監修医師:
五藤 良将(医師)
防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
貧血性母斑の概要
貧血性母斑(ひんけつせいぼはん)は、血管の奇形によって発生する白斑のことです。一見メラニン色素の減少による白斑に見えますが、貧血性母斑は皮膚の毛細血管の機能的な特徴によって生じているものであり、無症状で健康上の問題はありません。
特徴的なのは、入浴や運動などの体温の上昇で周囲の皮膚が赤くなった際に、貧血性母斑の部分だけが反応せず白く残るという点です。
貧血性母斑は身体のどの部分にも生じますが、とくに前胸部に好発します。人口の約1〜2%に認められ、多くの場合は気づかれないまま過ごしていることもあります。
出典:医学書院医療情報サービス「貧血母斑」
貧血性母斑は健康な人にも見られますが、神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)などの症状として現れることがあるため、貧血性母斑が出現した場合は医療機関を受診することをおすすめします。
貧血性母斑の原因
貧血性母斑の原因は先天的な血管の奇形によるものです。
通常、皮膚の色は、血管が体温調節をするために拡張と収縮を繰り返すことで赤くなります。しかし、貧血性母斑が生じている部位では奇形した血管がカテコールアミン(交感神経系に作用を及ぼす神経伝達物質)という物質に過敏に反応し、常に収縮して血流が制限された状態になることで、皮膚が赤く変化せず白い斑点が生じます。
これらは生まれつきの血管の奇形によって生じると言われていますが、奇形が生じる原因については明確にわかっていません。
重要なのは、貧血性母斑はメラニン色素の減少や欠損によって生じる尋常性白斑や脱色素性母斑とは全く異なるメカニズムで発生し、原因も異なるという点です。
貧血性母斑はメラノサイトの作用に異常はなく、通常は異常所見が認められません。あくまでも血管の機能的な反応性の違いによって生じる現象です。
ただし、神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)のサインとして現れていることもあるため、貧血性母斑が皮膚に見られた場合は、医療機関を受診することが望ましいといえます。
配信: Medical DOC