――その後、黒沢に「お直し業務」のことを話し、答えが出るまでやってみたらどうかとアドバイスをした。城には王子がいるけど、お直し作業場は別の部屋になるから、カエルのままでもいい、と黒沢に合わせて話すと、黒沢は「やってみます」と答えた。
黒沢と別れ、俺はふらりと本屋に立ち寄った。気管支炎になってしまって、外遊びが出来ない奏太のために電車の本でも買っていこう。
最近は車も好きだから「トミカプラレール図鑑」にしようかな。
そんなことを思いつつ、頭の中はショックでいっぱいだった。なんだろう、今日という日は。窓ガラスに映った自分の疲れた顔にふと気づく。
俺だって…服が好きで岐阜から上京して、服飾専門学校に行って学んだのに。気づけばスタイリングとも関係ないお直し業務担当になってしまった。
その上、若い子に「諦め方を教えてくれ」なんて言われるし。
そもそもさ、俺、マネージャー業もやりたいのかな…。
満 「はぁ…」
重めのため息を吐き、レジに向かう道すがら「戸建て・庭・エクステリア」という本が目に入った。思わず立ち止まり手に取ると、表紙にブルーベリーの木が出ている。懐かしい。俺はこんな庭を知っている。
公開 2018年02月27日
嫌な予感はしてたんだよ、電話でなきゃよかった。 / 第7話 side満(2ページ目)
35,838 Viewマネージャー業務に加えてお直し業務担当をすることになり残業が続く満。やっと奏太と遊べると思った週末の土曜日も、急遽休日出勤になってしまう。やっとアシスタントたちの面談を終えてホッとするも、社長から「服のお直し業務」担当になるように言われてしまう。服が大好きで、スタイリストを目指していたはずなのに、やりたかった仕事とどんどん遠くなっていってしまう…。
※ この記事は2024年11月16日に再公開された記事です。
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連載「家族の選択」
#7
さいとう美如
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