首こりの原因とその治療について理解を深める
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首こりの原因とその治療について理解を深める

第45回 肩こり・腰痛・不眠 40代に効果的な疲労回復術
ふと気がついたら、首をもたげてスマホをみているということはないだろうか。スマホに限らず、デスクワーク、家事、育児、介護など首に負担がかかる動作や姿勢を取ることが多くなっている現代人。無意識にしているその姿勢が実は首に大きな負担をかけていることをご存知だろうか。首こりに悩む現代人のためにその原因と対策をまとめた。

そもそもあなたを苦しめる首こりとは、何なのか

首こりとは、文字通り首周辺の筋肉がこっている状態のこと。つまり、首の筋肉や筋膜が正常ではないのである。

首コリを引き起こす原因

首の筋肉・筋膜が異常をきたす原因は様々である。筋肉や筋膜への血行不良は代表的な原因のひとつだが、大切なのは血行不良だけが症状を引き起こしているわけではないということ。近年の研究では、凝りがある箇所にモヤモヤ血管(異常な毛細血管)が発達することで血の流れが増し、症状が悪化する原因になっていることがわかってきている。つまり、凝りの原因は血行不良であるということが定説とされてきたが、その逆だったのだ。

実際に血流を改善しても一向に良くならない人は、モヤモヤ血管の存在を疑うべきである。首や肩凝りの予防、改善を求める前に、原因が血行不良だけではないということをまず押さえておかなければならない。

コリ=疲労ではない

日常生活にて負担がかかり、筋肉や筋膜に血行不良が生じること自体は異常なことではない。階段の昇降時に足が痛くなるのは負荷によって血流が悪化したためであり、痛みや不快感覚えることは生命であるが故の自然な反応だ。一時的な症状こそ出るものの休めば回復するのであれば「疲労」であり、凝りではない。凝りとは、休息をとっても回復しない状態だ。継続的に負担がかかり続ける状態、これが凝りを招くのである。重い頭を支える首は、ただでさえ疲れやすい部位。長時間同じ姿勢を保つことによるストレスや緊張によって首の筋膜や筋肉が負担を感じ続けた結果、コンデションが低下し首こりを感じやすくなるのだ。

首こりにも種類が存在する

ひとくちに首こりといっても、実は、様々な要因が重なって症状が出ることも少なくない。首こりに対処するには、首こりが起きるメカニズムの複合的な理解が必要なのだ。まずは、首こりの概要からチェックしていこう。

筋肉疲労が原因の首こり

同じ姿勢をとり続けるなど、筋肉に直接的な負荷がかかることで引き起こされるのが「筋肉疲労による首こり」だ。一時的なものと慢性的なものがある。一時的な肩こりは重い荷物を持ったり同じ体勢で長時間作業をした時に多く見られるものの、軽いストレッチや伸び、入浴等で解消されることが多い。一方、慢性的な首こりは、首から肩にかけての筋膜や筋肉が凝り固まってしまっている状態だ。

こっている部位は、「僧帽筋」「頭板上筋」「頭半棘筋」「後頭下筋群」の4つ。
僧帽筋は首、肩、肩甲骨周り、背中についている筋肉だ。面積が広いため影響も大きく、首や肩の凝りだけでなく肩甲骨凝りの元にもなる。頭板状筋は耳の後ろから首にかけて走行する筋肉。側頭部の頭痛やめまいの元となることがある。頭半棘筋は僧帽筋の深層にある筋肉。大後頭神経系を圧迫するため、後頭部の頭痛(大後頭神経痛)を引きおこすことかある。後頭下筋群は首の最深部の筋肉。耳の裏からうなじにVの字を描くように2本ずつある。頭部を支える大きな筋肉なのでこりやすい。頭半棘筋と同様に、凝りができると大後頭神経を圧迫して後頭部の頭痛を招くことがある。

健康障害による首こり

ストレスによる自律神経の乱れや、精神的ストレスなどで発症する「健康障害による首こり」。これは、上述したような同じ体勢を続けるなどの筋肉疲労が原因ではない首こりだ。心身の調節をしてくれる自律神経が乱れたことで身体が緊張し、首の筋肉が固くなった結果首こりを生じるのだ。

ちなみに、首を通る自律神経には交感神経と副交感神経がある。交感神経は活動している時や緊張している時、ストレスを受けているときに働く。副交感神経は休息している時やリラックスしている時に働く。

このように首こりのもとを詳しく知ることで、考えられる対策も広がるのだ。さらに詳しく首こりの原因を見ていこう。

何が原因でひどい首こりは生じてしまうのか

頭が前に出る前傾姿勢

2足歩行の人間は体全体で頭を支えるので首の筋力が弱い。成人の平均的な頭部の重量は体重の約10%。平均で約5kgだからボーリングの球が首の上に乗っているようなものと考えればよいだろう。うつむき姿勢で首にかかる重量は1.5~2倍にもなるのだ。

デスクワークやスマホによる前傾姿勢

デスクワークをしたり、スマホを見たりするのは骨格的に非常に負担のかかる姿勢だ。前傾姿勢になりやすい生活習慣から抜け出せない人も多いことだろう。

猫背をはじめとした不自然な姿勢

猫背をはじめとした不自然な姿勢をしていると、身体がバランスを取ろうと顎が前に突き出てくる。頭の重みが身体に分散されないので首に負担がかかってしまうのだ。

関節に負担も

頭の重さによる負荷が首のみならず関節に及ぶことも、首こりを重症化する原因の1つだ。関節への負担が長期化すると、骨の変形や頚椎の椎間板ヘルニアになってしまうこともある。

ストレートネック

本来であれば、ゆるやかなカーブを描いている頚椎が真っ直ぐに伸びてしまっている状態が「ストレートネック」だ。猫背など不自然な姿勢が体を前傾姿勢にし、結果ストレートネックを引き起こす。ストレートネックも大いに首こりの原因となるのだ。

ファッションが原因

ヒールやサンダルなどのファション性の高い靴が姿勢してしまう

ファションとしてだけでなく、仕事上、ヒールのある靴を履かなければならないという方は少なくないだろう。ヒールの高い靴を履くと、前方に倒れないように無意識に重心を後ろにするようになる。すると、バランスを保つために頭が前方に出て、首だけで頭を支えることになってしまうのだ。では、ヒールが全くないバレエシューズやサンダルなどの靴はどうだろうか。ヒールがないため良さそうに思えるが、ソールが薄いペッタンコ靴はクッション性が低いため、地面からの衝撃を体が直に受けてしまうのだ。上方からは頭部の重み、下方からは地面からの衝撃が首に負担をかけて、首こりにつながってしまうのだ。もちろん、膝や腰にも負担がかかる。

カットソーやセーターなど首まわりが開いたファッション

首周りが大きく開いた服をきて、冷房の風が直接首にあたるような環境にいたら、首コリを引き起こしやすいといえる。着たいのであれば、できる限り冷房や冷たい外気に晒さないように気をつけたほうが良い。ちなみに、冬の朝、起きたときに首や肩が痛かったり凝ったりする人が多いのは寝ている間に寝返りをうつことで首や肩が外気にさらされ冷えてしまうのが理由だ。

ストレスや疲労が原因

首こりが、疲労やストレスから起こる

疲労やストレスから自律神経が乱れることで首こりが発生することもある。自律神経は精神的な面とも密接に繋がっているからだ。

眼精疲労

スマートホンの使い過ぎやデスクワークなどで目の筋肉を酷使することが原因。

寒さによる筋肉の緊張、気圧変化による自律神経の乱れ

寒い場所にいると力んでしまい肩がこるのと同じように、首もこる。寒さで血流が悪くなることも一因だ。また、気温だけでなく気圧の変化によっても体は影響を受ける。低気圧の来襲に伴い不調となる方は少なくないが、これは気圧の変化で交感神経が優位になり、身体が緊張状態になってしまうからだ。

枕やメガネやコンタクトが自分に合っていない

就寝時に使用する枕の高さがあっていないと、常に首が緊張し続けることになるため首がこる。また、度数の合ってないメガネやコンタクトも眼精疲労の原因となるのだ。

持病が原因

「健康障害」「筋肉疲労」のみならず、持病が原因で発症することもある。この場合は個別の疾患の治療が必要だ。

頚椎の損傷

リラックスしている状態で急激に力が加わることで発症する「むち打ち症」。時間差で首の緊張が高まり、痛みや凝り、自律神経失調症様の症状が現われることがある。

変形性頸椎症

無理な姿勢が長期間続き、頚椎に負担がかかると骨が変形する。すると頚椎の摩耗や骨棘によって周囲の神経が刺激され、痺れや痛みがでる。主に加齢が原因ではあるが、決して中高年者だけのものではない。

頚椎椎間板ヘルニア

筋力低下や無理な姿勢で首の椎間板に継続的な負担がかかり続けたことによる摩耗、血流悪化による弾力低下で、椎間板内にある髄核(ゼリー状の物質)が漏れる。その結果、神経が圧迫され痺れや痛みとなる。

更年期障害

こりやすくなったり疲れやすくなったりするのも、閉経後の女性にみられる更年期障害の症状。

高血圧症

高血圧の症状として肩こりや動悸などがある。

こんな生活習慣の人は首こりになりやすい

首こりについての理解が深まってきたら、あなたの生活習慣を振り返ってみよう。以下に当てはまっている人は首こりになりやすい習慣を持っているので、気をつけてほしい。

ストレスでぐーっと歯を食いしばる習慣

歯を食いしばると頭から首にかけて力が入るため、筋肉が緊張し負担がかかり続けることになる。気をつけるだけで改善できる習慣なので、無意識に歯を食いしばっていないか確認してみよう。

同一のものを凝視し続けるデスクワーク

デスクワークは目だけでなく、首の筋肉にも影響を及ぼす。日々の習慣を変えることは中々難しいかもしれないが、背筋を伸ばすように意識を向けることや、パソコンのディスプレイの高さを目線の高さに調整することはできるだろう。

最も大きな要因となるのが長時間の「座り姿勢」

長時間の「座り姿勢」は首の筋肉だけでなく身体の血行も悪くする。30分に一度立ち上がって伸びをしてみよう。

育児、家事、さらに介護など

家事や育児、介護なども原因となりうる。同じ体勢や無理な体勢をしなければならないからだ。簡単には変えることのできない習慣だが、疲労を溜め込まないためにもストレッチなどのセルフケアの工夫を心がけよう。

運動不足による筋肉疲労と血行不良

慢性的な運動不足だと血行が悪くなるだけでなく筋肉量も減るので、首こりの原因になる。短時間でもいいので、運動をして身体の筋肉を鍛え、血行を良くしよう。

スマホ操作や読書に集中しがち

スマホ操作や読書の集中しすぎで姿勢が長時間かわらないことも首こりを引き起こす。スマホや書籍を目線の高さにすることが大切だ。目線の高さに保つことができなくなったら、体勢をかえるか、休憩する頃合と考えるとよいだろう。

首や肩が出る服をよく着る

夏は、エアコンによって首や肩が冷えることで首の血行が悪くなり首こりに繋がることもある。ストール等で直接風があたらないように首を守ることも大切だ。

首こりは、頭痛など身体へ影響を及ぼす

首こりは放っておくと他の身体の部位にも影響を及ぼす可能性がある。首こりで、併発しうる症状も把握しておこう。首こりでの、合併症状の危険性も理解したうで、早い段階で対策を打つことが望ましい。

頭痛

首こりがなかなか治らない場合や、慢性化すると頭やこめかみがズキズキとした痛みを生じることがある。

肩こり

首の筋肉だけでなく、肩の筋肉も緊張することで肩こりも併発する人が多い。

吐き気

自律神経が乱れている首こりでは吐き気を伴うことが多い。

めまい

耳鼻咽喉科領域に異常がなくとも、首の凝りがめまいを引きおこすことがある。

めまいが起こりやすい年齢

50歳前後が頻発しやすい。30代~40代女性も増えている。

目がかすむ

首こりの影響から、目の筋肉の緊張により目がかすむこともある。

耳鳴りがする

耳鼻咽喉科領域に異常が見受けられなくとも、耳鳴りも生じることがある。

腕がしびれる

首の神経が圧迫されることで腕がしびれることもある。

抜け毛

頭部の血流が悪くなり抜け毛が増えることもある。

白髪

頭部の血流が悪くなり白髪が増えることもある。

うつ症状

自律神経が乱れることにより、うつ症状が現れることもある。

首こりの間違ったマッサージなどの対処は危険

首こりが苦しい時にはつい自己流でマッサージをしたくなってしまうこともあるだろう。肩こりなどの合併症状が出てしまっているならなおさらだが、間違った方法で対処すると逆に危険を伴う可能性があるので注意したい。ここでは首こりの自己流の間違った対処の危険性について掘り下げる。

首を過度に揉むことで、かえって慢性化してしまう

自己流のマッサージで首を揉むことによって、一時は緩和をしてもすぐに戻ってしまうのではないだろか。はじめは良かったが、だんだんと強く押さないと効かなくなってしまったという方も少なくない。これは刺激に慣れてきてしまっていることを意味し、繰り返すことで慢性化し、治りにくい状態にしてしまうことになる。

首は冷やすのではなく、しっかり温めることが重要

首こりにはホットパック等で暖めることが大切だ。尚、温感湿布は「温感」はあっても温熱効果はないため、手間だとしてもきちんと温めることが大切だ。温めることで血行が良くなり、筋肉の緊張がほぐれる。

首こりに湿布は効かないのか?

湿布は医薬品であり、第一類から第三類に分けられている。三つの区分のうち、消炎鎮痛剤が含まれているのは第一類と第二類だ。病院で処方される湿布は第一類だ。最近では、ロキソニンの湿布が薬剤師のいる薬局で購入可能となっている。第三類は、「冷感湿布」や「温感湿布」に代表されるもので、基本的に消炎鎮痛剤は含まれていない。効果はマイルドであり冷感または温感によるリラクセーション効果がメインであるといえる。痛みや凝りがひどい時には、第一類または第二類の湿布を用いるとよいだろう。ただし湿布はあくまでも対症療法である。症状緩和のために対症療法は大切ではあるが、対症療法だけを繰り返すことは慢性化につながってしまうということは胸にとめておいてほしい。

首こりの対策を考え、痛みを解消・改善しよう

首こり対策には、正しい知識を持って対策を行うことが効果的だ。ひとつずつ効果の望める方法を紹介していこう。

首こりには体操やストレッチも効果的

体操やストレッチなどで血行を良くして筋肉をほぐすことも効果的。デスクワークや同じ姿勢をとっているときは一時間に一回はストレッチしよう。

こちらは実際の治療でも取り入れることがある内容のストレッチだ。当ストレッチは、最近話題の“筋膜リリース”としての効果もあるので、凝りの緩和だけでなく、肩甲骨周辺の柔軟性の改善にも効果的。

ストレートネックを予防する

まっすぐ立ち、壁を背にして身体をつけたときに後頭部も壁につかなければストレートネックの可能性がある。本来は、後頭部、肩甲骨、お尻、かかとが自然に壁につくからだ。予防するためには、可能な限り枕を使わずにあおむけに寝ることが大切だ。普段からスマートフォンなどを操作しているときには画面を顔の高さの位置にキープして使用することも予防につながる。

入浴法を変えて、血行を良くする

ぬるめのお湯(38~40℃前後)にゆったりとつかると良い。血行のめぐりがよくなり筋肉の緊張を解きほぐすことができる。自律神経が乱れている時はあえて熱めの湯につかり、しっかりと汗をかくとスッキリすることがある。行う際は、くれぐれものぼせに注意をしてほしい。

病院で診察を受ける

しびれやめまい、頭痛を併発する首こりは病気が隠れている可能性があるので受診することをおすすめする。

首こりも未然に防げば怖くない、予防法を知ろう

生活リズムを日頃から整える

就寝時間と起床時間を一定にすることが自律神経にとって負担が少なくなる

自律神経と密接にかかわっているため、まず自律神経を整えることが第一だ。毎日同じ時間に起きて寝る、規則正しい生活は自律神経の負担を減らすことができる。

同時刻にムラなく食べることが自律神経には良い影響を与える

食事もムラなく毎日3食同じ時間帯に食べることで良い影響を与える。

ストレス対処法を確立させる

身体の休息

しっかりと睡眠をとり、休みの日を設けることで身体を休ませることはとても大切。

メンタルの休息

心にもゆとりを。常に張り詰めた仕事モードではどうしても心身共にストレスがかかる。心の癒しとなる行事を生活にとりいれてみることをすすめる。

汗をかくことによりストレス解消や自律神経を安定させる

適度な運動で汗をかくことも予防に。血行良好になるだけなく自律神経を安定させる効果もある。

首こりのために枕も見直してみる

高すぎる枕は首の筋肉に負担がかかる。なかなか自分に適した枕が見つからない方は、バスタオルを重ねてその時々の気分やカラダの調子のあわせて調節するのがおすすめ。

首こりがどうしても治らない場合は

首こりが解消しない場合は、他の病気が原因と疑うべき、すぐ病院へ

首こりが解消しない場合やほかの症状が出る場合は、単なるこりではない可能性が高いのですぐ病院での受診をすすめる。

病院で異常が見つからなければ治療院へ

首こりの原因は人それぞれだ。原因を見極め、個々に適した対処をすれば首こりは改善し、凝りにくい身体づくりが可能だ。対症療法だけでなく原因療法を組み合わせた治療を行ってくれる治療院を選ぼう。

今回のアドバイザー

丸山太地
肩こり研究所
日本大学文理学部体育学科にてスポーツ医学を学び、在学中よりトレーナーとして活動。卒業後、東京医療専門学校にて国家資格を取得し、東京銀座の治療院で経験を積んだ後、2012年に肩こり研究所を開設。
日本大学文理学部体育学科にてスポーツ医学を学び、在学中よりトレーナーとして活動。卒業後、東京医療専門学校にて国家資格を取得し、東京銀座の治療院で経験を積んだ後、2012年に肩こり研究所を開設。

取材協力

肩こり研究所

取材協力

肩こり専門治療院のストレッチ。
Webメディア「éditeur」は、2019年6月13日をもってサービスを終了しました。一部コンテンツは、「ママテナ」に移管しております。引き続きお楽しみください。
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