元柏レイソル レアンドロ・ドミンゲスさんが41歳で逝去 「精巣がんの原因・症状」を医師が解説

元柏レイソル レアンドロ・ドミンゲスさんが41歳で逝去 「精巣がんの原因・症状」を医師が解説

柏レイソルや名古屋グランパス、横浜FCなどで活躍した元サッカー選手のレアンドロ・ドミンゲスさんが精巣がんにより亡くなったと報じられました。41歳でした。
精巣がんは、精巣内の生殖細胞から発生するがんで、20~30歳代の男性が多く発症すると言われています。今回、医師の村上先生に「精巣がんの原因・症状」などについて伺いました。精巣がんとはどのような病気なのか理解し、早期発見のポイントを学びましょう。

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監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

精巣がんという病気について

精巣腫瘍との違いを教えてください。

精巣腫瘍とは男性の精巣にできる腫瘍全般を指します。その精巣腫瘍の中でも悪性のものが精巣がんです。
精巣腫瘍は20代・30代の男性に発生しやすいのが特徴で、悪性(精巣がん)であるケースが多く、過去には恐ろしい病気とされていました。
しかし、現在では効果が高い抗がん剤もあり、転移がある場合でもある程度寛解が望めるがんの1つになっています。

精巣がんの原因は何ですか?

精巣がんの原因は、はっきりとは解明できていません。しかし、以下のような方は、精巣がんになるリスクが高い傾向にあると分かっています。

停留精巣(精巣が陰嚢内にない状態)がある:発症リスクは、停留精巣ではない男性の2~10倍程度です。

ご家族に精巣がんになった方がいる方:発症リスクは、ご家族に精巣がんの方がいない場合の4~8倍程度です。

過去に精巣がんになった方:片方の精巣が精巣がんになった方は、もう片方の発症するリスクが精巣がんでない方の20倍といわれています。

また不妊症の方や精子に異常がある方も精巣がんになるリスクがあるといわれています。

精巣がんの症状について教えてください。

精巣がんには、自覚できる初期症状はほとんどありません。
病状が進むと精巣にしこりができたり腫れたりします。このしこりや腫れは痛みが伴わないのが特徴で、注意していないと気づかないため発見が遅れるケースが多いです。
痛みや発熱などの自覚症状が少ないのが精巣がんの特徴ですが、下腹部に重圧感や鈍い痛みがあったり、急に精巣が痛くなったりする場合もあります。
精巣がんは転移する時期が早く、転移により引き起こされるものとして以下のような症状もあります。

腹痛

腰痛

呼吸困難

首のリンパ節の腫れ

またホルモンの影響で乳首に痛みや腫れといった症状が現れる場合もあります。

精巣がんの見分け方について教えてください。

繰り返しになりますが、精巣がんには自覚できる症状があまりありません。転移によって引き起こされる症状が出る頃には、かなり進行していると考えられます。
できるだけ早い段階で発見するために、入浴時に自分で触ってしこりや腫れがないのを確かめましょう。
特に停留精巣の方・ご家族に精巣がんの方がいる方・過去に精巣がんになった方など、リスクが高い方は入浴時のセルフチェックを習慣づけてください。

精巣がんの治療法

精巣がんの治療法と治療期間は?

精巣がんの治療法と治療期間は、組織型がセミノーマか非セミノーマとステージによって異なります。
どの治療法でも、はじめに行うのは精巣の摘出手術です。摘出した精巣を病理検査し、セミノーマか非セミノーマかを判定します。セミノーマでステージⅠであれば、多くの場合、経過観察となり一旦治療は終了です。
予防的に化学療法を行う場合は、手術後3~6週間程度の治療期間が発生します。セミノーマでステージⅡ以上の場合、化学療法を3~4クール(1クールは約3週間)実施するだけの治療期間が必要です。
非セミノーマのステージⅠでは、化学療法を1~2クール行い経過観察するのが一般的です。非セミノーマのステージⅡ以上では、化学療法を3~4クール行い腫瘍マーカー値が正常になった段階で、小さくなった腫瘍を可能な限り切除する手術を行います。

精巣がんの手術について詳しく教えてください。

精巣がんの手術は、はじめに行う「高位精巣摘除術」と化学療法後に行う「後腹膜リンパ節郭清術」に分かれます。「高位精巣摘除術」は、下腹部を切開し陰嚢内の精巣を切除する手術です。
この手術で切除した精巣を病理検査し確定診断を行います。「後腹膜リンパ節郭清術」は、非セミノーマでステージⅡ以上と診断されると行われる可能性がある手術です。
腫瘍を化学療法で小さくした上で、転移しやすい腹部の大血管周囲のリンパ節を切除します。基本的に開腹手術ですが、体の負担が少ない腹腔鏡手術で切除するケースもあります。

放射線治療とはどのような治療ですか?

放射線治療には「外照射」と「小線源治療」があります。「外照射」は治療装置で発生させた放射線を体の外から照射する方法で、「小線源治療」は放射線を出す物質を体の中に入れる方法です。
精巣がんでは、セミノーマのステージⅠ・Ⅱの場合に放射線治療が有効とされ、関連するリンパ節に放射線を当てる場合があります。ステージⅠで放射線治療を行うのは、転移・再発予防が目的です。
ステージⅡでは、転移したがんを治療する目的で行います。手術が腫瘍と腫瘍の周囲の正常組織を含めて切除するのに対し、放射線治療では正常な組織を残せるのがメリットです。一方、照射した部分が赤くなる・体がだるくなる・二次発がんのリスクの増加といった注意点もあります。

化学療法について教えてください。

精巣がんは化学療法の効果が高いがんで、転移があっても抗がん剤を用いた化学療法で根治を期待できます。
化学療法は1クールが3週間で、3~4クール実施するのが一般的です。化学療法では、1種類の抗がん剤を用いる療法以外に病状により複数の抗がん剤を用いる療法があります。
複数の抗がん剤を用いる一般的な療法は以下の通りです。

BEP療法:併用薬剤(ブレオマイシン・エトポシド・シスプラチン)

EP療法:併用薬剤(エトポシド・シスプラチン)

VIP療法 :併用薬剤(エトポシド・イホスファミド・シスプラチン)

こうした抗がん剤による化学療法では、吐き気・脱毛・白血球の減少など副作用や、精子を作る機能の低下・手足のしびれなどの後遺症が出る可能性があります。

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