――翌日。
俺は新幹線で実家に向かい、転職しようとしていること、書類選考が受かったことを家族に話した。
大喜びした兄ちゃんは泣きながら酒を飲み始めるし、まるでもう転職成功みたいな雰囲気で参ったけど、みんな喜んでくれたから俺もすごく嬉しい気分で布団に入った。
キリコ 「パパ、改めておめでとう」
満 「…なんだよ、まだ面接があるでしょ」
キリコ 「そうだけどさ。…川口つばさ幼稚園の制服受け取りと代金支払いが迫っているけど、こうなったらギリギリまでやってみようね、いろいろ」
満 「そうだね」
キリコ 「さー、もう寝よう。明日は5時起きだよ」
満 「別にいいんじゃないの、俺たちは参加しなくても」
キリコ 「奏ちゃんに体験させてみたいんだよ、ほうれん草取り」
明日は1月最後の日曜日。
子どもの頃から円田家の一大イベント。
家族全員でほうれん草の収穫を手伝う。
まさか自分の子どもも参加することになるなんて、なんだか笑える。
体も気持ちも引き締まるような冷たい空気――。
気持ちの良い冬晴れの下、円田家全員、農作業着になり、園芸振興会ほうれん草部・会長の畑に集まった。
公開 2018年05月11日
久しぶりの1人暮らしは、子どもと暮らす楽しさに気付かせてくれる。 / 26話 side満(2ページ目)
40,627 View岐阜にある満の実家近くの公園で出会った男の子、圭吾となかなか仲良くなれなかった奏太だったが、小学校のバザーを通してふたりの関係は一歩前進する。その頃、満は――。
※ この記事は2024年10月20日に再公開された記事です。
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連載「家族の選択」
#26
さいとう美如
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