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公開 2018年10月10日  

子育てな日常も、俯瞰してみてみたら。

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福岡でライターをされている、ぽこねんさんのnoteから、日々の育児に関する記事をご紹介。
ご本人に許可をいただき、一部再編集してご紹介いたします。

出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10161019012



また、こぼして...あー、またやったー...

忙しない毎日、目の前にあることをこなすので精一杯。

そんな時に、ふっと心が軽くなるぽこねんさんのエッセイをご紹介します。


子育てな日常も、俯瞰してみてみたら。の画像1




ばらばらにちぎられた長ネギの散乱するリビングで、ごろんとその横に寝転びながら、「ああこの図、天井から定点カメラで傍観していたらけっこうおもしろいだろうなあ」なんてことを思っていた。

昨日の夕方の話である。

熱心に長ネギをぺりぺりちぎって遊んでいたのはもちろん1歳の娘。

ネットスーパーで届けられた荷物の中から長ネギを発見し、「あ、これまだちゃんと研究したことなかった気がするわ」とばかりに、大切そうにネギを抱えて“持ち場”へ運ぶと、引きちぎって研究していらっしゃったのだ。

このままではネギ3本とも全部やられる……!と思い、「はーい、ごはんに使うから貸してね〜」と取り戻そうとするも、もちろん「うー!!!」と抗議の声。ならばしかたあるまいと、上の方、もうすでにちぎれかかっていた青い部分をそのままもいで、彼女にわたした。

フルサイズの長ネギ3本束からするといきなり小さくなったから怒るかな、と思ったが、「まあいいわよこれで手を打ちましょ」と、まんざらでもない表情で青ネギを抱え、スタスタとまた、台所からリビングへと戻ってゆく。


* * *


いろいろと家事をしているあいだに、娘は静かにネギの研究活動にいそしみ、リビングの床にはちぎられた青ネギが散乱していた。

それを見て、「あー。ちょっとー!」と苦笑しながら、こんなこともできるようになったのすごいじゃんとか、片付けたいへんだなあとか、おもちゃより野菜の研究好きだよなあやっぱ有機物っておもしろいのかなとか、いろんなことを思うけれど。

ここ数日、娘は鼻水がひどかったので「まあね、風邪にはネギを首に巻いとけとか言うし、ネギを切った瞬間のこの匂いが効くらしいよ〜。だからネギちぎった匂いのなかにいれば、風邪なおるんじゃないの」とか笑って言いながら、ああ疲れた休憩休憩、ともう何も気にせず、その横にごろりと横になる。

日中は家族で出かけていたので、運転に疲れた夫も、座る娘をはさんで、その隣にごろりと横になる。ネギ臭いリビングで。


* * *


冒頭の俯瞰した感じがふっ、と頭に浮かんだのはそんなときだ。

リビングのど真ん中に、細かくちぎられた青ネギ。おとなだけの暮らしではまずありえないようなその光景をさして気にもとめず、疲れ果ててそのネギ臭い中、ごろりと横になる夫婦。その間で、もくもくとネギをちぎりつづける娘。

いまの自分たちにとっては、もうほんとうにありふれたような日常のひとコマだけれど、全然関係ないところからこれを俯瞰して、たとえば天井からの定点カメラかなにかで傍観していたら、このようすってだいぶおもしろいよな、となんだか笑えてくる。

なんで、ネギ。なんで、その横で普通に寝てる。って。

まあこんなふうに考えられるのは夫もいて、休日で、心に余裕があるときだからだ。例えばわたしひとりだけで、ごはんの支度に追われているタイミングだったとしたら、“とりあえず集中してくれるならネギをちぎっていてもらおう”、とそこは目をつむっていたかもしれないが、「はああ、あとで片付け大変だなあ、リビングくさくなるなあ……」なんてちょっとしたイライラを抱えながら、料理をしていたんだろうな。

そんなふうに傍観した位置から、冷静に自分の性質をみつめてみたり。


* * *


最近は、0歳のときに比べると「子との生活」に慣れてきたぶん、さっきのように「育児中の日常のおかしさを俯瞰して(客観視して)笑える瞬間」が以前より増えてきたように思う。

その日の昼食でも、そんな瞬間があった。

ショッピングセンターのレストラン街で、具材的にとりわけしやすいだろうからと入店した、しゃぶしゃぶ食べ放題バイキング。

初めてのお店でシステムに慣れなかったこともあり、調理しながら食べさせながら自分たちも食べながら……を70分の時間制限ありでまわすのは、意外とハードワークだった。実際やりはじめて、初めて気づく。

野菜が生煮えで固すぎても食べないし、煮上がってすぐあげても熱すぎてやけどしちゃうし、娘がふだん食べ慣れている形状とは全然違うしで、気をつかうことが多い。

娘が爆発して泣き出すと時間制限内にとても収拾がつかなくなるので、娘のご機嫌を伺いながら、肉や野菜を煮込みながら、さらにちょっと離れたバイキングスペースに野菜などを補充に行きながら、その間のすきを見つけて、片手間で自分のごはんをかきこむ。気の休まる暇なんて一瞬もないのだ。

そんな「子連れランチあるある」に加え、時間制限が気になってさらに気が急いていて、いつもよりさらに自分のごはんは適当すぎるほど適当になっていた。

“やばいやばい、とりあえず娘の食欲だけは満たしておかなくちゃ。でも自分のごはんも食べなくちゃ。いや、っていうか野菜なくなるからとりにいかなくちゃ。あ、ごはんもとりにいかないと。あ、スプーン落とした、それもとりにいかないと”。

そんな感じで頭がぐるぐるとめまぐるしく動くなか、ふと、ポンッ!と自分が空中に浮かび、その光景を俯瞰して笑えてくることがある。

空中に浮かんで、焦る自分たちをゆうゆうと見下ろす、第3の自分とでもいおうか。「わーめっちゃ焦ってるやんこの夫婦」「こども自由やな(笑)」「えらいごくろうさんです」。なぜか似非関西弁だが、そんな感じで笑いながら、その光景を見ているのだ。


* * *


ばたばたと娘のごはんをあげながら「なんか、笑えてきちゃった」と夫にいうと「わかるわかる。なに焦ってんだよみたいなね」と夫。

私「最近、前より俯瞰できることが増えてきた気がする」
夫「おー、いいね」

そうはいっても当事者でいると、なかなか目の前の気持ちでいっぱいいっぱいになってしまうこともあるのだけれど。

ひとりきりで考えていると、どうしても自分の感情でうめつくされていっぱいいっぱいになってしまうできごとも。

なるべく、誰かといることで、笑ってゆけたらと、そんなことを思う。


(おわり)

P.S.散乱したネギは、娘に透明なビニール袋を渡し「この中にお片付けしてね!」と言ったら、自分で回収していました。おつかれさまでしたー。

子育てな日常も、俯瞰してみてみたら。の画像2


いかがでしたか。



そういえば何を急いでたんだっけ。

ちょっぴり、さっきまでと景色が変わって見える素敵なエッセイ。



ぽこねんさんのブログには他にも多くの素敵なテキストが掲載されています。

みなさまぜひご覧ください!



※一部再編集してご紹介しております
 編集:コノビー編集部 森山

※ この記事は2024年11月10日に再公開された記事です。

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