【訃報】クレイジーケンバンドのドラム・廣石惠一さん 「脳出血」の原因と予防法を医師が解説

【訃報】クレイジーケンバンドのドラム・廣石惠一さん 「脳出血」の原因と予防法を医師が解説

クレイジーケンバンドの公式SNSにて、同バンドの元ドラマーとして活躍した廣石惠一さんが、「脳出血」のために死去したことが報告されました。64歳でした。廣石さんは「杉山清貴&オメガトライブ」でもドラマーとして活躍されました。そこで、メディカルドックの監修医中川龍太郎先生が、脳出血(脳内出血)の原因・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。

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監修医師:
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)

奈良県立医科大学卒業。臨床研修を経て、医療法人やわらぎ会、医療法人資生会南川医院に勤務。生活習慣病や肥満治療、予防医学、ヘルスメンテナンスに注力すると同時に、訪問診療にも従事している。日本プライマリ・ケア連合学会、日本在宅医療連合学会、日本旅行医学会の各会員。オンライン診療研修受講。

「脳出血(脳内出血)」とは?

脳出血(脳内出血)とは、脳実質内(脳みその中)の血管が破れて出血してしまう病気です。脳実質内で血腫という血のかたまりができてしまい、近くの脳組織を圧迫することでさまざまな症状が現れます。特徴的な症状には、突然の頭痛や意識消失、嘔吐、麻痺、意識障害などがあります。
脳出血の診断は、頭部の画像検査で行います。緊急のCT検査やMRI検査によって診断されることが多いです。
受診すべき診療科は脳神経外科です。各検査の結果をもとに、治療方針が決定されます。血腫のサイズが小さい場合は、血圧を厳格に管理しつつ入院下で経過観察やリハビリを行います。一方、血腫のサイズが大きい場合や位置が悪い場合は、手術で血腫を取り除くことが推奨されています。

脳出血(脳内出血)の主な原因

高血圧

脳出血(脳内出血)の原因として一番に考えられるのが高血圧です。高血圧が長期間続いていると、脳血管の壁へのダメージが徐々に蓄積していきます。その結果、動脈硬化を引き起こし、本来血管に備わっているはずの弾性(柔軟性)が損なわれ、血圧上昇によって破れやすくなってしまいます。また元々血管が脆い体質(先天性疾患)の方も、高血圧が脳出血の原因になります。正常範囲の血圧であればそうそう破れることはありませんが、高血圧をきっかけに脆い血管壁に過剰な圧力がかかり、血管が破れて出血してしまいます。
普段から血圧が高かったり、健康診断などで指摘された場合は、「大丈夫だろう」と甘く見るのではなく、必ず医療機関を受診しましょう。受診する診療科は一般内科です。緊急性はありませんので日中に受診してください。

喫煙

脳出血(脳内出血)の原因として次に考えられるのが喫煙です。タバコを吸うと、ニコチンの作用によって脳の血管が収縮(細く縮むこと)します。その結果、脳血管への圧力が上がり、脳血管に異常な圧力がかかるために出血を起こしやすくなります。またこの作用自体が血管壁を傷つけて動脈硬化を引き起こします。ここでまた血圧上昇によって脳血管が破れやすくなるというわけです。
あらゆる病気の予防という観点から禁煙を強くお勧めしますが、特に脳出血において喫煙は非常に大きなリスクとなります。脳出血を予防するのであれば、まずは禁煙から始めましょう。自分の意思だけでやめられない場合は、禁煙外来を行なっている医療機関を受診することをお勧めします。緊急性はありませんので日中に受診してください。

肥満

脳出血(脳内出血)の原因として、ほかに考えられるのが肥満です。肥満は、多くの健康上の問題を引き起こす要因の一つとして知られていますが、脳出血との関連性も注目されています。ただ、肥満そのものがリスクというよりは、肥満の結果みられる各病気が原因になると考えてください。まず肥満は高血圧の主要なリスクの1つです。先述のように高血圧は脳出血の原因になります。また、生活習慣から肥満になった方の場合、多くの例で脂質異常症や糖尿病が見られます。これらの病気は血管を傷つけ、動脈硬化につながり、脳出血のリスクを高めます。
脳出血だけでなく、さまざまな病気の予防という観点でも肥満をどうにか改善することは非常に有効です。高血圧や脂質異常症、糖尿病などの病気の治療は行いつつ、並行して食習慣や運動習慣の改善を行うことが重要です。
ダイエットや減量についても自分の意思や知識だけで頑張ろうとせず、医療機関で相談してみましょう。というのも、世間で流行っているダイエットが、医学的な観点で、あるいは、本人の病状に適していない可能性があるためです。一般内科を受診して相談してみましょう。緊急性はありませんので日中に受診してください。

もやもや病

脳出血の原因としてもやもや病が原因になることもあります。
もやもや病とは、主に脳の主要な動脈である内頚動脈の末端が狭くなったり閉塞してしまうことで、その周辺の細い血管が異常に増える病気のことを指します。この病名は、脳の動脈に造影剤を流した検査の際に、細かくもやっとした血管が見られることに由来しています。初期の段階では、特に自覚症状がないことが多いです。しかし、病状が進行すると、脳の血流が不足することで、一時的な意識消失や手足の麻痺といった症状が出現することがあります。
有名なエピソードしては、小児で「激しい運動や啼泣(声を上げて泣くこと)やハーモニカ演奏、シャボン玉遊び、熱いものを冷ます」といった息を大きく吐く行為の際に、手足に力が入らなくなったり意識障害やけいれん、頭痛の発作が起こる、というものです。
疾患の原因はまだ明らかにされていませんが、遺伝的な要素が関与することが示唆されています。
頭痛や手足のしびれ、発作などの症状を感じた方、特に小児の場合は、脳神経内科や脳神経外科を早めに受診することをおすすめします。適切な診断と治療が必要です。

アミロイドアンギオパチー

脳出血の原因としては、脳アミロイド血管障害(アミロイドアンギオパチー)と言う病気も考えられます。アミロイドアンギオパチーとは、脳の血管壁に「アミロイド」と呼ばれる特定のたんぱく質が蓄積することにより、血管が脆くなり、出血しやすくなる脳の疾患です。このアミロイドの蓄積は、主に高齢者に見られ、病気の進行に伴って脳内出血を引き起こすリスクが高まります。
初期段階では自覚症状が少ないことが多いです。しかし、脳内出血や微小出血(ごく少量の出血)が繰り返されると、頭痛、意識障害、麻痺やしびれ、言語障害などの症状が現れることがあります。
アミロイドアンギオパチーの正確な原因は明らかになっていませんが、高齢化と共にその発症率は増加していることが知られています。
もし、突然の頭痛や意識状態の変化、手足の麻痺などの症状が現れた場合は、脳出血を起こした可能性がありますので早急に受診することが重要です。専門科は脳神経内科や脳神経外科です。

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