部長の一声で、女性だけが「お茶くみ」をやらされているが、ハラスメントではないか──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者の職場では、来客時、男女問わず新入社員がお茶くみをする習慣だったようです。
ところが、相談者の部署では「女性にお茶を入れてもらったほうが気分が良いだろう」という部長の一声で、男性はお茶くみ免除になり、一番入社歴の浅い女性が担当することになりました。
ハラスメントではないかと疑問を持っている相談者ですが、社内に設置されているハラスメント相談窓口は部長の息がかかっているとして、相談先にも悩んでいるようです。
どう対処すればいいのでしょうか。竹内省吾弁護士に聞きました。
●お茶くみに限らず、性別のみに着目して業務に差をつけることは違法
ーーそもそも、部署単位で男女問わず「来客用のお茶くみ」をさせることは、法的に問題ないのでしょうか。
来客用のお茶くみ自体は、業務に付随する作業として、従業員にさせることは法的に問題はありません。しかし、お茶くみに限らず、性別のみに着目して業務に差をつけることは、男女雇用機会均等法6条に反する違法行為です。
今回のケースで、部長は「気分が良い」という理由で、女性だけにお茶くみの担当をさせていますが、合理的な理由ではありませんから、違法な取り扱いであるといってよいです。
なお、秘書業務など、接客を担当する部門にお茶くみを担当させるような場合には、それ自体は問題がありません。しかし、秘書部門に女性だけ限定して採用しているような場合には、違法の可能性があります。
●ハラスメント相談窓口の設置が企業に義務づけられている
ーー雇用機会均等法に違反することは、即、ハラスメントにあたると考えてよいのでしょうか。
違法行為とハラスメントは必ずしもイコールではありませんが、この相談者は性別にのみ着目した業務の割り振りに不快感を覚えているのですから、セクシャル・ハラスメントに該当するといえるでしょう。
相談窓口について、いわゆるパワハラ防止法の施行・改正により、中小企業においてもハラスメント相談窓口の設置が義務付けられています。
今回のケースで、会社にはハラスメント相談窓口はあるようですが、部長との関わりが強いことが懸念されており、いわゆるセカンドハラスメントの心配がある状況のようです。
会社の規模によっては、専任の相談担当者を置けない状況であることが多く、現状の法制度では、残念ながら、このような懸念は完全には払拭できません。
そのような場合には、労基署や労働局の相談窓口、弁護士や社労士への相談を検討すると良いでしょう。
【取材協力弁護士】
竹内 省吾(たけうち・しょうご)弁護士
慶應大卒。弁護士法人エース・社労士法人エースクルー代表。銀座を本店に、全国に5拠点を構える。労働分野を中心に、一般民事、家事、企業法務など幅広く扱う。著書に「少年事件ハンドブック(青林書院)」など。趣味は自家製ラー油作りと家具作り。
事務所名:弁護士法人エース
事務所URL:https://ace-law.or.jp/
配信: 弁護士ドットコム