猛烈にモヤモヤしながら帰宅すると、夕飯の用意が出来ていた。
今夜は母ちゃんが野菜中心の料理をたくさん作ったようで、一品一品は普通の家庭料理だけど、なんだか豪華に見える。
満「ただいまー」
真由美 「おかえり」
キリコ 「おかえりなさーい」
満 「奏太、ただいま」
奏太 「………」
ぜんぜん楽しくない俺の気持ちとは裏腹に、お直し業務は順調で、ララウ全会員にサービスを始めることになり、俺は今でもときどき休日出勤されられている。
だから奏太は再び「パパきらい」モード発令中。大好きなわが子に無視されてまで仕事する俺…。
真由美 「さ、たべよ、たべよ」
奏太 「いっただきまーす!」
定時で帰れるようになって、こうして夕飯を一緒に食べられるのはすごくいいんだけどなぁ。
これにプラス「俺のやる気」「奏太と遊ぶ時間」も確保できたら最高だけど、それは望み過ぎなんだろうか。さっきのフォトスタジオなら全部叶ったりして…。
副菜をちょこちょこ挟みつつ食べていると、奏太が眠くなってしまって、キリが奏太を抱えて寝室に向かった。眠いなら寝たらいいのに、寝付けずにグズっている奏太の声が聞こえる。
キリと替わってあげたいけど、奏太、俺だとさらにグズるだろうな…。
満 「…はぁ」
思わずため息を吐くと、母ちゃんと目があった。
真由美 「仕事はどうなの?」
満 「…ん、別に、フツー」
楽しくない仕事のことを母ちゃんに話したくなんかありませんよ…。
真由美 「フツーって…。たまにしか聞けないんだから聞かせてよ」
満 「別に…話すようなことはないよ。…疲れてるんだからゆっくりテレビ見させてよ」
真由美 「…ふふふ」
満 「…なんだよ?」
公開 2018年03月09日
やりたい仕事と家族の時間。両方はやっぱり高望みなんだろうか。 / 第10話 side満(2ページ目)
35,119 Viewスタイリストの派遣会社・フリープランでマネージャーをしていた満は、社長の頼みを断ることができないまま、高級クリーニング店ララウと共同で始める「服のお直し」の新規事業の担当になってしまった。服を作るのが大好きだったはずなのに、やっているのはお直し業務の依頼をメールや電話で受け付ける仕事…。やりたかった仕事とどんどん離れていくことに悩む満に1本のメッセが届く―。
※ この記事は2024年10月05日に再公開された記事です。
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連載「家族の選択」
#10
さいとう美如
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