上川隆也の「好き」には、人並外れた愛情が注がれている【てれびのスキマ】

上川隆也の「好き」には、人並外れた愛情が注がれている【てれびのスキマ】

■上川が深い愛情を注ぐ愛犬、アニメーションの存在

上川隆也がノリノリだった。

「問題物件」(フジテレビ系)で、主人公の「謎の男」犬頭光太郎を演じていた。「犬の化身?」と思われている彼は、犬を愛し、立ち居振る舞いも雅弘(宮世琉弥)の愛犬の犬種ベルジアン・シェパード・ドッグ・マリノアのよう。美しい姿勢で威厳がある。

そのキャラクターゆえ表情もほとんど変えないが、演じて目一杯楽しんでいるのが全身から伝わってくる。上川自身も、ミックスのメス犬・ノワールと暮らす愛犬家。2010年1月、夫婦で訪れた保護犬の譲渡会で出会った。そこからノワール中心の生活が始まった。

ドラマに絡めて「物件を選ぶ際の一番条件は?」と訊かれたときも「ペット可かどうか、それに尽きます。上川家はドッグファーストで回っておりますので。彼女にとっていい住環境なのかが第一で、そのあとに人間の動線などの検討に入っていきます」(「めざましmedia」2025年1月15日)と答えている。「彼女」と呼ぶところに愛情の深さがうかがえる。

上川の愛情が注がれるものといえば、「アニメ」もそうだ。いや、「アニメーション」と正確に呼ぶのが相応しいだろう(上川は常に「アニメーション」と略さずに言う)。小学生の頃に見た「宇宙戦艦ヤマト」(1974~1975年日本テレビ系)に衝撃を受けて、その世界にのめりこみ、学生時代に1980年代前半の全作品を網羅するほどのアニメ好き。

■アニメーターを志した学生時代

中でも「別格」で好きなキャラが「銀河鉄道999」(1978~1981年フジテレビ系)のメーテルだ。「まんが映画」「テレビまんが」と呼ばれていたものが、「アニメーション」と呼び名が変化していく過程をリアルタイムで見てきたのだ。

「―アニメソング総選挙」(2020年テレビ朝日系)のような番組にゲスト出演すれば、様々な時代、ジャンルのアニメを誰よりも詳しく饒舌に解説してしまう。ただ“見る”だけでは飽き足らず、高校時代はアニメーターを志し、アニメサークルに入って描いていたりもした。

「描けることに対する強烈な憧れがあるんです。ものすごく度肝を抜かれるような動きに出会うと、一つ一つどんな絵で構築されているのか見たくて仕方なくなる」(「キョコロヒー」2023年9月11日テレビ朝日系)と、たとえば戦闘シーンなどはコマ送りでチェックしているという。

だが、その頃のアニメ仲間のレベルの高さを目の当たりにしてアニメーターの夢は諦めた。そんな彼は、俳優となってスタジオジブリのアニメ映画「かぐや姫の物語」(2013年)で声優として石作皇子を演じた。実はこの作品で背景を描いたのが、高校時代のアニメ仲間だった串田達也なのだ。

■「演じること」が何よりも楽しい

上川が初めて声優に挑戦したのが、ガイナックスのアニメ「天元突破グレンラガン」(2007年テレ東系)。脚本を担当した劇団☆新感線の中島かずきからの推薦だったという。上川はこのオファーを受けて「ものすごく後悔」した(番組公式HPのインタビューより)。

なぜなら、起用される前から、「―グレンラガン」が大好きで毎週欠かさずオンエアを見て、ハラハラドキドキワクワクしながら楽しんできたからだ。当然、演じるにあたって設定資料や台本が送られてくる。これ以上ない“ネタバレ”だ。いち視聴者としての楽しみを奪われてしまったのだ。なんとも愛情深い上川らしいエピソードだ。

そして、もう一つ上川が好きなものが、なんといっても「演じること」だ。「お芝居に出会ってから今に至るまで、ずっと楽しいと思えているんです。一番楽しいおもちゃを目の前に置き続けていられているかのよう」(「クランクイン!」2025年1月21日)と語る。もともと、役者で食べていこうなどとは思ってもみなかった。

■好きになったら探究せずにはいられない

大学時代、たまたま見つけた児童劇団スタッフのバイトに応募すると、たまたまその劇団はスタッフは役者も兼ねるという方針だったため、演じることになった。それが殊のほか、楽しかった。そして「演劇集団キャラメルボックス」に入団。

「劇団に入団したのも、お芝居がしたい、という思いだけで飛び込んだ世界でしたし、その後もじゃあこれで名を成していこうなどとも思わず、なんて面白いんだろうと思いながら」(同)演じてきた。上川は役者を続けてきた理由を「『好きだから』という一言に尽きる」(「マイナビニュース」2020年11月21日)と答えている。ただし、上川の「好き」という一言は重い。好きになれば徹底的に探究せずにはいられない上川の人並み外れた愛情がそこに注がれているのだ。

文=てれびのスキマ
1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌やWEBでテレビに関する連載多数。著書に「1989年のテレビっ子」、「タモリ学」など。近著に「全部やれ。日本テレビえげつない勝ち方」

※『月刊ザテレビジョン』2025年5月号

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