悲惨! 妻による「夫いじめ」の実態とは?

第3回 夫が思う妻への本音
いじめは子どもたちだけの問題ではなく、大人社会にも存在します。それは、たとえば最も身近なコミュニティである家庭においても起こり得ることです。

「妻からのいじめ被害を訴える夫は少なくありません」と語るのは、夫婦問題専門家として、これまで2万件以上の相談に乗ってきた岡野あつこさん。その実態について聞きました。

●お風呂に入るな! 安物でいい! 「夫いじめ」のリアル

本来は、お互いに支え合い、慈しみ合うのが夫婦としてのあるべき姿とされています。しかし、それはあくまでも理想の話。現実世界で起きている「夫いじめ」は、妻が生活の主導権を握り、夫の日常をじわじわと追い詰めるケースが見受けられるようです。

「ある方(夫)は、妻から『汚い、不潔』と罵られて、お風呂も入らせてもらえないと相談にきました。その方は銭湯に通っていて、『まだ我慢できるけど何とかしたい』と和解を望んでいたんです。ただ、どうやら妻が女友達と結託していたようで、夫をどういたぶるか相談していたことが発覚。結果的に不信感が払しょくできず離婚してしまいましたね」(岡野さん、以下同)

他にも、こんな事例があるとか。

「毎日スーパーの安い惣菜だけを食べさせたり、安い材料で簡単な料理しか作らなかったりと、経費を抑えるケースはよく耳にします。食事だけではなく、シャンプーや石鹸など、夫が使うものすべてを安物で埋め尽くすんです。

あとは、趣味や遊びなど、好きなことをさせないように邪魔をするケースも多いですね。もし育児中で、妻自身も時間がない場合だったとしても、『今日は遊びに行っていいけど、来週の休みは代わりに子どもの世話をしてね』など、譲歩したり交渉したりするのが思いやりですよね。でも、夫いじめのスイッチが入った妻は、とにかく夫の自由な時間を奪う。無理矢理予定を入れたり、小遣いを減らしたりと邪魔をするべく画策します」

夫婦のいじめ

●妻からの「夫いじめ」、解決の余地はある?

では、なぜこうした「いじめ行動」に走ってしまうのでしょうか? それは、夫に対する愛情が薄れたばかりではなく、存在自体がストレスになってしまうからだと岡野さんは分析します。

「子どものいじめの多くは、『一緒にいたくないのに、いなきゃいけない』という不快感から、相手を排除しようとしますよね。夫婦間のいじめについても、夫の存在がストレスになっていることがほとんど。しかし、相手にいなくなられても困るというジレンマがあるわけです。いじめる側の妻としても、夫が離婚を切り出したら、それですっきりするのかというと、それはまた別問題なんです」

いじめの範ちゅうを超えて、夫を殴る蹴るの暴力でいたぶっていた妻も、離婚を言い出されたら、慌てることがほとんどなのだとか。

そもそも、なぜ夫の存在がストレスになるのかといえば、「私のことを理解していない」「私が満足できる夫ではない」からというのが妻側の言い分だそうです。

「たとえば、夫をお風呂に入れない妻は、もしかしたら夫の体型や衛生観念に不満を抱えているのかもしれません。また、安物ばかりを与える妻は、夫の給料に満足していないのかもしれません。いじめられているから『ひどい妻だ!』といって逃げるのではなく、愛情で接して、妻の懐に入っていかないと解決はしません。もとを正せば、妻と本気と向き合おうとしなかったから、陰湿ないじめ行動でストレスを発散しているとも考えられます」

いじめられていると分かったら、いじめてくる相手と離れたくなるのが人間というもの。しかし、夫婦生活を“延命”させたいと思うのであれば、本気でぶつかり合う覚悟を持つ必要があるようです。

「妻と向き合わずに無視していると、どんどん気持ちが離れていって逆効果なんですよね。いじめをする子どもに対しても同じですが、まずは心の闇を理解しようと歩み寄らないかぎり、本質的な解決には至りません。『一体何が不満でいじめるのか』、それを察したうえで、どうすれば払しょくできるのか真剣に考えることが大事です」

熱愛で結ばれた夫婦、打算で結婚した夫婦、はじまりは十人十色かもしれません。とはいえ、生活をともにする以上、本気で向かい合うことを怠ると、いつの間にか心は離れ、結婚は脆くも破綻してしまう可能性も高くなります。もし、妻からのいじめに苦しんでいる人がいたら、ぜひ参考にしてみてください。
(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)