心臓は私たちの体全体に血液を送り届けるとても大切な臓器です。その心臓に血液を供給している血管を「冠動脈」と呼びます。もしこの冠動脈が狭くなると、心臓の筋肉に血流が十分に行き届かなくなり、一時的に胸の痛みなどを引き起こします。これが狭心症や心筋梗塞です。今回は実際に狭心症の治療を経験した関根勤さんと日本循環器学会認定循環器専門医である小泉信達先生をお招きし、狭心症の怖さや治療について対談していただきます。
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インタビュー:
関根勤(タレント)
1953年8月21日生まれ。東京都出身。TBS「ぎんざNOW!」の素人コメディアン道場で初代チャンピオンとなり1974年12月に芸能界入り。デビュー後の1975年には「ラビット関根」の芸名を桂三枝師匠よりいただく。1982年にANB(現テレビ朝日)「欽ちゃんのどこまでやるの!?」レギュラー出演の際、番組内容により本名「関根勤」に戻し活動、現在に至る。バラエティ番組を中心にテレビやラジオ、CM、舞台など幅広く芸能活動に携わっている。
監修医師:
小泉信達(日本循環器学会認定循環器専門医)
東京医科大学卒業後、東京医科大学病院およびその関連病院において約25年にわたり、心臓血管外科医として診療に携わる。心臓血管外科では、心臓手術や大動脈手術、肺動脈手術、末梢動脈手術、静脈手術など様々な手術を経験。高齢者や重篤な状態の患者を手術することも多く、普段から全身疾患を把握し管理することの重要性を感じ、2019年に小泉クリニックを開院。自分や家族の受けたい治療を常に考え、診療にあたっている。日本循環器学会認定循環器専門医。日本血管外科学会心臓血管外科専門医。
小泉先生
現在の体調について教えてください。
関根さん
年齢の影響で疲れやすくなりましたが、体調は全く問題ありません。
小泉先生
症状はないということですね。冠動脈の狭窄に気づいたきっかけについて教えてください。
関根さん
テレビ番組の企画で心臓を詳しく検査したことがきっかけでした。
小泉先生
結果はいかがでしたか?
関根さん
CT検査で冠動脈の70%が詰まっており、62歳の人を100人集めたら4番目に悪いと言われて驚きました。その後カテーテル検査で血流の様子を見たところ、実際にはもっと狭くなっており小川のようにちょろちょろと流れている程度でした。
小泉先生
心臓は筋肉であり動くためには酸素が必要です。その酸素を供給しているのが冠動脈なので、冠動脈が狭くなると血管の先の部分が血流不足になり酸素も十分に行き届かなくなります。
関根さん
冠動脈が詰まると大変なことになるわけですね。
小泉先生
はい。詰まりが軽症の場合は無症状であることも多いですが、進行すると狭心症や心筋梗塞になります。
関根さん
狭心症になると急に倒れることはありますか?
小泉先生
突然倒れることは少ないですが、痛みが出ることが多いですね。
関根さん
どのような場所が痛むのでしょうか?
小泉先生
最も多く痛むのは左胸です。それ以外には左肩や左腕、首、顎、胃の付近に痛みが出る場合もあります。
関根さん
それが進行すると心筋梗塞になるということでしょうか?
小泉先生
そのとおりです。血流がさらに悪化し完全に詰まると、心臓の筋肉に血液が届かなくなり心筋は死んでしまいます。この状態が心筋梗塞です。
関根さん
心筋梗塞は狭心症の先にある非常に危険な状態ですね。亡くなる人もいますか?
小泉先生
はい。心筋が死んでしまうと心臓の動きは悪化し、不整脈が起こることで最悪の場合、心停止に至ることもあります。
関根さん
冠動脈は大切な血管なのですね。
小泉先生
病気が発覚した時に前兆は感じていましたか?
関根さん
今振り返ると、階段を上がった時に息切れを感じたことがあったように思います。当時は62歳だったので年齢のせいだと思っていたのですが、ステントを入れてからは息切れも緩和されました。それが前兆だったのだと思います。
小泉先生
そのほかにはありますか?
関根さん
信号が変わりそうな時に、体が重く感じてあまり走れなかったことがありました。
小泉先生
多くの方はそういった症状を加齢のせいだと考えがちですが、年齢だけで済ませずに詳しい検査を受けることが大切です。
関根さん
気を付けなければいけませんね。
小泉先生
関根さんは自覚症状が少なかったようですが、動いた時に胸が重くなるような症状もあったので労作性狭心症に該当すると思います。労作性狭心症とは体を動かした時に胸の痛みや重さを感じるものです。一方、安静時に胸が痛くなる狭心症も存在します。
関根さん
そういったこともあるのですね。
小泉先生
はい。安静時狭心症と呼ばれるもので、特に朝方に胸が痛くて目覚めてしまうこともあり、日本人に多いと言われています。動脈硬化がなくても発症することもあり、注意が必要です。
関根さん
知りませんでした。注意が必要ですね。
小泉先生
病気が発覚した時の心境について教えていただけますか?
関根さん
発覚した時はショックも受けましたが、医療技術が進歩していると聞いて、助けてもらおうという気持ちに切り替えましたね。
小泉先生
発症の心当たりはありましたか?
関根さん
健康診断を毎年受けてどこも悪くなかったのですが、悪玉コレステロールの数値は190mg/dLと高く、毎回指摘されていました。それでも10年間無視し続けた結果として、今回のような事態になったのかもしれません。
小泉先生
悪玉コレステロールが高いことは重要なリスクファクターとなります。
関根さん
指摘された時にしっかり対処していれば70%も詰まることはなかったかもしれませんね。
小泉先生
そうかもしれませんね。タバコは吸われていましたか?
関根さん
タバコは吸っていませんでした。
小泉先生
お酒についてはいかがですか?
関根さん
両親がもともとお酒を飲めない体質で、私もお酒は飲めません。
小泉先生
お酒も適量であれば問題ありませんが、飲み過ぎは動脈硬化のリスクになります。
関根さん
今は半年に1回の血液検査を受け、薬も服用しているおかげで悪玉コレステロールの値も60mg/dLまで下がりました。
小泉先生
70mg/dL以下に下げることが推奨されているので、経過は良好だと言えますね。
関根さん
ほかにはどういった要因がありますか? 肥満はいかがでしょうか?
小泉先生
肥満も狭心症のリスクファクターの一つです。狭心症や心筋梗塞の原因は動脈硬化であり、加齢や糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、肥満、喫煙はそのリスクを高める要因と考えられています。
関根さん
私の父は51歳で脳出血になり、65歳の時には一時的に心臓が止まってしまったこともありました。私が狭心症を発症したことにも遺伝的な影響があるのでしょうか?
小泉先生
遺伝の影響はあると思います。家族歴のある人は全くない人よりも動脈硬化による病気の発症確率が高いですね。
関根さん
家族歴のある人は定期的に心臓の検査を受けたほうがいいですね。
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配信: Medical DOC
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