みなさんは「フジロック」と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか。
フジロックフェスティバル、通称「フジロック」は、新潟県の苗場スキー場で3日間にわたって開催される日本最大級の野外フェス。
「フジロッカー」と呼ばれる熱烈な愛好者も多いこのイベントに、昨年の夏、3歳の娘さんと一緒に参戦した生粋の「フジロッカー夫妻」にお話を聞きました。
フジロッカー夫婦に、子どもが生まれるとどうなる?
―早速ですが、おふたりのことは「フジロッカー」と呼んでもいいんですか?
あぐり:はい!フジロックはライフワーク。私にとっては1年に1回の命の洗濯です。
ヤスオ:僕は結婚したら奥さんがフジロッカーだったことがきっかけで一緒に楽しんでいます。
夫婦としては、フジロックはお正月やお祭りみたいな年間行事です。
―あまりにフジロックが好きで妊娠中も産後もフジロックは欠かさなかったというのは…ほんとですか?
あぐり:もちろんです!出産前のフジロックは、妊娠7ヶ月の時でした。
ヤスオ:「飛ばないで、転ばないで」って約束をして一緒に行ったんだよね。
あぐり:そうそう、ノリノリで横揺れしたりしていて、動きが激しくなりそうになると横からすかさず止められて…。
ヤスオ:ほんと絶対に転ばないでって思ってた。
あぐり:ご心配おかけしました…(笑)
ちなみにヤスオくんは、行く前に病院を調べたり、当日はお酒を控えめにしたりしてくれてたんだよね。
ヤスオ:何かあった時のためにね。
娘を預けて行った「フジロック」で起きた大事件
―そうすると…出産後のフジロックは、産後4ヶ月くらいの時ですか?
あぐり:そうですね。産後4ヶ月。
ヤスオ:大変だった頃ね。
あぐり:そう…ちょっと語ってもいいですか?
―どうぞ(笑)
あぐり:そもそも私は毎日規則正しく暮らせない人で、ルーティンをこなすのが苦手なんです。
だから、産後の授乳とオムツのルーティンがストレスで…。すっごくつらかったんです。
産後はやりたいことが全部抑圧されてた感じ。
だから、産後にフジロックに、行くことはあまり迷わなかったんです。逆にフジロックだけは…!って。
ヤスオ:そう、だから娘が生まれてから3年間は、「現地調査に行ってくる」って娘を僕の実家に預けて仕事のタテマエで夫婦ふたりで行っていました。
あぐり:“ライフワーク”だからね、娘には仕事みたいなものという言い訳をして。
―フジロッカーにとっては仕事みたいなもの…なるほど。
ちなみに3年間、毎回行くことは全然迷わない感じだったのですか?
あぐり:ヤスオくんのお母さんが「産後だからといって我慢せず、好きなことは続けた方がいいよ」と快く預かってくれたこともあって、産後最初のフジロックは1番行くことにこだわっていました!
あぐり:でも、娘が、1歳、2歳と大きくなるにつれて、1年間ずっと楽しみにしていたフジロックを楽しめない事態になって…。
―え?いったい何が起きたんでしょう?
ヤスオ:僕たち基本はトリや目当てのアーティストが見たくて行くんです。
だけど、娘を預けていくわけだからできるだけ夜早めに迎えに行こうと思って、帰る時間を早めたんだよね。
あぐり:そうなんです。でもそうしたら、見たいアーティストが見られずに逆に消化不良になっちゃって。
フジロックを100%楽しめなくなっちゃった。
ヤスオ:そうだったね。
あぐり:これ以上娘を置いては行けないと決定的に思ったのは、一昨年のフジロックでした。
娘も大きくなって「親がふたりともいない」という状態がわかるようになっていたので、フジロックから帰ってきてから、当時2歳だった娘の甘えやグズりがすさまじくて。
私自身も、何の制限もないフリーダムなフジロックから帰った後に、急に娘のお世話と仕事の現実に引き戻されていろいろうまく対応できなくなってしまって。
ヤスオ:それもあって、来年は3歳になるし、家族でフジロックに行こうと1年かけて準備することにしたんです。
家族みんなでフジロックに行くために1年をかけて準備した
―フジロックに行くために1年をかけて準備…ですか!?
ヤスオ:家族で行く夏フェスに関しては、ネット上に多くの記事があるので、それを参考にしたり、自分たちの経験をもとにできる限り準備をして。
あぐり:子連れフジロックは、我が家の一大プロジェクトだったからがんばりました。
―なるほど…その大変さをじっくり聞きたいです。どんな準備をしていったのでしょう?
ヤスオ:最初に考えたのは、やっぱり宿泊先ですね。フジロックは3泊4日の長期戦。
きちんと体を休められるかというのは、フジロックを楽しむためにも大事なポイントです。
民宿やホテル、テント泊などの選択肢があるんですが、いろいろ調べた結果、会場から最も徒歩の距離が短くて、雨風がしのげて、居心地と寝心地がいい「キャンピングカー」にすることにしました。
キャンピングカーも、事前に練習をしたんですよ。
―キャンピングカーの練習?
あぐり:娘2歳のフジロックから4ヶ月後、山梨の実家に帰省する時に、電車をやめてキャンピングカーを借りました。
ヤスオ:実際に山の中のキャンプ場でキャンピングカーにも泊まってみたんだよね。それで、使い心地を確認してこれならいけるかなって。
―準備のレベルが本気すぎる…。
あぐり:あとは、フジロックの音楽や動画は家でもよく流していたよね。
年が明けてからは、母娘で都会の野外フェスに1日参戦したり、好きなアーティストのライブに行ったりもして。
ヤスオ:けっこうたくさん行ったよね。
あぐり:うん、一緒に行ってみて、雨にふられたり、3時間おんぶやだっこを続けたりしたけれど、娘は楽しそうにしてくれていました。
娘と一緒に楽しめる確信を持てたことが、子連れでフジロックに行く大きな自信につながったと思う。
ヤスオ:そうだね。
あぐり:フジロックが近づいてきてからは、毎日1回は家族3人で「フジロックいくぞ!」「おー!」って掛け声をかけて。
ヤスオ:気持ちを高めてた(笑)
フジロックの「予習」をする!?
ヤスオ:フジロック前には、フェス仲間を集めて、音楽をかけながらBBQをするっていうフジロックの予習もして。
―予習って何をするんですか…!?
ヤスオ:フェス仲間を集めて、屋外で今年のフェスについて話しながらご飯を食べるんです。
グラストンベリー(※)や過去のフェス映像、出演アーティストの音楽をかけながら。
娘もフジロックの会場の雰囲気を感じられるかなと。
※グラストンベリー・フェスティバル。イングランド・ピルトンで1970年から行われている大規模野外ロック・フェスティバル。
あぐり:みんなとても楽しんでくれるので毎年の恒例行事になってます。ヤスオくんは大変だからもうやりたくない(笑)って毎回言ってるけど。
ヤスオ:まぁね(笑)
でも、予習したことで、フジロックの現地でBBQのメンバーに会って娘が安心するという効果もあったから、やってよかったと思います。
家族で楽しむために、子どもの気持ちを置いてけぼりにはしたくない
ヤスオ:3歳の子どもでも、言っていることはわかるし伝えたいことも感じています。
だから、準備段階から娘にもフジロックについてすべてを話していました。
「つらかったり、帰りたかったら、帰るからちゃんと教えてね。でも、お父さんもお母さんもとっても楽しみにしていることだから、3人で一緒に楽しめたらうれしいな」って。
あぐり:それを聞いた時の娘はにっこり。気持ちが通じたようでホッとしました。
ヤスオ:1年かけて準備をして、「一緒にフジロック行く?」と聞いたら「行きたい!」と言ったのが最後の決め手になりました。
あぐり:娘もフジロックを楽しみにしてくれていたのがうれしかったね。
1年かけてステップアップしながら、物理的な準備だけでなく、子どもの精神的な部分でも、かなり周到に準備ができたと思う!
ヤスオ:がんばったよね。
そして、ついに迎えた「子連れフジロック」本番
―フジロック本番は、どうでしたか?
あぐり:楽しめました!子連れで行くと、子どもを気遣うことが一大ミッション。
正直ライブどころではないタイミングもあったんけど、旦那さんが娘の世話をほぼ引き受けてくれたので、私は目当てのアーティストを堪能させていただきました…!!
ヤスオ:奥さんは生粋のフジロック好きなので、まずは彼女に楽しんでもらえるのが1番。
次に家族みんなが楽しめることというのは考えていたんです。楽しめてよかったね。
あぐり:うん、ありがとう!
―予習の成果はどうでした?
あぐり:フジロックは意外と子連れの人も多くて、キッズ向けのスペースもあったりして、娘も楽しそうでした。
娘のために準備した装備もフル活躍してくれました。
ヤスオ:初日はテンション高めだったのですが、環境が違ってさすがに疲れがたまっていたみたいで、特に朝はよくぐずってましたね。
あぐり:でも、帰ってきてから娘から「フジロック、また行こうね」って言ってくれたんです。
何が楽しかった?って聞いたら、「オオカミ!」って。
お父さんの肩車でぴょんぴょん跳ねながら見た、MAN WITH A MISSION(※)が最高だったみたいです!
(※MAN WITH A MISSION:頭はオオカミ、身体は人間という外見の5人で構成されたロックバンド)
ヤスオ:事前に準備することによって、フジロックの環境にしっかり対応できたかなと思いました。
自分たちの体力と子どもの体力がどれだけかが分かったから、今後の楽しみ方の参考にもなりそう。
子連れでフジロックに参戦してみて変わったこと
―1年間の準備ほんとにおつかれさまでした。
子連れでフジロックへ行ってみて、なにか変化したことや、発見ってありましたか?
あぐり:1年の準備期間も含めて夫婦での連携が前よりも取れるようになったし、お互いへの理解とか共感も強まった気がします。
あと私自身は旦那さんにますます甘えて、頼れるようになった!いつもありがとう!
ヤスオ:いえいえ(笑)
僕は自然の中で大きなイベントを経験することは、自分にも子どもにも成長する要素があると考えていました。
だから、なによりフジロックに行って娘の成長を感じられたことと、奥さんも楽しんでくれたことが一番でした。
あぐり:今年のフジロックは「親子ともども無理をせず、でもできる限り精一杯楽しむ」が実現できたと思っていて。
この1年…いやこの3年、子どもと一緒に行くフジロックは夫婦の大命題だったので、無事に達成できてほっとした!
それで、子連れでフジロックに行ってみて、自分のやりたいことで命の洗濯をすることはとても大事で、あきらめてはいけないって思ったんだよね。
ヤスオ:子連れでフジロックに行ってみて、子連れでも工夫すればどんな環境も楽しむことができる、ということも改めて確認できたよね。
あぐり:そうだね。子どもが邪魔だとか、おまけとかいうのではなくて。
逆に子どものことが大好きで、家族みんなで一緒にいたいからこそ、「みんなで楽しめる方法は何か?」と模索することで、解決策も見つけることができるんだと思いました。
―フジロック、いつまで家族みんなで行けるでしょうね。
あぐり:どうだろう。
娘がいつまで一緒に行ってくれるかはわからないけど、今は、娘が20歳になった時に、一緒にお酒を飲みながらお互いが好きな音楽とその魅力を共有できたらいいな、なんて妄想してます。
ヤスオ:そうだね。
僕たちはじいちゃんばあちゃんになってもフジロックに行くつもりなので、娘にも「苗場集合な!」なんて言ってね。
(取材・文:コノビー編集部 橋本さやか)
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