1991年からママ社員の両立支援を行っている
女性の社会進出促進やダイバーシティ(多様性)が注目され、少しずつ女性やママ向けの制度や福利厚生を拡充させる企業が増えています。でも、高島屋は20年以上も前から、ママ社員の両立支援を行っているといいます。そのわけは…?
「当社は社員の女性比率がほぼ7割です。育児や結婚、出産などを理由に退社されると、一般の会社よりも困るというのが、ずいぶん昔からありました。そういった背景があり、両立支援を始めたんです。たとえば、育児のために勤務時間を短縮できる『育児勤務』制度は、1991年にはスタートしています。当時はまだ勤務時間のパターンが少なかったのですが、“子どもの成長に合わせてもっと長く働きたい”といったニーズがあり、段階的にパターンを充実させてきました」(須江さん、以下同)
他にも、通常では育児勤務で3時半や5時半が終業だが“繁忙期には店頭に貢献したい”という従業員のニーズを汲み、あらかじめ申請しておけば、決められた日数内でフルタイム勤務ができるようになる制度もあるそうです。育児勤務中の正社員の3分の1はこの制度を活用しており、会社に貢献し、自身のキャリアアップにもつなげているのだとか。
実際に制度を利用している社員からは、「フルタイム勤務を数日入れることで、今後ママがこういう働き方に変わっていくことを子どもに伝えることができるので助かっている」という声もあるといいます。
有休を積み立てられるリザーブ休暇
日本は有休が取得しづらいといわれており、まったく消化できない人もいると思いますが、高島屋の場合は積み立てることができるそうです。
「有休は全消化を推奨しておりますが、当社の有休は最大20日与えられていて、平均10日くらいの取得率です。半分くらいが残ってしまうので、それを積み立てておき、いざというときに使えるのが『リザーブ休暇』です。旅行などには使えませんが、育児や親の介護、自身の病気などに使うことができます」
他にも、育児向けの制度としては、スクールイベント休暇と呼ばれれるものもあるのだとか。
「スクールイベント休暇は、育児やお子さんに特化したもので、1日または半日を年に2日間取得することができます。適用範囲は、お子さんだけでなく、お孫さんにも適用できます。というのも、当社の正社員の平均年齢は45歳を超えており、お孫さんを持つ社員も多いためです」
「わが子の授業参観や孫の運動会に参加したい」と思う人は多い。そういった社員の気持ちを汲み取った制度が、スクールイベント休暇です。
日曜限定臨時保育を実施
「2017年11~12月に7日間、トライアルとして行った取り組みですが、横浜店で『日曜限定臨時保育』というものを行いました。日曜日は、保育施設が休みのところが多く、サービス業に対応していないのが現状です。夫婦ともにサービス業だと、どうしてもママが休みがち。そこで、日曜日にママも働けるように、職場に子どもを預けられる環境を用意しました」
利用した社員からは、「何かあってもすぐに子どものいる場所に行ける」、「子どもに職場を見せることができた」などの声があり、とても好評だった様子。次年度以降も店舗や時期の拡大を目指しています。
このように、様々な制度が充実している高島屋では、女性社員の管理職の割合が約30%。育児勤務をしながら、部下を持ちマネジメント業務を行っている社員もいるそう。さらに、須江さんはこう続けます。
「より働きやすい環境を構築するために、人事部ではテレワークの導入を進めていたり、今後数年で増加するであろう介護離職に備えて、まずは社員の知識を蓄えていく必要があると考えています」
昔から、働くママの両立支援を行ってきた高島屋は、すでに充実した制度や知識があり、今後は介護との両立支援にもさらに力を入れていきたいとのこと。高島屋に限らず、どこの企業でも起こりうる「介護離職」。同社がどのような対策を打ち出すのか、今後も注目しましょう。
(文・奈古善晴/考務店)
(※)高島屋の「高」は、正しくは「はしごだか」です