「自衛隊に住所や名前を提供します」横浜市の投稿が波紋、実は他の自治体でも実施…法的根拠は?

「自衛隊に住所や名前を提供します」横浜市の投稿が波紋、実は他の自治体でも実施…法的根拠は?

横浜市広報課が3月27日、Xに投稿した呼びかけが注目を集めています。

投稿では、18歳や22歳になる住民の住所や氏名を自衛隊に提供するので、提供を望まない住民は申し出るよう、呼びかけています。この情報提供は、高校や大学を卒業するタイミングで、自衛官募集のダイレクトメールを送るためのものです。

「自衛隊への情報提供を望まない方へ

自衛官等の募集案内を自衛隊から送付するため、自衛隊法等により、日本国籍で本市に住民登録がありR7.4.2~R8.4.1に18歳・22歳になる方の住所・氏名を自衛隊へ提供します。提供を望まない方は5/23までに申し出ください」

この投稿に対し、「自衛隊に個人情報を流していいの?」「提供してほしい人が申し出るのではダメなの?」といった声がXで寄せられています。

こうした名簿の提供をしているのは、横浜市だけではなく、全国で1000を超える自治体がおこなっているといいます。また、住民基本台帳の閲覧や転記を含めると、約9割の市町村が自衛隊に協力しているとのことです(京都市の公式サイトより)。

どのような経緯や法的根拠によって、自衛隊は自治体に情報の提供を求めているのでしょうか。

●自衛隊法97条1項が根拠と説明

横浜市の公式サイトでは、次のように説明されています。

「『自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部』を行うことは、自衛隊法第97条第1項で都道府県知事及び市町村長の事務として定められており、国からの法定受託事務として実施しています。

その中の一つとして、自衛隊法施行令第120条の規定に基づく防衛大臣からの自衛官及び自衛官候補生の募集のために必要な募集対象者情報の提供依頼に応じて、自衛官又は自衛官候補生の募集のために必要な情報(横浜市に住民登録がある募集対象者となる方の郵便番号、住所及び氏名)を自衛隊神奈川地方協力本部へ提供しています」

根拠となる自衛隊法第97条1項では、「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官の募集に関する事務の一部を行う」とあり、2項でも「長官は、警察庁及び都道府県警察に対し、自衛官の募集に関する事務の一部について協力を求めることができる」と定められています。

●「除外申請」措置を設ける自治体も

こうした自衛隊への名簿提供については、2019年2月に開かれた自民党大会で、安倍晋三首相(当時)が触れ、「都道府県の6割以上が協力を拒否している悲しい実態がある」など述べて、注目を集めました。

その後、2020年12月 先述した自衛隊法などを根拠として、自衛官または自衛官候補生の募集に関し必要な資料の提出を防衛大臣から求められた場合、「市区町村長が住民基本台帳の一部の写しを提出することが可能であることを明確化し、地方公共団体に令和2年度中に通知する」ことが閣議決定されました。

この閣議決定後、それまでは住民基本台帳の閲覧や転記のみだった自治体が、名簿提供に切り替えるなど、拡大していったとみられています。

なお、名簿提供をおこなっている自治体では、除外申請をすれば提供を拒否できる対応をとっているところもあります。今回、注目を集めた横浜市もその一つです。

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