東京都武蔵野市の学校法人「武蔵野東学園」が学校の新入生の保護者に対して学園に関する情報を外部に漏らさないよう求める誓約書の提出を求めていたと毎日新聞が3月18日に報じた。
武蔵野東学園をめぐっては、学園が運営する武蔵野東高等専修学校の3年の女子生徒が学園の理事長を刑事告訴し、退学処分を受けたことを毎日新聞が今年2月に報じていた。同学校はその後、女子生徒との間で和解が成立し、退学処分を撤回したという。
学園側が保護者に誓約書を提出するよう求めたことについて、毎日新聞は記事で「学園が保護者や教員からの情報提供をけん制する狙いがあるとみられる」と書いており、「違反した場合は損害賠償を求めるとしている」という。
詳細は不明だが、一般的に、学校法人や学校側が児童・生徒の保護者に対して法人や学校に関する情報を外部に漏らさないよう求めることは法的に問題ないのか。また、漏らしたら必ず損害賠償を支払う必要があるのか。
学校問題に詳しい浅井耀介弁護士に聞いた。
●社会常識からかけ離れた誓約書は無効
まず、学校が公立、私立かを問わず、学校側と児童・生徒の保護者がどのような内容の契約(誓約)をするかについては私的自治に委ねられているため、「学校に関する情報を外部に漏らさない」という内容の誓約書を作成することも、法的には問題ありません。
もっとも、あまりにも社会常識からかけ離れた内容の誓約書は、公序良俗に反するとして無効になります(民法90条)。
本件に即して説明すると、例えば、学校から児童・生徒に対する権利侵害が行われた場合に、そのことについて弁護士などの第三者に相談することまで禁じられているとすると、それは公序良俗に反して無効となり得ます。
また、損害賠償義務を負うという部分についても、口外した理由等を問わず金銭を支払わなければいけないとされていたり、あまりにも高額な違約金が予定されていたりする場合には、当該部分も公序良俗に反して無効となり得ます。
したがって、誓約書を作成したとしても、いついかなるどんな場合であっても当該誓約書に従わなければいけない、というわけではないということです。
ただ、選択の幅がそこまで広いわけでなく、途中で学校を変えることについての現実的なハードルもある中、児童・生徒の保護者は学校からの指示についてある程度従わざるを得ないという実態もあるかと思います。
学校からの指示が果たして従うべきものなのか、悩んだ場合には専門家へのご相談をお勧めします。
【取材協力弁護士】
浅井 耀介(あさい・ようすけ)弁護士
国内旅行業務取扱管理者の資格を保有し、観光ビジネスや旅行業をはじめとして、学校問題や芸能案件、刑事事件を主に扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/
配信: 弁護士ドットコム