栃木県出身、今は埼玉県川口市に暮らす専業主婦。
夫の満とともに、3歳の息子・奏太を育てている。
今は、4月から始まる奏太の幼稚園のことで頭がいっぱい。
子どもが同じ幼稚園に入園予定の、助け合えるママ友たちとの付き合いも大事にしている。
奏太が幼稚園に入園したら、庭付きの白いマイホームを買って、
自宅でできるライターの仕事を再開することを夢見ている。
3分で振り返る!連続小説『家族の選択』1〜20話あらすじまとめ
6,012 View育児と仕事の両立に悩むキリコ、やりたい仕事への転職を迷う満、そして、幼稚園入園を控えた奏太。子育て世代の家族をとりまく、様々なテーマを描く連続web小説『家族の選択』は、あと10話で完結予定。いよいよ訪れる、3人の「家族の選択」とは…?
これまで公開された第1話〜第20話までを一気読みできるように、ストーリーをまとめました。
この物語に出てくる人たち
円田キリコ(34)
円田満(36)
キリコの夫。
岐阜県でラーメン屋『おぼろさん』を営む、円田家の次男。
上京して服飾専門学校を卒業し、スタイリスト派遣事務所『フリープラン』でマネージャーをしているが、
本当は大好きな服を作るような仕事がしたいと考えている。
仕事が忙しく、なかなか家族の時間を持てないのが悩み。
岐阜の地元の友人たちとは、今でも仲がよく連絡を取り合っている。
円田奏太(3)
キリコと満の息子。
人見知り、場所見知りの3歳。
4月から『川口つばさ幼稚園』に入園予定で、今はそのプレに通っている。
満の仕事が忙しくなると「パパきらいモード」を発動するが、
大好きな電車を見せてくれるとなるとご機嫌スイッチが入る。
これまでのお話(1話〜20話)
埼玉県川口市。季節は12月。
奏太の幼稚園入園を目前に控えた円田家に、「それぞれの仕事」「家探し」をめぐる新たな波乱が訪れる!
子どもが生まれた。
親になった。
家族と過ごす時間だって大事にしたい。
でも小さい頃からの夢だった仕事だってあきらめたくない。
キリコ、満、そして奏太。それぞれの選択は…。
sideキリコ:夢のマイホームで、子育てをしながら仕事をする。どうすれば実現できるんだろう。
目下の夢は、ここ川口でマイホームを購入すること――。
家族で内見を続けていたキリコは、屋上庭園のある理想の物件に出会う。
この物件を購入するためにも、来年4月の奏太の入園を待たず、今のうちに仕事の当てを探そうと動き出すキリコ。
当初の予定よりフライング気味に、以前の取引先2社に連絡し、すぐに返事があったフリーペーパー制作会社『RAIRA』から急ぎの原稿を請け負った。
だが、毎日に追われ、奏太が高熱を出し、思うように原稿を仕上げることができなかった。
納得しないまま提出するしかなかった原稿は、ほぼ丸々修正された状態で掲載された。
甘かった。子育てしながら働くのがこんなに大変だなんて…。
追い打ちをかけるように、キリコも高熱を出して寝込んでしまう。
休日出勤しなければならなくなった満に変わって、岐阜から義母・真由美が手伝いに来てくれることになった。
気が重いキリコだったが、真由美と過ごす中で初めて「頼る」ことの安心感を知り、思いがけず子を持つ同じ母同士の「楽しさ」をも味わうことができたのだった。
そんな時、メールを送ったもう1社『ヨリミチビヨリ』の吉田からも返信が届いた。
新たにママ向けのサイトを作ることになったので、ライターとして入ってくれないかという依頼だ。
でも、また『RAIRA』の二の舞いになるんじゃないか…。
キリコがそう思い悩んでいると、満が背中を押してくれた。
満 「会うだけ会ってみたらいいんじゃないの?吉田さんも子どもがいて、同じ境遇なんだしさ。」
そして、満はこう続けた。
満 「やりたいことで声かけてもらえるなんて、恵まれてると思うよ。俺なんて…」
次の土曜日、吉田との打ち合わせにやってきたキリコ。
「ママの気持ちにぴったり寄り添いたい」がメインテーマだという立ち上げ中の企画は、スタッフも全員ママでやっていこうというこだわりようだ。
これ以上はないような話だが、キリコはどこか気持ちが晴れずにいて…。
キリコは思い切って、吉田に『RAIRA』の仕事を落としたことを打ち明けた。
そして、『ヨリミチビヨリ』の企画のライターたちはどうやって仕事と子育てを両立しているのかを聞いてみた。
吉田の話によると、今回の企画に携わるメンバーはフリーで活動する地方在住者ばかり。
地方では、都会に比べて保育園に入りやすく、子どもが熱を出した時には近くに住む実家や義実家の協力を得ながら仕事をしているというのだ。
そして吉田自身も、義実家で同居しているという。
義実家での同居は大変じゃないかと問うと、吉田は「暮らしを客観視する」ためのレーダーグラフについて話し始めた。
このレーダーグラフは、五つの角に「仕事」「子ども」「夫」「自分」「家事」と書き、それぞれにどのくらい時間を使っているかを、点と点を線にしながら描くというもの。
これを見れば今のバランスが一目瞭然だ。
みんなそれぞれキャパの広さがあって、その広さの中でやりたいことや欲しいもの、大切なものを自分なりに配分してこなせばいいのかも…。
そしてキリコが、家の購入や夫婦の仕事について悩んでいることを打ち明けると、吉田はこうアドバイスしてくれた。
吉田 「私だったら10年後、どうなっていたいのか考えるかも。遠い未来を考えると、今、どんな動きをしていると良いのか、見えてくるかもしれませんよ。」
打ち合わせが終わり、誰もいない静かな我が家で大の字に寝転がって、10年後の我が家について思いを巡らせていたキリコ。
ピロロロンッ――。
スマホを開くと、奏太と一緒に岐阜の義実家を訪れている満から、義実家近くにあるという新築戸建の写真が送られてきて…。
side満:これは、自分がやりたかった仕事なのだろうか。それとも…
スタイリスト派遣事務所『フリープラン』のマネージャーとして奔走している満。
ある日、社長・篠崎から呼び出され、衣類高級クリーニング専門店『ララウ』とともに立ち上げる新規事業を任された。
内容は、洋服の「お直し業務」。
服飾専門学校を卒業し、好きな服の仕事を夢見ていた満だが、今後はララウのオフィスに置かれたデスクで、毎日お直し依頼の受付をするらしい。
待っていたのは、残業や休日出勤が続く毎日。
全然遊んでやれない奏太には「パパきらい!」と言われてしまい、奏太とキリコが高熱で寝込んでしまった日も、休日出勤を余儀なくされた。
好きな仕事からは程遠くなり、家族との時間を持つこともできない…。
そんな満のもとに、地元の友人タカヒロからメッセが入った。
1ヶ月前の12月、両親が経営するラーメン屋『おぼろさん』を引退した夜。
地元の不動産王である江原と、ラッパーのタカヒロと3人で飲みに行った時、「仕事を探してこっちで家を買えばいい」と言われた。
江原からは、すかさず実家近くの「すんげぇいい新築戸建て」まで営業されそうになった。
そのタカヒロの友人だというK.Dこと土井和夫から、本当に求人案件が送られてきたのだ。
名古屋のフォトスタジオ『ファミーユウルーズ』での、スタイリストの募集。
仕事内容はかなり魅力的で…。
転職すると決めたわけではないけれど、仕事内容には惹かれている。
かといって、やっぱり東京で勝負していきたい気持ちもある…。
思い切ってキリコに打ち明けると、返ってきたのは意外な言葉だった。
キリコ 「とりあえずさ、エージェントに話だけでも聞いてみたら?私も知ってるから。パパがずーっと服が好きなこと」
キリコが川口で家を探していることは、満が一番良く知っている。
名古屋での仕事のことを応援してくれるなんて思っていなかった。
キリコの気持ちが素直に嬉しい満は、土井に電話を掛けてみた。
すると、そこからトントン拍子に話が進んで…。
この案件の募集締切は2週間後で、あまり時間がないのだそうだ。
土井から、まずは一度そのフォトスタジオを見に行ってみることを提案された満は、次の土曜日に行くことを決めた。
その日、キリコは『ヨリミチビヨリ』の吉田との打ち合わせが入っている。
満は奏太を連れて、早朝から一足先に実家のある岐阜へ帰省した。
子どもの頃によく遊んだ公園で奏太を遊ばせていると、不動産王・江原が末の娘と砂場で団子を作っていた。
土井から仕事を紹介されていることを江原に話すと、『桜葉幼稚園』のプレに奏太を連れて行くことをアドバイスされた。
『桜葉幼稚園』は、かつて満も通った幼稚園。
卒園生の家族は、優先的に入園できるのだと言う。
その時、江原が「あれ、あれだよ」と何かを指さした。
前に冗談めかしに話していた「実家近くの、すんげぇいい新築戸建」だ。
シンプルな外観に、車三台分ほどの駐車スペース、そして広い庭がある白い家。
それはまさに、キリコと話していた「理想の家」そのもので…。
価格も、川口で見ていた家よりずっと手が届きやすい。
この家の写真を何枚か撮った満は、桜葉幼稚園のプレのことと、この家の価格を添えて、キリコにメッセを送った。
それぞれの仕事と、岐阜の「白い新築戸建」。ここから、2人の運命が動き始める…
満からのメッセで、岐阜の新築戸建の写真を受け取ったキリコ。
「内見できるってよ。どうする?あと近くの桜葉幼稚園のプレにも参加できるって。」
家の内見をして、幼稚園のプレにも行ってみて、全部の可能性を見てから考えればいい…。
そう考えたキリコは、満たちを追いかけて新幹線に乗った。
名古屋で降りると、奏太は義実家で昼寝をしているということで、満とキリコ2人だけでフォトスタジオを見に行くことになった。
「幸せな家族」という意味だというフォトスタジオ『ファミーユウルーズ』。
雑貨屋やカフェを併設していて、南フランスの田舎を思わせる建物たちに心が躍る。
併設のカフェに入り、久しぶりに2人きりの時間を過ごす満とキリコ。
「せっかくの時間だから、話したいことを話しておこう!」と決めたキリコは、吉田から教わったレーダーグラフをお互いに作ってみようと提案してみた。
キリコ 「パパはやっぱり仕事の時間が多すぎるんだね」
満 「なんかやっぱりもっと家族で楽しむ時間がほしいなー」
キリコ 「もうお互いの『夫』『妻』の割合が少なすぎて悲しいわ…」
満 「他の夫婦もこんなもんな気はするけど…たまにはゆっくりしたいかもね」
キリコ 「10年後…このグラフがバランスよくなるには、どうしたらいいんだろう」
それから、「どうなりたいか」のお互いの理想を話し始めた満とキリコ。
庭のある理想の戸建て。満のやりたい仕事。
もし本当にこの白い新築戸建を買ったとして、満がこのフォトスタジオに転職したとして…
キリコは、奏太が幼稚園に入園したら「子ども」の時間が減るから、その分を「仕事」にまわすことができる。
奏太が病気になった時も、義実家に協力をお願いすることができるし…。
2人の理想を書き出すと、岐阜に家を買うことがベストなのではないか。
そんな想いが2人の中に芽生え始めた。
キリコと満が描く未来。その時、奏太は…
翌日、新築戸建の内見に行くことにしたキリコと満。
あまりにも理想的な家に、キリコは思わず「…わぁ」と声を上げる。
2階のベランダから電車が見えることに大喜びした奏太は、「ぼくこのおうちがいい!買って!」と大はしゃぎ。
そこで、キリコと奏太は岐阜に残り、火曜日にある桜庭幼稚園のプレにも参加してみることにしたのだが…。
火曜日。プレに参加してみると、奏太は知らない場所、知らない人たちの中で表情を曇らせる。
「お外で遊びたい」の一点張りで、みんなとの活動には全く参加しようとせず、焦るキリコに叱られてとうとう泣き出してしまった。
キリコも、知らない人ばかりの環境の中で久々のアウェイ感を味わうことに…。
義実家への帰り道、あの「電車の見えるおうち」を買ったら、この幼稚園に行くことになるのだと奏太に話すキリコ。
奏太は「やーだー!」と声を上げる。
…やっぱり、理想の家を買うのは難しい。
あの家は理想の家だったけど、仕事も家族もすべてが100点なんてムリなのかな…。
川口に戻った3人。そして…
一足先に東京に戻っていた満は、転職対策の本を買い、面接時に必要だと言われた「自作の服」の制作準備を始めた。
久々に作るなら…今作るなら…奏太の服がいい。
こんなにワクワクする気持ちは久しぶりだ。
その時、同僚のケンゾーからランチに誘われ、一緒にいたアシスタントたちから思いがけない言葉を聞かされた。
「俺たち、満さんをマネージャーに戻してほしいって社長に話そうと思ってるんです」
…帰りの電車の中、転職本を読もうとする手が止まる。
転職を考えていることを知ったら、みんながっかりするかもしれない。
でも…。
キリコと奏太はその日、願書を出している『川口つばさ幼稚園』の制服サイズ合わせに行っていた。
サイズ合わせしても、本当に着ることになるかはまだハッキリしてないのだけど…。
それでも気心の知れたママ友たちと、いつものメンバーで過ごす時間は居心地が良い。
奏太もいつもの友だちと楽しそうに遊んでいる。
その夜、キリコは満に正直な気持ちを打ち明けた。
自分たち大人は、あの戸建てがいいとか、やりたい仕事を楽しみたいとか思いを巡らせているけれど、奏太にとってこの引越はどうなのだろう。
環境が大きく変わって、つらいだけなのではないか?
そこで満が、思いがけない提案をする。
満 「プレも含めて、あの辺の環境に慣れる時間が必要な気がする。少し俺の実家にいてみるのはどう?」
満の提案を「正しいこと」だと思いつつ、モヤモヤした気持ちのまま次の朝を迎えたキリコのもとに、キリコの姉・洋子から電話がかかってきた。
父の定年退職のお祝いをするので、実家に泊まりに来ないかという誘いだった。
実家に泊まりか。
きっと今夜も夫と話し合いになる。
まだ頭の中、ぐちゃぐちゃでまとまってないし、一晩、夫と離れて考えるのもいいかもしれないな。
キリコは満に、奏太を連れて栃木の実家に泊まると連絡する。
しかし、その退職祝いの席で、キリコの母が鹿児島の実家に帰ってしまった理由を知ることになるとは…。
▶︎▶︎ 次回、21話は、4/24(火)20時公開予定!
第1話からじっくり読みたい人はこちら!
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