500万PVを越える大人気連載となった"本当の頑張らない育児"。
「まるで、自分のことかと思った」「夫と話すきっかけになった」などたくさんのコメントが集まった一方で、「実際に夫婦で話すのは難しい」「そんな風にできたらいいけど…」という声も多く届いていました。
そこで、連載の書籍化に合わせ、"自分の"子育てやパートナーシップについて考えるキッカケをづくりのイベントを、クラウドファウンディングの支援をもとに開催。
家族はチーム。やまもとりえさんが語る、家族のカタチとは?
14,350 View8/4(土)に開催した、本当の頑張らない育児「家族はチーム」トークショーのイベントレポートをお届けします!
やまもとりえさんと林田香織さんのトークショーを開催
8月4日に開催したイベントでは、「本当の頑張らない育児」著者のやまもとりえさんと、wonderLife LLP代表で夫婦コミュニケーションの専門家である林田香織さんに、「家族はチーム」をテーマに、チームになるとはどういうことなのか、どうすればチームになれるのかをお話いただきました。
頑張らない育児って、どうすればできる?
トークショーをはじめる前に、やまもとさんと林田さんも含めて、参加者全員が、「わたしの子育てに対する気持ち」をふせんに書き出してみました。
いくつかのグループを組み、そのふせんをもとに、それぞれの想いを話していきましたが、その中で聞かれたのは「具体的になにをすればいいかわからない」「頑張らないと罪悪感を感じてしまう」「頑張っていないつもりでも無意識に頑張りがち」といった声。
私にも小さい子どもが2人いますが、頑張らずに育児をしたいと思う反面、どう手を抜いていいのかわからない気持ちがありました。参加者のみなさんも同じように思っているんだと知って、少しホッとします。
やまもとさんと林田さんにとっての「本当の頑張らない育児」ってどんな育児だろう。
ときおり赤ちゃんの声が聞こえるにぎやかな雰囲気の中、トークショーはスタートしました。
理解をしめせば、相手もわかろうとしてくれる
トークショーは、やまもとさんから林田さんへの質問、林田さんからやまもとさんへの質問、そして事前に参加されるみなさんからいただいたお二人への質問をベースに進んでいきます。
やまもとさん(以下:やまもと):夫婦・家族のプロフェッショナルである林田さんにも以前、「夫婦の暗黒時代」があったと聞いて、びっくりしました。そこからどうやってチームになっていたんでしょうか。
林田さん(以下:林田):暗黒時代の背景をちょっと説明しますね。
長男を産んだ2000年当時、福岡の久留米市にある社宅に住んでいました。周りは専業主婦ばかりで、男は仕事、女は家事育児という考えの人が多かったんです。
私たち夫婦も、夫の転勤が決まり、私が出産を機に仕事を辞めたこともあり、自然と夫は仕事、妻(私)は育児、と役割が分かれるようになってしまって。
でも専業主婦だとしても、子育てを24時間やるのはすごく大変じゃないですか。それなのに夫は、「仕事で疲れてるから」と家事育児をやらないし、やらないから大変さを訴えてもわかってもらえない。そんな状態が10年ほど続いたんです。
やまもと:10年、長いですね。
林田:当時は私ばかりが大変だと思っていて、夫のことをうらやましくも感じていました。お皿を割り、家出もし、相当バトルしましたよ(笑)。
でも私が社会復帰をして、夫も仕事で大変なんだなと思えるようになって。
相手に理解を示した上で、どうしたいかを伝えるようにコミュニケーションの仕方を変えてみたら、夫も夫婦や家族のことに意見を出してくれるようになったんです。
そのあたりから関係性が変わり始めました。
やまもと:わかります。こうして欲しいと言うより、「わかるよ。あなたも大変よね。」と理解を示すほうが、夫もこちらの大変さをわかろうとしてくれますよね。
「あなたの自由にしていいよ」と言ったら、私に自由をくれることもあって。まずは相手にあげなきゃいけないんだなって。
林田:こちらが先に我慢しなきゃいけないのはちょっとシャクだとは思うんですけど、夫側も、どう切り出していいのかわからないと思うんです。
こちらから理解を示すことで、スムーズに意見を出せるということも結構多いんじゃないかな。
相手が大切にしているものを、大切にする
林田:結婚して子どもが生まれると、夫婦の会話って業務連絡が多くなりますよね。
スケジュール調整、報告、注文の3点セットになりがちなんですけど、うまくいってる夫婦ほど雑談をよくしているという調査結果が、実はあるんです。
やまもとさんご夫婦は普段、どんな会話をされていますか。
やまもと:LINEでアルバムをつくって、子どもの写真を撮ったら載せているんですけど、そのときの様子を話しながら、こんなことにはまっているとか、こういうことをされたら嫌みたいとか、子どものことを共有することが多いです。
あと今、gleeにはまっていて。私の見るペースが早すぎて、夫が話に追いつけなくなったので、毎回あらすじを説明しています。ちょっと前はおっさんずラブにはまっていて、その時はおっさんずラブの話ばっかりしていましたね(笑)。
でもそれが、いい息抜きになっています。
※glee…アメリカのテレビドラマシリーズ。オハイオ州の高校にある合唱部、グリークラブが舞台のミュージックコメディ。
※おっさんずラブ…2018年4月21日〜6月2日までテレビ朝日系にて放送されたテレビドラマ。同性から告白された主人公のピュアな恋愛模様を描く。
林田:機嫌よくいるための息抜きは大事ですよね。
やまもと:いつもなにかにハマっているので、マシンガンのように夫に話しています。
林田:パパはどう息抜きしてるんですか。
やまもと:息抜きなのかはわからないですけど、ラーメン屋さんの写真をInstagramにあげています。メモ帳にラーメン屋さんの細かい表をつくって、麺はなんとかのごとく、星3つ!みたいな(笑)たまに見せてくれます。
林田:見せてもらったとき、やまもとさんはどうするんですか?
やまもと:「わぁ素敵!こんなにラーメンのことを考えている人はいないね」って(笑)。相手の好きなことをお互い否定しないことは大切だと思っています。
林田:それ大事ですね。ちょっと一瞥して「ふーん」といわれるだけだと萎えますよね。
やまもと:興味を持ってもらえないと寂しいですね。林田さんはどうですか?
林田:うちの夫はカフェ好きで、土日になるとカフェにこもるんです。結婚した当初はよかったんですが、子どもが産まれてからもカフェに行くので、カフェ禁止令を出したんですね。
そうしたら夫が精神バランスを崩してしまった。それで譲歩して、週末に2時間ずつお互いに1人時間を持つようにして、夫にはカフェに行ってもらうようにしました。
そんなの必要ないと私が思うことも、相手には大切なことなんだなって、気づかされた出来事でした。やまもとさんご夫婦にもそういうことはありますか?
やまもと:うちの夫は年に2回、友達と一日中遊び倒す日をつくっていて。
必要ないというより「なんで当たり前に遊ぶんだろう、わたしは断り続けているのに。」という思いは正直あります。子どもを置いて出かけて楽しいのかな、罪悪感ないのかなと感じてもいました。
でも、わたしが我慢してるんだからあなたも我慢してと言うんじゃなく、わたしも遊びに行かせてと言えたらいいですよね。
子育ては楽しいけど大変。大変だけど楽しい
林田さんからやまもとさんへは、「本当の頑張らない育児」の物語に絡めた質問がありました。
林田:本当の頑張らない育児の最終話、娘ちゃんが飲み物をこぼしてしまう場面で、主人公が「こういうハプニングも笑えるになったんだなー」って涙ぐみながら言うシーンがあるじゃないですか。
育児のハプニングを笑いにするってけっこう難しいなと思うので、そうなれたのはすごいなと思いました。
私は牛乳をこぼされると「はぁ〜なんでこぼすかな〜」ってなっちゃうことが多くて。
やまもと:笑えるかどうかは、心に余裕があるかどうかによるなあと思っています。
私の場合、その余裕をつくってくれるのが夫なので、なにかあったときは夫に感謝するようにしています。
あと、ブログにのネタになると思えば笑えますね。
林田:ブログのネタになるってのは大きいですね。
やまもと:本当におすすめしたいです。ブログなり日記なりに書いてネタに昇華すると、一気に笑いになります。
林田:そういえば私も、思春期の息子が、玄関のドアを破壊した事件があった時に、人力で玄関のドアは破壊できるんだって思って、写真を撮ってFacebookにあげたら200ぐらいいいねがつきました(笑)!
やまもと:(笑)。長男のイヤイヤ期が激しかったので、反抗期どうなるんだろう…と思春期がくるのが怖かったんですけど、ネタにしてがんばろうと思えました!
林田:全部ネタにして、お母さんのお仕事の糧にしてください。
やまもと:ネタにしてお金に変えて、自分で塾代を稼いでもらいます(笑)。
やまもと:林田さんは心に余裕をつくるために工夫されていることありますか?
林田:うちでは徹底的に家事を省略しました。
三人兄弟なので、食べてる途中から遊びだしちゃったりして、ちゃんと食べてくれなくて、そうすると私もイライラしてしまって、ごはんの時間が全然楽しくなくなってしまったんです。
なので、夫が仕事で早く帰って来られない日は、レジャーシートを敷いて紙皿でご飯を食べる「おうちピクニック」をしていました。
片付けはゴミ捨てと、シートをシャワーで流すだけ。お皿を洗わないだけで気持ちが楽になったので、家事をまるっと省略するのはよかったです。
やまもと:ピクニックいいですね!わたしもやっていいですか。
林田:もちろんです。100円ショップで可愛い紙皿ありますよね。おうちピクニックって普通のお皿使うよりインスタ映えしそう。
家族はチームってどういうことだろう
参加者からは、今回のイベントのテーマにもなっている「家族はチーム」という状態についての質問が。お二人はこう答えます。
やまもと:ハプニングが起こったとき、夫と自然に目があって、ニヤっと笑えたりするときはチームだなと思います。
子どもに関して、楽しいことも嬉しいことも大変なことも共有してるから、息子がはじめてなにかをしたとき、夫もすぐに「はじめてできたね!」と気づいてくれる。
まだチームというにはちょっと早い感じもしますが、求めてるときに求めている手伝いをしてくれたり、夫のことは同志のように感じています。
林田:共有できる相手がいて、言わなくてもアイコンタクトができるのはいいですね。うちはもう子どもが大きいので、大掃除など家のことをみんなでやるときに、家族全体がチームだなと感じます。
夫婦関係だけで言えば、やまもとさんのおっしゃる通りです。子育ての悩みが3人でバラバラなので、それを共有できるのはありがたいです。
林田:お子さんとの関わりは、その瞬間・その時期しかないから、それを夫婦どちらかしか知らなかったり、夫婦が笑顔で楽しめないのはもったいない。
夫婦だけじゃなく、おじいちゃんおばあちゃん、ファミリーサポートなどいろんな手を借りて、拡大家族的な楽しさを分かち合ってほしいなと思います。
いろんな人にお子さんを愛してもらったら、お子さんも幸せだし、みなさんも自然と笑顔になれるかなと思います。
やまもと:本の帯にも書いてるんですけど、子育ては大変だけど楽しいっていうのは本当のこと。
楽しいだけじゃなく大変な部分も、もちろんあります。でも大変なことがあるからこそ、そこを乗り越えるとすごく楽しいことがある。
InstagramやTwitter で、共感しあったり、褒めあったり、慰めあったりしながら、みんなで一緒に子育てできたらなと思っています。
子育てをもっと自由に
トークショーのおわりには、改めてキーワードや感想をふせんに書き出すワークが行われました。
はじめは「育児って大変そう」「ちゃんとできるか不安」といった声が挙がっていましたが、おわりには「子どもともチームになりたい」「雑談を大切にしよう」「相手にどうしたいか聞いてみよう」など前向きな感想が飛び交いました。
林田さんおすすめの「おうちピクニックをしたい」という意見も。
イベント全体を通して、やまもとさんと林田さんだけでなく、会場のみなさんの間にも、共に育児を頑張る同志のようなあたたかな空気があるのが印象的でした。
母親だから、父親だからという言葉にとらわれることなく、夫婦それぞれの得意を生かして、"わが家"の育児をつくっていく。そんな家庭の在り方が、これからの当たり前になっていけばいいなと感じる時間でした。
文:野口美晴 / 編集:三輪ひかり / 撮影:庄司賢吾
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