人生最長14泊15日キャンプ|大石祐助

人生最長14泊15日キャンプ|大石祐助

2025年1月1日。キャンプ場にいた。

野で迎えた新年、元旦から人生最長14泊15日のキャンプが始まった。

 

大晦日。2週間のテント泊に挑む前夜である。

 

巳年はどんな年になるかなんてどうだっていい。明日から冬の野山でサバイブできるのか、15日間風邪をひかずにいられるのか、それだけである。

年越し蕎麦に紅白歌合戦、除夜の鐘といった大晦日なるものすべてを諦めて、21時には床についた。

人生最長の14泊15日を共にしたテント。

迎えた新年。

早朝、新潟を発つ。その心境は、大航海時代に世界一周を命じられたマゼランが出航前の港で、最愛の妻と子と今生の別れを惜しんだ、朝日がさんさんと降り注ぐあの朝と同じだった。

 

現実には、新潟で帰りを待ってくれている人などひとりもいないのだが。

ああ、はっぴーにゅーいやー。

 

目的地である大阪のキャンプ場に到着し、テントを設営する。

ここに15日間住むのだ。いつもより念入りにペグを打ち込む。テーブルやチェアを運び、ベッドルームやリビング、キッチンと作り上げていく。

完成し、リビングに置いたチェアに腰掛けたとき、呟いていた。もう家やん。

 

不安は消え去り、自信に変わる。

15日間、自分はここで生きていける。謎の自信が沸いてきた。

 

翌朝、確信になる。

 

氷点下。テントの表面はバキバキに凍っている。吐く息の白さが鏡餅を思わせる。めでたい。

ケトルを火にかけ、ドリッパーにフィルターとコーヒー豆をセットする。お湯が沸くのを確かめたら、ガタガタと震えながらゆっくりと注ぐ。コーヒーの香りがテントに充満していく。

 

なんて楽しいんだ。やっぱりキャンプって最高じゃん。

凍えながら飲む熱々のコーヒーは、そう思わせるに充分だった。

雪が積もるほど極寒の日もテントで就寝。

人生最長の14泊15日のキャンプはアッという間だった。

雪が降り積もるほど極寒の日もあったし、野山にひとりぼっちでトラウマになるほど怖い日もあった。

けれど、宿泊していたキャンパーさんにご飯を恵んでもらったり、焚火に混ぜてもらい話し相手になってもらったりと、たくさんの人に支えられたキャンプ生活だった。

 

キャンプに来る前は、風邪をひかないか心配していたけれど、今はむしろ風邪をひく気がしない。

15日間キャンプをしたおかげで、完全無敵のスター状態になっている。

 

体の調子がよくないなと感じているあなた。キャンプへ行こう。

テントの方がよく寝れる。山の中には余計な情報は届かない。太陽のリズムが身体のリズムを整えてくれる。人の優しさに触れられる。自然は心身を癒してくれる。

 

さあ、2025年はキャンプ健康法です。

もう僕にとっては家と変わらないなほど快適なテント内。

キャンプでコーヒーを嗜むときの幸福といったら……。

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