ほとんどの社員は定時前に退社する
同社の定時は8時半から17時半まで。しかし、「17時に帰っていいよ制度」があり、ほとんどの社員は、定時前の17時には退社しているといいます。そもそもなぜ、そのような制度を設けたのでしょうか?
「元々は、東日本大震災のあとに、サマータイムを導入し、期間限定で始まった制度です。取り組みを始めた3カ月後に、サマータイムを終了しようという話が出たのですが、すでに社員のなかでは、17時に退社できるように業務の効率化ができていたため、制度の継続を望む声があり、継続しました。30分早く帰れることで毎日が充実するだけでなく、業績もあがっていたんです」(上田さん、以下同)
とはいえ、30分早く帰るためには、工夫も必要そう。
「まずは業務の棚卸をすることです。何に、どれくらいの時間がかかっているかなどを全部洗い出して、システム化できるものはないか、削れる部分はないかなどを見える化することで、効率化を図りました。これらを徹底することで、時間を凝縮し、生産性を高く働くことが可能になったんです」
ママ向け制度が充実していても両立は大変
ランクアップには、「17時に帰っていいよ制度」の他にも、病児シッターサービスを自己負担300円で利用できる「病児シッター制度」や「時短勤務制度」など、様々なママ向けの制度が充実しています。実際に、家事・育児と仕事を両立するママの本音はどうなのでしょう?
「両立するのはすごく大変です。制度は充実していて、どうしようもない事情があるときは、子連れ出社も認められているので、受け入れられてもらえる環境があるのは有り難いです。あとは、両立するために、夫婦間でスケジュールの共有なども行い、夫にも育児を協力してもらっています」
ランクアップでは前述のように、ママに優しい制度がある一方で、業務面に関してはストイックだといいます。
「ママだから考慮されたり、業務量を減らされたりということは一切なく、ママであってもなくても役割は同じです。このように甘えがない分、他の社員に対して遠慮も生まれないので、ママにとっては大変ですが、うれしいことだと思います」
たとえば、時短勤務をしているワーママが「同僚に対して申し訳ない」という気持ちを抱くのは、よく聞く話。しかし、上田さんによると、ランクアップでは同じ仕事量をこなしているので、そんな気持ちを抱くことは一切ないそうです。
ちなみに、今後の課題をうかがったところ、「現在、月に2回、在宅でのテレワークが認められていますが、今後はさらに推進させたいと考えています。また、社員一人ひとりの役割を明確化していくことで、より働きやすい環境を整えようという動きがあります」とのこと。
キャリアウーマンとしても2児の母としても活躍する上田さんは、最後にこう話します。
「ママをサポートするような制度はとても大切なものではありますが、それ以上に大切なことは、“覚悟”だと思います。“ママだから…”とキャリアを諦めてしまったり、制度に甘えきってしまうのは違うと思います。社会もまた“ただ制度を拡充すればいい”というものではなく、ママたちの“キャリアを諦めない働き方”が当たり前となるように変わるべきだと感じます」
女性の社会進出が注目され、時短勤務やテレワーク、社内保育所など、様々な制度が導入され始めています。しかし、制度だけが充実しても、ママの働く意欲が低ければ意味がない。また、制度利用を承認する人たちの意識が低ければ、制度の活用もできないでしょう。ママがより働きやすい環境を整えるには、制度だけでなく、一人ひとりの意識改革も必要かもしれません。
(文・奈古善晴/考務店)