社員への恩返しの意味で開所されたGMO Bears
同社が2011年8月に開所した「キッズルーム GMO Bears」。“世界一の託児所”を目指しているようですが、なぜオフィスビルに開所したのでしょうか?
「当社グループには倒産寸前の窮地に立たされるほどの苦しい時期があったのですが、そうした困難な時期を乗り越え、2010年には過去最高益を出すまでにV字回復しました。そういった苦しい時期に頑張ってくれた仲間たちへの恩返しがしたいという想いから、当社グループ代表の熊谷が社内にアンケートを取り、希望の多かった福利厚生施設をつくることを約束。GMO Bearsや GMO Yoursなどの福利厚生施設がオープンしました」(中村さん、以下同)
GMO Yoursとは、食事もとれるコミュニケーションスペースで、時間帯によってカフェやランチビュッフェ、バーなどが利用できます。同社にはこういった福利厚生施設が多数あり、そのなかのひとつがGMO Bearsです。
では、どのようにGMO Bearsを利用する人が多いのでしょうか?
「生後57日目以降の0歳児から未就学児のお子さんを最大で15名お預かりできるようになっていて、保育士の人数は、『児童福祉施設最低基準』以上の配置人数になっています。GMO Bearsは“復職を手助けする”ために運営しているのですが、利用者のみなさんはこのことを深く理解してくださっており、“GMO Bearsは一時預かり場所”と位置づけられています。そのため、自宅近くの保育園などが見つかるまでの1~2年程度の期間で利用される方がほとんどです」
オフィス内の託児所だからこそ、気にかけていることもあるといいます。
「一般的な託児所よりも、体を動かすことや自然に触れ合う機会が減りがちです。そのため、保育士の先生たちには所内で観賞魚を飼育したり、天気の良い日には近くの公園にお散歩に行ったりしてもらっています。また、GMO Bearsに子どもを預けていないパートナーと触れ合う機会も設けており、ハロウィンでは仮装した子どもたちが社内をまわって、いろんなパートナーからお菓子をもらったり、バレンタインデーには副社長にアポを取り、チョコレートを渡したりしました」
街中の保育園には園庭があることもあり、そういった施設と比べれるとややデメリットはあるかもしれません。しかし、オフィスビル内だからこそ、保育士以外の大人とも触れ合える機会があり、子どもにとっては“ワクワク”できる場所といえそうです。
家事項目をピックアップしたら233項目あった!
勤務先に託児所があると、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。3歳のお子さんを育てながら、フルタイム勤務をしている島村さんの本音は…?
「保育士の先生が多くいらっしゃることに加え、託児所を運営している事業者を会社がバックアップしているので、子どもを預けることに対してまったく不安がありません。火事や地震、急病などがあったときに、すぐに迎えに行ける安心感もあります。また、毎日連絡帳に子どもの様子を書いてもらっているのですが、先生たちが多いので、迎えに行った際に直接お話をうかがえるメリットもあります」(島村さん、以下同)
他にも、「“急な会議で仕事が遅れるので1時間延長をお願いします”と連絡するだけで、すぐに対応していただけることも、すごく助かっています」と島村さん。さらに、おむつや食事代などすべてコミコミで、一般的な託児所よりも格安で利用できるのも嬉しいポイントなのだとか。一方でデメリットは?
「私は子どもが8カ月のころから、GMO Bearsを利用しているのですが、小さいころは通勤時に満員電車で泣き続けてしまったり、大きくなってイヤイヤ期が始まると、床でバタバタしたり、“狭い”“きつい”と騒いだりしてしまうことがありました。私も子どもも大変でしたし、周りの乗客の方にも申し訳ない気持ちがありました。でも、ネックになるのは通勤だけなので、デメリットよりもメリットのほうがはるかに大きいと感じています」
そんな島村さんが、現在抱えている悩みとは?
「やっぱり夫との家事・育児の負担割合ですね。最近始めたんですが、すべての家事・育児を洗い出し、リスト化して、“何割を私がやっているのか”を見える化しました。そのうえで、“あなたは●割しかやっていません”と伝え、やり方がわからないなら教えるからと、夫の家事トレーニングをしています(笑)」
リスト化した項目は、「朝起きてカーテンを開ける」など、細かいものを含めて全部で233項目! そのうち旦那さんがしていたのは17%で、現在の目標はこの割合を35%まで引き上げることだそう。
ちなみに、育児をしながら仕事をされている理由は、「将来への貯蓄」と「仕事が好きだから」とのこと。
「以前は“仕事中毒”だったので、子どもが生まれて残業ができなくなったことに対し、鬱憤がたまってしまうこともあったんです。でも今は、子どものおかげで、仕事とプライベートのバランスを上手にとれるようになりました」
待機児童数が3年連続で増加しており、働きたくても働けないママもいます。そんなママたちの復職をサポートするために、託児所を完備する企業も増えていますが、まだまだ実感できず…。“子どもを勤務先に預けること”が一般に浸透するのか、引き続き注目しましょう。
(文・奈古善晴/考務店)