気を遣いすぎて疲れてない? 空気を読みすぎる「過剰同調性」とは
この記事は「アリシー」から提供を受けて掲載しています

気を遣いすぎて疲れてない? 空気を読みすぎる「過剰同調性」とは

本当の感情を見極めて…!
新垣結衣さん主演ドラマの『獣になれない私たち』など、最近空気を読みすぎるヒロインが疲弊してそこから脱却する物語が「共感できる」と人気です。空気を読みすぎるあまり、自己犠牲的に周囲に合わせようとする人は「過剰同調性」に陥っているかも? その特徴と対処法について、心理カウンセラーの山口真央さんにお話を伺いました。

■「過剰同調性」の人は、周囲に気を遣いすぎて疲れる?

──「過剰同調性」とは、どういった人のことでしょうか。

「刺激に敏感で周囲からの影響を受けやすい人のことをHSP (Highly Sensitive Person)と言いますが、これに近いのかなと思います。言葉通り、周囲に過剰に同調してしまう、空気を読みすぎてがんばりすぎてしまってストレスを抱えている状態です。人と境界線が上手にとれない人ということですね」

──共感が強いタイプということでしょうか?

「他人から影響を受けやすい人ですね。人とコミュニケーションをとるとき、自他の境界線が必ずあるんですが、中には常に全部のアンテナを張りすぎて、相手の調子の良し悪しに左右されてしまう人もいます。それにはいろんな事情があって、もともとの気質性、遺伝的な問題もあれば、後天的な問題もあります」

──後天的な問題というのは、家庭環境などでしょうか。

「例えば極端な例でいうと虐待を受けている子どもは、いつ親が不機嫌になって暴力をふるうかわからないので、常に敏感である必要がありますよね。自分と親との境界線がなくなったかのように、親について100%感じる自分でいなくてはいけない。子どもながらにこういったキャパオーバーなことが起きると、ホルモンが大量に出すぎてシャワー状態になり、アンテナが研ぎ澄まされます」

──虐待などの強いトラウマがなくても、なってしまうことはありますか?

「幼少期の家庭環境などが原因で、無意識のうちに『〇〇してはいけない』と自分に制約をかけている人は、なることがあります。

例えばすごく過保護な親のもとで育った人が、『私は成功してはならない』と思い込んでしまっていたり。母子家庭で育った人が、たまたま風邪を引いたときにいつもは忙しいお母さんが仕事を休んで面倒を見てくれたことが嬉しかったという経験から、『健康でいてはならない』と大人になっても心のどこかで思っていたり。こうした考え方はその人に染みついてしまっているので、親がいなくなっても続きます。大なり小なり、こういった無意識の思い込みを持っている人は多いです」

■他人のことばかり気になる人はまず「私、OK」から

──そういった、他人の顔色ばかりうかがったり、自分で自分を縛っているような人は、どうしたらいいのでしょうか。

「“アサーション”って聞いたことはありますか? 『私、OK』という適切な自己主張のことなんですが、『過剰同調性』の人はこれを忘れてしまっている状態なんですね。相手がOKであることばかりに目が行っている状態。でも、人とのコミュニケーションで大事なのは『私、OK』であることなんです。相手のOKが気になる人は、独りよがりになることを心配し、自己中・ワガママになると思うから向こうを優先してしまう。でも、そのために自分がOKでないのに『OK』としてしまうと、内心では不安なんです。本当は納得していないから。大事なのは私もOKで、向こうもNOでないこと。この範囲って、実は広いんですよ」

──自分の主張をした上で、相手の主張を聞いて、すり合わせることが大事なんですね。

「そうです。そして大事なのは、相手は変えられないということ。相手がNOということももちろんあります。どちらもOKの状態を目指そうと何らかの接点を探して、それでも相手が変わらなかった場合、それは相手の問題なので、自分が引き受ける必要はありません。

キーワードは『これ、誰の問題?』です。人の問題まで自分のことのように感じて処理してしまっていないか。人の不機嫌まで治そうと、自分にできないことまで引き受けていないかと、振り返ってみてほしいです」
──具体的には、どういったことを意識すると良いでしょうか?

「難しいかもしれませんが、本当の自分の気持ちを抑えすぎずに表現していくことです。自分が安全な場所で、とても信頼している友人、家族、そういった人がいなければカウンセラーでもいいので、信頼関係がなりたっている場所でちょっとずつ自分を表現する練習をしましょう」

──自分を認めてあげる、ということですか?

「人の機嫌じゃなくて自分の機嫌をとる、ということですね。自分の機嫌は自分にしかコントロールできません。だから、他者の機嫌をとる必要はないんです。それぞれ、自分が拳をおろそうと思ったタイミングでしかおろせないのですから。

『自己不一致』といって、外側で見せている感情と内側で思っている感情が違うと、つねにかっちりはまってないパズルのような気持ちの悪さがあります。ちょっとずつでもいいので、パズルを正しい場所にはめられるよう、本当の気持ちを表現できるようにしていきましょう」

■活性化されすぎた脳を休めるには瞑想や塗り絵セラピーを

──少しずつ、「いい子」の鎧を脱いでいくということですね。

「いい子をやめると何になると思いますか? 別に悪い子になるわけじゃないんですよ。いい子を演じている多くの方が、表側の自分をやめると悪い子になるんじゃないかと思っているんですが、中の自分を認めたらただ自分自身に戻るだけ。まず本当はどうしたいの? と自分に問いかけてあげること、その声を優先してあげることです。

平たく言えば、思い込みを自分ではずしていくということ。嫌なことがあったときって、その嫌な選択肢しかないような気がしますよね。でも、ものごとは表裏一体です。白か黒かというのは、実は自分が決めているだけ。白か黒かを選びたいだけなんです。“その考えは自分をハッピーにしているかどうか”に着目して、その上で選択していくことが大事です」
──「いきなり自己主張するのは難しい」という場合、今すぐ簡単にできることはあるでしょうか。

「『今、ここ』を意識することです。考えって、次から次へと生まれてきて止められないものですよね。それを唯一止めるには、『今、ここにある何かに集中する』ことなんです。

例えば、『文章を書きます』とか、『お皿を洗います』とか。塗り絵セラピーなどもありますね。5分でも10分でもいいから、まずは頭をからっぽにする時間を作りましょう。

瞑想でもいいです。一番簡単なやり方は、呼吸することだけを考えること。1、2、3……と数を数えて5で止めて、あとは倍の10を数えながらゆっくりはき切るというのを、10分続けるといいですよ」

──ヨガでそういうのをやったことがあります。

「そうですね。ヨガは有酸素運動で体を動かしたあとに、最後に呼吸をととのえて頭もリセットして終わりますよね。こうした状態は自分に意識を集中している状態なので、活性化されすぎた脳が静まったというデータもあります。

あとは、528ヘルツの音も有効です。音楽のバックに528ヘルツが埋め込まれているようなCDも出ていて、こういった音楽を聴くのも有効だと言われています。

過剰同調性に陥っている人は、40度の熱があるのにがんばりすぎているような状態なので、そうやって脳を休める時間を作ることから始めてみてください」
周りの目が気になる、つい相手に合わせてしまう……そんな自分に疲れてしまったら、まずは「今、ここ」に集中して脳を休め、それから自分の心の声を聞く練習をしてみてください。「私、OK」の正しい自己主張をした上で、相手と意見をすり合わせる本当のコミュニケーションから、新たな人間関係が生まれるかもしれません。

(小林麻美+アリシー編集部)

<取材協力>心理カウンセラー・山口真央さん
小林麻美
小林麻美
ミーハー成分多めなフリーの編集兼ライター。三十路を過ぎて二度の出産を経て、体力の低下を実感中。疲れても疲れてなくても、何はなくとも甘いものを摂取していたい。家族旅行やお出かけも大好きだけど、基本は家でマンガを読みながらゴロゴロするのが好きなインドア派。
ミーハー成分多めなフリーの編集兼ライター。三十路を過ぎて二度の出産を経て、体力の低下を実感中。疲れても疲れてなくても、何はなくとも甘いものを摂取していたい。家族旅行やお出かけも大好きだけど、基本は家でマンガを読みながらゴロゴロするのが好きなインドア派。
女性向けに情報を発信するWebメディア「アリシー」は、2019年6月13日をもってサービスを終了しました。グルメやファッション、マンガ・エッセイなどアリシーの一部コンテンツは、姉妹サイト「ママテナ」に移管しております。引き続きお楽しみください。
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