500万PVを越える大人気連載となった「本当の頑張らない育児」。
8月18日に、書籍出版記念イベントとして紀伊国屋新宿本店にて、著者のやまもとりえさんと、玉川大学教育学部・教授である 大豆生田啓友さんのトークイベントを開催しました。
ご自身の育児エピソードもお話いただきなかがら「本当の頑張らない育児」を読み解いていただいた贅沢な時間を、レポートにしてお届けします!
「子育ては甘くなかった」やまもとりえさんと大豆生田先生が振り返る『産後のリアル』
17,459 View8/18(土)に開催した、本当の頑張らない育児の書籍出版記念イベントのレポートを、前編・後編・番外編にわけてお届けします!
やまもとりえさん×大豆生田先生のトークショーを開催!
やまもと りえ
天パの長男、親方風な次男、なで肩の旦那さん(4歳年下)、動かないネコ(トンちゃん)と暮らす大阪在住の漫画家。
喜怒哀楽の育児の日々をつづったブログ「今日のヒヨくん」でトップブロガーに。
著書に『Aさんの場合。』『Aさんの恋路。』(ともに祥伝社)『今日のヒヨくん 新米ママと天パな息子のゆるかわ育児絵日記』(KADOKAWA)がある。
大豆生田 啓友
玉川大学教育学部・教授。
専門は乳幼児教育学、保育学、子育て支援。
著書に『子育てを元気にすることば』(エイデル研究所)、『マメ先生が伝える 幸せ子育てのコツ』(赤ちゃんとママ社)など多数。NHK「すくすく子育て」に専門家として出演し、あたたかくも親にとって気づきのあるコメントが人気。2男1女の父。
みんな大丈夫じゃない
大豆生田先生(以下:大豆生田):僕、今日授業をしてから来たんですけど、うちの学生に「やまもとりえさんとお会いするんだ」と言ったら、「えー、すごーい!」って言われて、ちょっと鼻高々でした(笑)。
やまもとさん(以下:やまもと):え、ありがとうございます。
大豆生田:「本当の頑張らない育児」も読ませてもらいましたが、言語化しずらいことをよくここまで描かれましたよね。
電車のなかで読みながらポストイット貼っていったら、ほら、こんなにたくさん貼れちゃって。
普段なかなかこういうイベントはお受けしないんだけど、今回もうこれは是非、やまもとさんにお会いしたいと思ってきました。
やまもと:こちらこそ大豆生田先生にお会いできるなんて。本当にありがとうございます。
大豆生田:この物語は、主人公の“私”が妊娠中に子育てをしている友人と会うところからお話がスタートしますよね。
やまもと:そうですね、はい。
大豆生田:その中で“私”が、「仕事もちゃんとやってきたし、夫婦仲もいいし、うちはそんな大変なことにならないと思う。たかが子育てでしょう?」みたいに考えるところから事が展開するのが、まず面白いなあと。
これはやまもとさん自身の体験なんですか?
やまもと:そうですね。私もだし、多分周りもそうだろうなって思いながら書きました。
私の母親が結構ズボラなんですけど、そんな母ですら子育て出来てきたんだから、私にも出来るでしょうーみたいに思ってましたし、連載中も「子育てなんて、みんなやってきたことなんだから出来るでしょ?」みたいな反応もありました。
でも、子育ての現実は甘くなくって。
私も主人公と同じように、あんなに眠れないなんて当時は思ってもみなかったなあ。
大豆生田:やまもとさんは、何が一番大変でした?最初、生まれて。
やまもと:私の場合、2日間陣痛が続いて長男が生まれたんですけど、やっと生まれたと思ったら、その日から次は眠れない日々が続いて。なにこれ、トライアスロン?みたいな(笑)。
次から次へとやってくる新しい困難に、寝不足のなかで戦うっていうのが、はあ、こんなに体力使うんだと思ってびっくりしました。
大豆生田:うんうん。今日もさ、赤ちゃん連れで来てくださっている方多いですよね。
よく「広場とか、こういうイベントに来れてる人は大丈夫だよね」って言われますけど、いやいや、大丈夫じゃないからって。
みんな大丈夫じゃない。心も体も、すーごくすり減ってるんです。
“大変さ”のなかに生じるギャップ
大豆生田:残念ながらね、ぼくは実感としてはその感覚を持つことはできないんですけど、本当にそう思います。あ、男性のみなさん、今日は援護してくださいね!頼みますよ(笑)。
やまもと:たしかにあんなにすり減った時期って、人生の中でなかったかもしれません。「自分だけのことじゃない」っていう事がまず、初めてで。
子どもの命を守らなきゃいけない上に、他にもやることが山のようにある。
あの、風船割っちゃいけないゲームあるじゃないですか。針付いてる電車が回ってくるまでに風船をどけなきゃいけないやつ。ずっとあれをやってるような気持ちでしたね。
やまもと:でも大変なのって別に、ママだけじゃないですよね。パパもみんな結構大変なんじゃないかなぁと思うんですが、大豆生田先生はどうでしたか?
大豆生田:大変な気持ちだし、頑張ってるつもりで…って、今なんで僕が白状してるのかわかりませんけど(笑)。
その“大変さ”のギャップが、ママとパパでは大きすぎるんだよね。多分、ママたちが体感している大変さに比べると全然大変じゃないと思います。
僕なんて妻から、「あんた、すくすく子育てとかで言ってることとやってること違うから」って言われちゃいましたよ。
やまもと:ええー、大豆生田先生がですか!
大豆生田:この物語では早い段階でご夫婦が折り合ってますけど、長い間冷たい戦争状態にいるご夫婦も結構多いんじゃないかなと思います。
やまもと:この話を書いて思うのは、早ければ早いほど、夫婦の溝が深くならないかもなあって。
大豆生田:そのとおり。長引くと、どんどん話さなくなってきますからね、お互いが。
やまもと:そうそうそう、そうなんですよ。
大豆生田:どんどん傷が深くなっていって、どんどん諦める。そうするとお互いに理解するきっかけもなくなってしまうんですよね。
だからこのお話は、すごくいいところでちゃんと折り合えてるなあと思いながら読みました。
変わらざるをえない妻と、変わらない夫
大豆生田:大変さのギャップは、それぞれの変化の様子でも描かれていますよね。
夫は出産前と同じように大学のメンバーとスキーに行くけど、主人公は飲み会を諦めるっていう。
やまもと:そうなんです。
大豆生田:で、「私は断ったのに」って主人公はもやもやするんだけど、男性側からすると、「えっなんでダメ?」と思う。
やまもと:そうそうそうそう。「君も行けばいいじゃない?」ってなるんですよね。
ここ、うちの夫婦のほぼ実体験に近いです(笑)。
大豆生田:あ、そうなんだ。
やまもと:スキーまではいかないけど、夫はゲームセンターに友だちと行くんですよね。
その間こっちは、子ども二人とどうにかやってるのに…と思って話をしたことがあるんですけど、そうしたら「え、じゃあ行けばいいよ」って。
でも私は、母親なのに子どもを置いて遊びにいくってダメなんじゃないかと思って、行けないんです。正直、世間の目も気になっちゃいますし。
刷り込まれている、母親像
大豆生田:それはどこかに、「子どもをちゃんと見るのは女性」っていうのがやまもとさんの中にあるんですかね?
やまもと:罪悪感というか、刷り込まれてるんだと思います。別にもういいじゃないって、思ってはいるんですけど。
大豆生田:うんうん。
やまもと:このお話の中でも、ママだって息抜きしたっていいし、パパと納得してるんだったら、お互いに息抜きしあっていいじゃないって言ってるんですけど、それを私が出来てないんですよねえ。
だからこの呪いって、すごい深いなあと思ってて。頭でわかってても出来ないんですよ。
大豆生田:もうこれからは、男性も女性も子育ての役割分業ではないんだって、教育としては受けてきた世代ですよね?
やまもと:受けてきた世代だとは思います。私と同世代かそれより若い世代とかはもう、パパも育児参加するみたいなのが当たり前と考えている世代かと。
うーん、私が九州出身なのもあるのかなあ。うちは母親がもう、「子どもをパパに任せるなんて」みたいな感じの人だったので。
大豆生田:なるほど。女性が子育て家事を中心にやるっていうモデルを見てきているんですね。
やまもと:そうです、そうです。
大豆生田:それが刷り込まれてると同時に、社会の眼差しの中にも、未だにまだそれがどこかにあることを感じることがあるのかもしれないですね。
文:三輪ひかり / 撮影:高坂美智子
後編・番外編はこちらから読めます。
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