「本当の頑張らない育児」書籍出版記念として開催された、著者・やまもとりえさんと、玉川大学教育学部・教授である大豆生田啓友さんのトークイベント。
最後に会場からの質問に、やまもとさんと大豆生田先生がお答えしたのですが、その回答がとても素敵だったので、お届けできればと思います。
お友だちの「貸して」に「イヤ」と言えることも大事にしたい。
8,685 View8/18(土)に開催した、本当の頑張らない育児の書籍出版記念イベントのレポートを、前編・後編・番外編にわけてお届けします。今回は番外編として、会場に来られた皆さんからの「子育て相談」に、やまもとさんと大豆生田先生がお答えします!
質問①:
娘は結構控えめな性格なこともあり、お友だちとおもちゃの取り合いがあった時に取られてしまう事が多いのですが、最近、2歳になりイヤイヤ期だからか、癇癪を起こしてしまうことがあります。
その際、親としてその場を納めなくてはいけないという気持ちもあるので、娘に「使いたかったよね。でも他の子に貸してあげようね」と声をかけ、相手に貸してあげるようにしているのですが、何ヶ月も前におもちゃを貸してあげたことを「貸してあげた、どーぞしたよ」と話をするので、本人は傷ついているのかなと心配です。
大豆生田先生の回答:
取られちゃう側の子のママの気持ちってすごい切ないんですよね。切ないんだけど、その一方で、場をなんとかしなきゃいけないからという思いから、「いいよ」や「どうぞ」ってできることがまるでいいことかのように、子どもを促さなきゃいけないんじゃないかっていう葛藤があるんだと思います。
だけどね、子どもの側から考えてみると、いつも自分が持っているものを誰かから奪われちゃう人生って、辛くないですか?
だから、「貸して」っていうのに「イヤよ」って言うことも大事だっていうのを、もっと言いませんか、って思います。
子どもにも「イヤな時はヤダよって言ってもいいんだよ」っていうのは、時には言ってあげてもいいのかなって思いますし、「今日はヤダって言ったね。頑張ったんだね」、って伝える事もあっていいかなと思います。
それでもし、相手の親のことが気になったら、「ごめんなさいね、うちの子わがままだから」って一応、本当はそう思ってないけどね、くらいの感じで、ちょっと場だけ整えとくっていうのはいいかもしれない。
質問②:
仕事以外に、勉強をしたいなって思っていることがあるのですが、子どもを見てると、家族みんなが揃う時が一番楽しそうにしているので、これで私が抜けることが増えてしまうと、子ども悲しむのではないかと思い、一歩が踏み出せません。
でもあとで後悔するのは嫌だし、後悔してる背中を子どもにも見せたくないという思いもあり、迷っています。
アドバイスがあれば、是非お願いできないでしょうか。
やまもとりえさんの回答:
気持ちすっごく分かります。
家族団らんの時間を大切にしたいし、親がどっちかが抜けてしまうという状態を子どもに味わわせたくないと、私も思ってしまうので。
気持ちが分かるだけに、簡単に答えられないんですけど、一緒にいる長さは関係ないかなって思うようにできたらいいですよね。
私自身まだ思いきれてないんですけど、でも一緒に居られる時間にぎゅっと凝縮して、その時を大事にするしかないのかなあとは思います。
大豆生田先生の回答:
今やりたいことは、今やった方が良いって思います。
やまもとさんがおっしゃられたように、団らんの時間は短いけども質はあげられるかなって思うので、もしやりたいって思いが強いんであれば、そちらを選ぶことをおすすめするかなあと思いました。
ただそれは、ご自身の選択の問題でもあるので、今は子ども中心に考えたいということであれば、勉強は少し落ち着いてから、という選択だってアリですよね。
どちらにせよ、後悔しないのはどちらかと考えるしかないと思います。
質問③:
3歳4ヶ月の息子と、10ヶ月になる娘の二人の子育てをしています。最近、上のお兄ちゃんが、今まで大好きだったおばあちゃんや妹のことを「きらい」、「こっち来ないで」と言うようになりました。
そういう時に、感情的に怒っちゃう時があって、その日は夜に「怒っちゃったけど大好きだよ」と伝えたりしているんですけど、「いじわるしちゃったけど、僕のこと好き?」と聞いてきたり、ちょっと失敗したりすると「ごめんね」を連発するようになってしまって、怒りすぎてしまったのかなあと思っています。どのように対応すればよいでしょうか?
やまもとりえさんの回答:
これもすごく気持ち分かります。うちの長男も天使のように可愛かったのに、次男が生まれてからいきなり悪魔みたいに悪いことばっかりするようになったり、おばあちゃんとかおじいちゃんのことを急に「きらい」って言いだしたりしました。
なんでかなと思ったんですけど、注目を集めたいっていう気持ちや、愛されているかを確認したいという気持ちがあったのかなあと思っています。
まさに長男も、昼間はやんちゃして悪いことして、私が怒ると涙目になるけど謝んないんですけど、寝る前になっていきなり天井見ながら、「今日はいじわるしてごめんね」って言ってきたりして。そんな長男を見て「ああ、悪いことしてるのは分かってて、それでもやめられないっていうか、とまらない時期があるのかもしれない」と思いました。
うちの場合は、1年くらいで徐々になくなってきて、今ではおじいちゃんおばあちゃんのこともまた大好きってなって、弟も可愛がります。
「確かに愛されている」ということを感じているから、もう確かめなくて済むようになってきたのかもと思うのですが、それは、「好きだよ、好きだよ」って言ってもすぐには伝わらなくて、毎日の生活で「気にかけてるよ」、「好きだよ」ということを繰り返し伝えていくしかないのかなと、個人的な経験では思います。
やまもと りえ
天パの長男、親方風な次男、なで肩の旦那さん(4歳年下)、動かないネコ(トンちゃん)と暮らす大阪在住の漫画家。
喜怒哀楽の育児の日々をつづったブログ「今日のヒヨくん」でトップブロガーに。
著書に『Aさんの場合。』『Aさんの恋路。』(ともに祥伝社)『今日のヒヨくん 新米ママと天パな息子のゆるかわ育児絵日記』(KADOKAWA)がある。
大豆生田 啓友
玉川大学教育学部・教授。
専門は乳幼児教育学、保育学、子育て支援。
著書に『子育てを元気にすることば』(エイデル研究所)、『マメ先生が伝える 幸せ子育てのコツ』(赤ちゃんとママ社)など多数。NHK「すくすく子育て」に専門家として出演し、あたたかくも親にとって気づきのあるコメントが人気。2男1女の父。
文:三輪ひかり / 撮影:高坂美智子
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