「膵臓がん」は大豆食品の摂取でリスク増加 膵臓がんのリスク要因となる“食べ物”とは

「膵臓がん」は大豆食品の摂取でリスク増加 膵臓がんのリスク要因となる“食べ物”とは

国立がん研究センター社会健康科学センター疫学・予防グループの研究員らは、1995~1998年にかけて収集された食品摂取頻度アンケートのデータを用いて、大豆食品の摂取と膵臓がんの発症リスクの関連性を分析しました。調査結果によると、大豆食品の総摂取量が膵臓がんのリスク増加と統計的に有意な関連があると示されています。研究結果は、学術誌「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」に掲載されています。この内容について中路医師に伺いました。

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監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した膵臓がんに関する研究内容とは?

国立がん研究センター社会健康科学センター疫学・予防グループの研究員らが発表した内容を教えてください。

中路先生

今回紹介する研究報告は、日本の国立がん研究センター社会健康科学センターの疫学・予防グループを中心とした研究チームによって実施されました。研究には奈良女子大学や麻布大学の研究者らも参加しています。研究では、日本の一般集団を対象とした前向き研究において、大豆食品の摂取と膵臓がんのリスクとの関連性が調査されました。この研究は、日本保健所を拠点としたコホート研究の一環であり、1995~1998年にかけて収集された食事頻度アンケートのデータを基に、9万185人の参加者を対象にCox比例ハザードモデルを用いて分析がおこなわれました。

研究の結果、中央値16.9年の追跡期間中に膵臓がんが577例確認され、大豆食品の総摂取量が多いほど膵臓がんの発症リスクは増加することが統計的に示されました。特に、非発酵大豆食品の摂取が膵臓がんのリスク増加と有意に関連していました。その一方で、発酵大豆食品にはその関連性が認められませんでした。

この研究は、大豆食品の種類によるリスクの違いを指摘した初めての報告であり、さらなる研究の必要性が示唆されています。ただし、因果関係の解明には追加の研究が求められ「今回の結果だけで大豆食品の摂取を控えるべきかどうかの判断は難しい」と考えられています。

膵臓がんのリスク要因となる食べ物は?

今回紹介した研究で示された大豆食品以外にも、膵臓がんのリスク要因となる食べ物はありますか? また、膵臓がんを疑う症状についても教えてください。

中路先生

膵臓がんのリスクを高める可能性のある食べ物には、高脂肪・高カロリーの食品、加工肉、糖分の多い飲料、アルコールの過剰摂取などが挙げられます。特に、加工肉や赤身肉の過剰摂取は、発がんリスクを高める可能性が示唆されています。また、喫煙や長年の慢性的な炎症もリスク要因となります。

膵臓がんを疑う症状としては、原因不明の体重減少、腹痛(特に背中に放散する痛み)、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、食欲不振、便の色の変化、消化不良などがあります。また、糖尿病の急な発症や悪化が膵臓がんと関連することもあるため、血糖値の異常にも注意が必要です。これらの症状が続く場合は、できるだけ早く医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。腹痛や黄疸、体重減少、血糖値の異常などの気になる症状があれば、できるだけ早く専門医に相談しましょう。

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