私たち大人は、自分も赤ちゃんだった時期があったはずなのに、そのときのことをまったく覚えていません。
その点、まだ三、四歳のこどもだと、赤ちゃん時代というのは、ほんの少し前のこと、それを記憶としてことばで語ることはできないにしても、身体で覚えています。
こどもっぽく人に甘えるやり方も、大人は、それをまねてやってみようとしてもかんたんにできません。
それよりなにより照れてしまいます。
「赤ちゃん返り」をしている子どもの気持ちって?心と成長の関係性
47,450 View『親になるまでの時間』(「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」115号・116号。ジャパンマニシスト社) より、厳選した4編をご紹介。
第二弾のテーマは「赤ちゃん返り」です。
赤ちゃん返りはなぜ起こる?
その点、赤ちゃん時代を超えたばかりのこどもは、赤ちゃん的な甘え方がまだ身にしみついていますから、下にきょうだいが生まれて目の前で赤ちゃんが親に世話され、甘えているのを見たりすれば、そこに自分を重ねて、心地よかったそのころの姿にもどろうとすることも容易ですし、本人にとって心理的にさして不自然ではありません。
それに、こどもだって大きくなれば、身のまわりがいろいろ見えてきて、心配の種も不安の種も増えてきますし、そんなとき赤ちゃんのように守られたいと思うことがあっておかしくありません。
心理学の世界では「退行」といったりしますが、けっして病的なことではなくて、たいていはごく健康的な反応で、むしろほほえましいといってもよいくらいです。
大人だって、いつも突っ張って、しっかり大人でありつづけるよりも、ときに「こども返り」をして、こどもっぽい遊びに興じたり、お酒を飲んでふざけたり、あるいは安心できるだれかにほっこりと包まれたりしているもので、その種の退行は、人が思うよりもずっと頻繁に起こっていることかもしれません。
もっとも、こどもに返りっぱなしでは困りますが、たいていは、いっときほっこりすれば、元の大人にもどって、それなりに大人の生活を楽しむものです。
こどもの赤ちゃん返りも、返りっぱなしになることはまずありません。
こども自身にとっても、基本的には、やはり大きくなることがうれしいもので、ただ、それでもたまには甘えたいというだけ。
その意味で、赤ちゃん返りはむしろ次の一歩へ向けての一休みと考えたほうがいいかもしれません。
赤ちゃん返りしたこどもを、赤ちゃんあつかいしていると、そのうち自分からやめたりするものです。
(「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」115号『親になるまでの時間・前編』より)
※この記事に使用した画像は"写真AC"のものを使用しております。
「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」115号『親になるまでの時間・前編』
「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」116号『親になるまでの時間・後編』
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