私は来た道を早足で戻り、公園の手前の角を曲がった。
そして、唯たちがすっかり見えなくなったあたりで立ち止まり、早口で中村さんに話しかける。
「すごく仲がいいんです、あの子たち。小学生の頃からいつも一緒で。中学生になって、クラスは別々になっちゃったんですけど、でも……」
「唯ちゃん、すごく、楽しそうでしたね」
焦って言葉を並べる私に、いつもと変わらない穏やかな笑顔で中村さんはうなずく。
あれ、もしかして、見えてない?私は「そうでしょう」と答えながら中村さんの表情をうかがい、また歩き始める。
公開 2018年08月31日
中間テスト前、わが家の朝食に平和がもどってきた。/ 娘のトースト 4話(2ページ目)
15,432 Viewある日をさかいに、またトーストを焼いてくれるようになった唯。部活の大変さをアピールしながらも、楽しそうな様子に、いつもの朝食が戻ってきて少し安心していた庸子だったが、あるものを目撃することで、整理仕掛けていた気持ちが揺らぐことになる…。
※ この記事は2024年09月29日に再公開された記事です。
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連載「娘のトースト」
#4
狩野ワカ
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