危険運転は「あいまい」、悪質事故の遺族が法務大臣に要望 速度とアルコール濃度に「明確な数値基準」求める

危険運転は「あいまい」、悪質事故の遺族が法務大臣に要望 速度とアルコール濃度に「明確な数値基準」求める

法制審議会で検討されている自動車運転処罰法の改正をめぐり、悪質な交通事故の被害者遺族でつくるグループは3月28日、法律上の「危険運転」の類型に、速度とアルコール濃度に関する明確な数値基準を追加するよう求める要望書を鈴木馨祐法務大臣と法制審議会・刑事法部会に提出した。

要望書を提出したのは、「高速暴走・危険運転被害者の会」。これに先立って、東京・霞が関で記者会見を開き、出席した遺族は「信じられない速度でも危険運転にしてもらえなかった。遺族が納得のいく形に少しでも近づいてほしい」とうったえた。

●あいまいな「進行制御が困難」という文言

要望書では、自動車運転処罰法に定められている危険運転の類型について、「進行制御が困難」という文言があいまいなため、検察庁や裁判所の判断において相違が多いと指摘している。

そのため、危険運転致死傷罪に該当すると思われるケースでも、過失運転致死傷罪に「認定落ち」されてしまうことが多いとし、速度とアルコール濃度のそれぞれに明確な数値基準を設けるよう求めている。

加えて、数値基準を設けることで、判断がまちまちにならず、国民の理解も得られるとした。一方、具体的な数値については、「交通・道路環境によるため、規則に落とし込むのが適切」とするにとどめた。

●時速160キロでも「制御困難」と認められなかった現実

この日の記者会見に出席した「被害者の会」の共同代表、佐々木多恵子さんは2023年2月、オートバイの事故で夫の一匡(かずただ)さんを亡くした。

この事故では、追突した車を運転していた被告人が、法定速度を100キロ上回る「時速160キロ」を超えるスピードで運転していたものの、当初、過失運転致死罪で起訴されていた。

1年4カ月にも及ぶ署名活動や追加捜査などを経て、昨年10月、危険運転致死罪に訴因変更されて、裁判は継続している。

佐々木さんは「誰もがおかしいと思う速度の事故ですら、制御困難として認められない。遺族が声を上げなければ、ここまで勝ち取れないのかと感じた。明確な基準があれば、私たちと同じ道をたどらないで済む」と話した。

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