「本当の頑張らない育児」書籍出版記念として開催された、著者のやまもとりえさんと、玉川大学教育学部・教授である大豆生田啓友さんのトークイベント。
子育て中の夫婦に、何が起こっているのか。これからの子育ては、どう変化していくのか。おふたりの話は、さらに展開していきます。
「イクメンの次はこれかも」大豆生田先生がやまもとりえさんと語る『夫婦のカタチ』
18,038 View8/18(土)に開催した、本当の頑張らない育児の書籍出版記念イベントのレポートを、前編・後編・番外編にわけてお届けします!
“言えない”女性たち
やまもとさん(以下:やまもと):この主人公と私、ちょっと似てるんですけど、スパッと「なんで私ばっかり」って言えばいいのに、もじもじもじもじして。
最後追い詰められてキレちゃうまで、その気持ちを言えないんですよね。
大豆生田先生(以下:大豆生田):多分、実際言えない方って多いんじゃないかしら?
なかなかこういう気持ちって、言葉にしにくいんじゃないかなと思うんです。だから溜めるしかない。
よくさ、女性が一気に過去の事を全部「あれもこれもイヤだった」って言い出すことあるじゃない。男性側からすると、よくそういう事ばっかり覚えてるよねって言いたくなる気持ちもなくはないんだけど、少なくともこのお話を読んでいくと、「そりゃあ言いたくもなるわ」って(笑)。
やまもと:あはははは。
大豆生田:あん時のあの事がどれほど腹たったか…きっとそんな気持ちなんじゃないかなと思うんです。
やまもと:仕事の大変さも分かっちゃうから、なかなか言えないんですよねえ。
それに我慢はお互いにしてるから、いちいち口うるさく言うのはなあって。ちょっとかっこつけちゃうっていうか。私がやっとけば、まあいいやって思っちゃう。
でもそうすると、怒ったきっかけで言わずにおいた過去のことも、ダン!って全部絞り出して言っちゃうみたいな。でもやっぱり、男の人からしたらその時言えばいいのにって思うんだろうな~。
大豆生田:はい。僕、何度も言いました。「その時言ってよ」って。
やまもと:やっぱりそうですよね(笑)。
「後輩くん」誕生秘話
大豆生田:僕、後輩くんすきなんですよ。彼の台詞ですごく印象に残っているところがあるんです。
会社の上司が「子育ては女が…」みたいなことを言った時に、パパは「いやいやそんなのは古い」って言うんだけど、後輩くんは言うんですよね、「それもアリなんじゃない?」って。
大豆生田:理想の夫婦像だとか、理想のパパ像みたいなのが社会的にできて、それが「イクメン」という言葉で語られるようになったと思うんです。
でも、やっぱりパパ達も困ってたところもあると思うんですよね。週末や家にいる時間は、こんなに頑張っていろいろやってみるんだけど、どうもママからはいい顔してもらえない、なんで?って。
世で言う“イクメン像”みたいのを目指してきたけれど、どっかそこにズレがありそうだ、と。
そこに後輩くんの「それぞれの家族の在り方でいいんじゃないの?」っていう考え方は、ちょっとグッときました。
やまもと:実は、後輩くんのキャラは最初、“イヤイヤ子育てを手伝ってる夫”っていう設定だったんです。
でも、編集担当の方に、育児に参加してる男の人の話とかも聞いてもらうと、パパの中にも頑張ってる人や、頑張りたいと思っているけどどうしていいかわからないっていう人がいっぱいいたんですよね。
実はパパたちも困ってた
やまもと:パパの立場って、すごく難しいと思うんです。「やるよ」って言ってもイラつかれて、やったらやったで、「何勝手なことしてんのよ」って言われて。
大豆生田:そうそうそう。
やまもと:「じゃあどうしたらいい?」って聞くと、指示待ちするなとか言われて。
大豆生田:そうそうそう!
やまもと:(笑)。「手伝うよ」とかも最近NGワードになってきてますもんね。やるのはあたり前でしょって。
そういう現代の子育てみたいなものもみて、後輩くんのキャラをガラッと変えたんです。そしたら、漫画の中で一番人気になっちゃって。
大豆生田:ああ、やっぱそうなんですね。いいとこ全部かっさらったものね、彼。
やまもと:あはははは、そうなんです。
大豆生田:今までは、イクメンである事っていうことを求められてきたけど、実はちょっと違うんじゃないかっていうことを、この後輩くんの言葉ですごく考えさせられました。
ポストイクメンつまり、イクメンではないパパ達の、新しい在り方みたいなことを。
子育てをもっと自由に
やまもと:ありがとうございます。
この後輩くんは、子どもを育てることが夢だったので、自主的に子育てをやっているんですけど、積極的にしてない人の事も別になんとも言わないんですよね。自分は自分、人は人、好きにすればぐらいの感じで。
大豆生田:一つの形に縛られなくてもよくて、もっと自由にいろんな夫婦や子育て、家族の形があっていいよねっていう事を、この本全体を通して伝えていらっしゃいますよね。
やまもと:そうなんです。もっと子育ては自由でいいよね、っていう事を言いたくて。
大豆生田:その想いは、前半からずっと出てきている「手抜き育児」の方法にも表れているなあと。
僕もあちこちのコメントでね、「もっと手抜いていいんですよ」って言ってきているんですけど、でも「きちっとやりたいのよ、私は」っていう人には、手抜き育児がいいんだっていうことでは解決しないものがあるんですよね。
やまもと:編集担当者と話をしていた時に、「子育てにもトレンドがあって、今は手抜きとかズボラとかっていうのが流行ってて、それをみんな雑誌とかネットとかでも推してくるけど、きっちりやりたい人も中にはいるはずだから、頑張らない事を、頑張るママさん達も増えてる気がする」って。
そっか、そういう人もいるのかって思ったんですけど、そういえば私も「休めば」って言われたけど、産んだ次の日から育児日記を我慢できずに書いちゃってたんですよね。「そんなの書いてないで、寝ればいいのに」って言われるけど、もう書きたくて書きたくて(笑)。
だから、やりたくてしょうがないことはもう、やめなくてもいいんじゃないかと。
頑張りたいところは頑張りつつ、手を抜けるところはごそっと抜いたりして、やっていったらいいんじゃないかなあ。それもまあ、また一つの形でしかないんでしょうけど。
大豆生田:うんうん、そこがすごくいいなと思って、「理想の夫婦像、理想のママ・パパ像」みたいなところから、「自分で自分の在り方を選ぶ」へ。
自分のやりやすいようなやり方で、ご夫婦のやりやすいようなやり方でっていうところに、僕はやっぱりすごく大事なメッセージを感じます。
やまもと りえ
天パの長男、親方風な次男、なで肩の旦那さん(4歳年下)、動かないネコ(トンちゃん)と暮らす大阪在住の漫画家。
喜怒哀楽の育児の日々をつづったブログ「今日のヒヨくん」でトップブロガーに。
著書に『Aさんの場合。』『Aさんの恋路。』(ともに祥伝社)『今日のヒヨくん 新米ママと天パな息子のゆるかわ育児絵日記』(KADOKAWA)がある。
大豆生田 啓友
玉川大学教育学部・教授。
専門は乳幼児教育学、保育学、子育て支援。
著書に『子育てを元気にすることば』(エイデル研究所)、『マメ先生が伝える 幸せ子育てのコツ』(赤ちゃんとママ社)など多数。NHK「すくすく子育て」に専門家として出演し、あたたかくも親にとって気づきのあるコメントが人気。2男1女の父。
文:三輪ひかり / 撮影:高坂美智子
前編・番外編はこちらから読めます。
4話・29ページの描きおろしを加えて書籍化!
1
追い詰められたママのイライラは、子どもに向かう。それを救ってくれたパパの言葉
とげとげ。
2
赤ちゃんの肌にいいの?悪いの?冬至の「ゆず湯」の秘密
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3
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