのですが、その中から「大学生同居BL」というテーマが採用されました。ちょうど子供ではないけれど大人にもなりきれない等身大の男の子たちを描きたいと考えていたので、このテーマが選ばれたことがとても嬉しかったです。
また、私自身が福岡在住ということもあり、作中に方言を取り入れたいと思いました。さらに母校が陸上の強豪校だったことから、その経験を生かして物語の設定に盛り込んでいます。
物語の構成については、登場人物たちが無自覚だった想いを自覚していく過程を描くために「現在」と「過去」を行き来するストーリー展開をあらかじめ決めていました。ただその流れをできるだけ説明的にせず、読者の方に自然に受け取ってもらえるようにすることを意識していたのでネーム作業にはかなり苦戦しました。
――今作を描くうえで、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。
物語の展開として最終的に冴木と矢野が結ばれることは読者の皆さんも予想していると思います。だからこそその過程をどれだけ丁寧に描けるかを大切にしました。キャラクターの性格や思考パターンから逸脱しないよう心がけつつ心情や情景にリアリティを持たせることを意識しています。
また先ほども触れたように物語は「現在」と「過去」を行き来する構成になっており、さらに過去の時系列がバラバラなため読みやすさには特に気を配りました。話の進むテンポを調整しながら自然に物語が頭に入ってくるよう工夫しています。その甲斐もあってか「読みやすかった」といった感想を多くいただけたのはとても嬉しかったです。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
特に気に入っているのは第1 話の引越しの回想シーンで矢野が「まだここじゃ俺たちのこと俺たちしか知らんのやなーって思って」というセリフです。
一見すると前向きな言葉のように聞こえますが、実は二人の関係の閉鎖感やそれにまだ気づいていない若さ、不安定さといった要素を含ませています。こうした二重の意味を持たせたセリフを考えるのが好きなので作中には他にもいくつか散りばめています。気づいてもらえたら嬉しいですね。
――普段作品を創作するうえで、読者をキュンとさせるために意識していることがあればお教えください。
個人的にじんわりとした関係性が好きなので、お互いが一緒にいられることを自然と嬉しく感じているような雰囲気作りを意識しています。
『明日に続くただいまを』は、すれ違いながらもお互いに想い合っている物語なのでラスト以外ではあまり直接的な言葉を使っていません。その代わり「好き」という感情が表情や仕草といった言葉以外の部分から伝わるよう丁寧に描きました。
――横山よ紗さんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。
さまざまなテイストの作品を描けたら嬉しいなと考えています。まだ自分にとって一番しっくりくる作風が何なのか模索している段階でもあるので、これからも色んなことに挑戦しながら読者の皆さんに「読んでよかった!」と思ってもらえる作品を届けていきたいです。
――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
『明日に続くただいまを』を読んで頂きありがとうございます!
大切に描いてきた思い入れのある今作を数ある作品の中から見つけて頂けて本当に本当に嬉しく思います。冴木と矢野の話は物語上では完結しましたが、これからの2人の未来を想像してもらえたら何よりです。
配信: WEBザテレビジョン
関連記事: