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公開 2018年05月11日  

久しぶりの1人暮らしは、子どもと暮らす楽しさに気付かせてくれる。 / 26話 side満(2ページ目)

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岐阜にある満の実家近くの公園で出会った男の子、圭吾となかなか仲良くなれなかった奏太だったが、小学校のバザーを通してふたりの関係は一歩前進する。その頃、満は――。


――翌日。

俺は新幹線で実家に向かい、転職しようとしていること、書類選考が受かったことを家族に話した。

大喜びした兄ちゃんは泣きながら酒を飲み始めるし、まるでもう転職成功みたいな雰囲気で参ったけど、みんな喜んでくれたから俺もすごく嬉しい気分で布団に入った。


キリコ 「パパ、改めておめでとう」

   「…なんだよ、まだ面接があるでしょ」

キリコ 「そうだけどさ。…川口つばさ幼稚園の制服受け取りと代金支払いが迫っているけど、こうなったらギリギリまでやってみようね、いろいろ」

   「そうだね」

キリコ 「さー、もう寝よう。明日は5時起きだよ」

   「別にいいんじゃないの、俺たちは参加しなくても」

キリコ 「奏ちゃんに体験させてみたいんだよ、ほうれん草取り」


明日は1月最後の日曜日。

子どもの頃から円田家の一大イベント。

家族全員でほうれん草の収穫を手伝う。

まさか自分の子どもも参加することになるなんて、なんだか笑える。


体も気持ちも引き締まるような冷たい空気――。

気持ちの良い冬晴れの下、円田家全員、農作業着になり、園芸振興会ほうれん草部・会長の畑に集まった。



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そこには会長家族、タカヒロの両親や近所の人たちなど、総勢15人くらいがいる。


会長  「今日は皆さんありがとうございます。ほうれん草を刈るグループと、収穫したほうれん草を袋詰めにするグループに分かれて作業していきます。袋詰めのグループはまず、うちの母ちゃんと一緒に昼飯の用意をお願いします。刈るグループは終わったあと鎌などの掃除もお願いします。皆さん、ケガのないように無理せず頑張りましょう!」

一同  「おー!」


小学生や奏太と同じくらいの子どもも何人かいて、さっそく彼らは泥だんご作りを始めた。

奏太は「人見知り」より「泥だんご作り」が勝ったようで他の子とおしゃべりはしてないけど、せっせと泥を丸めている。

母・真由美と義姉・千晶は袋詰めグループになったから、先に昼飯作りに参加。

俺とキリは鎌を借りて、せっせとほうれん草を収穫していった。

しゃがんで作業していくから、腰、脚、膝などが徐々に疲れてくる…。

うん、確実に年々きつくなってく。

よくやってるな、お年寄りの皆さん。

尊敬します。


2時間ほど収穫し、刈るグループはほうれん草を袋詰めグループに渡し、鎌などを洗ったり、長靴についた土を落としたり、土汚れがある子どもたちを綺麗にして、少し休憩に入った。



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会長宅の縁側に腰を下ろす。

あぁ、朝日が温かい。

気持ちいいなぁ。

やっぱり好きだな、この年一行事。

程よい疲労感と満たされていく心を感じていると、キリが俺の横に座り「きもちいいね」と笑った。


   「キリ」

キリコ 「なに?」

   「来年もやろう」

キリコ 「そうだね」

   「来年も再来年も。ずっとやれるように面接がんばるよ」

キリコ 「うん、頼んだ」


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それからしばらくして袋詰めグループも作業が終わって、会長の掛け声とともに11時前に早めのお昼ご飯になった。

会長宅の茶の間に入るとまったく変わっていない風景に驚かされる。

みんなで食べるこのローテーブルも、野菜中心のたくさんの料理も、部屋の香りも。

子どものころのままだ。

全員が席に着き、恒例の食事会が始まった――。

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▶︎▶︎ 次回、27話は、5/15(火)20時公開予定!

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※ この記事は2024年10月20日に再公開された記事です。

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