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公開 2018年06月07日  

離乳食を始める時期は、アレルギーに関係あるの?

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小児科専門医である森戸やすみ先生の著作『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』から、子育て中の気になる疑問の解説をご紹介。
"医学的に根拠のある、大事なことをおさえた上で、育児をもっと楽しくしたい。"
診察でたくさんのお母さんの悩みを聴いてきた森戸先生だからこその、思いの詰まった一冊です。


小児科専門医、森戸やすみ先生をご存じでしょうか。

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インターネットから多くの情報が得られる現代。

育児法にも様々な意見がある中、「医学的に正しいこと」をTwitterなどを通して、広く発信されています。

今回は「離乳食」の開始時期について、専門的なお話をご紹介いたします。





離乳食の開始は、遅い方がいい?

離乳食の開始を遅らせると、子どもの健康にいいし、アレルギーを予防できるという説が広まっています。

これは本当でしょうか?

赤ちゃんにとって母乳やミルクは初めのうちは完全栄養食品であり、それだけ飲んでいれば栄養は足りています。

でも生後5~6か月になると、カルシウム、鉄、ビタミンなどの栄養成分が必要量を満たさなくなってきます。

そのため日本では1995年に厚生労働省により改定された「離乳の基本」というガイドラインによって、生後5か月頃に離乳食をスタートするのが適当であるとされています。

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また口に入ったものを舌で出す「押し出し反射」が消失するのも5か月頃なので、赤ちゃんがスプーンを嫌がらなくなる時期と一致するのですね。

指針には、きちんとした根拠があるというわけです。

ちなみに、アレルギーを起こしやすいと考えられるハイリスクの赤ちゃんに対し、
1)完全母乳栄養にする、
2)離乳食の開始を遅らせる、
3)アレルギー性の高い食物(卵・ピーナッ ツなど)を除去するなどしても、

1~3を組み合わせて試しても、アレルギーの発症を抑制できないことがわかってきたそうです(※1)。

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また別の研究では、離乳食の開始時期を遅らせすぎると、むしろアレルギーを発症しやすくなるという報告もあります。

アレルゲンが腸を通るときに、消化管を介しての耐性誘導効果があり、アレルギーの発症予防になるという可能性もありえるようです(※2)。

ということは、離乳食を遅らせるデメリットはあっても、メリットは何もないですね。

そしてアレルギーの原因物質は、口から入ってくるとは限りません。

母乳やミルク、離乳食として口から入ってくる以外に、アトピー性皮膚炎などによって肌を守るバリア層がうまく機能していない場合は、肌細胞のすき間から入ってくることもあります。

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そもそも赤ちゃんに湿疹が出ているときには、もともとの原因が食物でない場合でも、肌の反応が過敏になっているため、 何かを食べたときにかゆみが増したり、湿疹が悪化したりするケースもあります(※3)。

ですから食物アレルギーを疑う場合は、 お母さんだけで判断して赤ちゃんに除去食を与えるのではなく、必ずアレルギー専門の小児科医に診てもらいましょう。

急成長していく赤ちゃんたちには、栄養バランスのとれた食事が必要です。

一部の専門家が説く「母乳やミルク以外の物は、アレルギーの原因になるので2歳半までは与えない」、「母乳は動物性だから、野菜や米は与えず、肉や魚などのタンパク質だけを与えよう」などという極端な育児法に惑わされないようにしましょう。

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離乳食の開始を遅らせるのは、むしろ赤ちゃんの体によくない!

【参考文献】
※1 成田雅美『チャイルドヘルス』vol.14. no8 2011 p1457-1461
※2 栗原和幸『食べて治す食物アレルギー 特異的経口耐性誘導(SOTI)』診断と治療社2010
※3 海老澤元宏『厚生労働科学研究班による食物アレルギーの診療の手引き 2008』2008
  成田雅美『小児科臨床ピクシス7』中山書店 p86-87


いかがでしたか?

本書では、ご紹介しきれなかったさまざまな育児の疑問に、森戸先生が答えています。

是非ご覧ください!


(編集:コノビー編集部 瀧波和賀)





※ この記事は2024年10月26日に再公開された記事です。

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