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公開 2018年11月02日  

お産に意思決定はつきもの。私が迫られた選択とは?<投稿コンテストNo.45>

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陣痛が始まってからの予定変更はつきものですが、当の本人はなかなか気持ちの整理がつかないもの。じゅえこさんによる、お産の臨場感あるレポートです。

出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10331000334

>【第一話】から読む


初めての出産は31歳の時。

逆子がしばらく直らなかったり切迫早産で入院したりしながらも、なんだかんだ出産予定日までたどり着いた朝。

待ちに待った陣痛到来。

徐々に強くなる痛みに耐え続け丸二日後、ようやく入院が決まりました。



「子宮口はだいぶ柔らかいけど、まだ3cmだから早くても夜、まぁ日付が変わるまでには産まれるでしょう。」

と言われたのが午前11時。

(え、、こんなに痛いのにまだそんなにかかるの?!でもゴールは見えた!)


それまでなかなか入院にならず、とりあえずその朝は出勤していった夫に連絡をすると、

「頑張れば早退して午後には行けるかも!」

と返信が来たけど、

「そんなに早く産まれないみたいだから無理しないでいいよ〜」

なんて余裕な返信をしていました。


しかしそれからお腹にモニターを付けて数分後、事態が急変。

助産師さんが先生を呼んだ様子で、なにやらザワザワし始める。

どうやら陣痛のピーク時に赤ちゃんが徐脈になっている事が判明したらしい。


今までずっと胎動も激しくて健診のたびに「すごく元気」と言われ続けてたので、まさかの事態。

その後他の先生にも状況を見てもらった結果、

先生「子宮口が8~9cm開いている状態なら、お腹を押したり吸引したりで経膣分娩でもなんとか取り出すことはできるけど、現時点でまだ最大でも5cmの状態。

このまま待つとさらに赤ちゃんの心拍が下がってかなり危険な状態になってしまうかもしれない。

帝王切開で早めに取り出した方が安心だけれど、もう少し頑張ってみますか?」


……。


(私の脳内)

逆子が直ってからは、よっぽどのことが起こらない限り下から産むもんだと思っていたけど、そのよっぽどの事が起こっている。


直前まで想像していたのは、

陣痛室で夫に体をさすってもらいながら母親学級で習った呼吸法を実践!

分娩室で手を握ってもらいながら全力で出産!

二人で感動!

汗だくで家族写真撮影!

カンガルーケア!

頭に描いていたイメージが実現できなくなる……。


そして、出産は何が起こるかわからないものだと多少の覚悟は持ち合わせていたものの、いきなり突きつけられた帝王切開に対して完全にビビってる心……。


少しの間、動揺したけれど、でも……。

もう少し頑張ってみる? って、赤ちゃんが危険な状態なのにただの自分の理想の為に、頑張ってみる?

んなわけない。

「赤ちゃんの安全を優先させてください!」


先生「では一刻も早い方がいいのですぐに手術準備にとりかかりますが、もしかしたら立会い希望の旦那さんの到着に間に合わないかもしれません。」



入院中は母親以外はガラス越しでしか赤ちゃんを見る事ができないので、退院の日まで抱っこさせてあげられなくなるけれど……いたしかたない。

元気に産まれた姿を見せられればそれで充分じゃないか!


そうと決まれば急展開。

助産師さんたち総出で、素晴らしい手際の良さで手術前の処置が終わり、ものの十数分後には移動用ベッドに乗り換え手術室に向かっていました。

「こんな展開は珍しいことではない!あかちゃんの為なんだ頑張るぞ!」

という気持ちとは裏腹に、陣痛の合間は不安で震えと涙が止まりませんでした。


「普通分娩で妊婦さんが痛みに耐えられず泣き事を言うとしっかりしなさい!」

などと助産師さんから喝を入れられる事もあるなんて聞いていたけど。

さすが緊急帝王切開、こっちの不安や緊張を取り除くためか周りの助産師さんや先生たち、外来の時は厳しめで苦手だった先生までもみんなが終始、めちゃくちゃ優しく丁寧に声かけ・対応をしてくれて、それにもありがたくて胸がいっぱいになっていました。


そして手術は無事終了。

なんとか産まれた我が子は首にへその緒が巻き付いていたらしく、それが徐脈につながった可能性もあるのかもしれないとの事でした。

さらにお腹の中で便をして濁った羊水を大量に飲み込んでいて、それが口から抜ききれずにしばらく呼吸が安定せず心配な状態でもあったらしいですが無事に産声を聞く事ができました。

産声が上がった瞬間、今までの不安や恐怖が一瞬で吹っ飛び一人で大号泣

(「うっ、産声可愛いーーー!!」)

と心の中で叫ぶ私、親バカがスタートした瞬間でした。


夫には簡潔に帝王切開になった旨を送ったままだったけどその後どうなったかなーと思っていましたが、手術決定後に病院側から夫の職場に直接電話を掛けて詳細を伝えてくれていた様で、

連絡を受けて全速力で病院に駆けつけた夫は私がお腹を縫ってもらっている間に、産まれた直後の娘に対面でき、へその緒カットや抱っこ・写真撮影などしっかり満喫出来ていました。


「帝王切開での出産はお産ではない」とか、「下から産むよりも愛情が湧きにくい」とか、心無い言葉をかけられたり、間違った情報を得て自分を責めてしまう産婦さんも多いと聞いたことがあります。

幸い私の周りにそんな事を言う人もいなければ、私自身も全くそんな事は思いません。


まずそれ以前に約10ヶ月間お腹で大切に守り育てた事に変わりはないし、陣痛を最後まで体験する事は出来なかったけれど、術後麻酔が切れた後の一晩痛み止めがなかなか効かず苦しんだ事、

その後も痛む傷をかばいながら抱っこや授乳をし続けた事、今も残ったままの傷跡、すべてが命がけで子供を産んだ誇れる証だと思っています。


私はこの二年後にも反復帝王切開で二人目の子を出産し、現在二人共元気にすくすく育っています。

可愛くて楽しい反面イライラして怒りすぎてしまう事もあるし、悩みは尽きないし理想通りの子育てはできていません。

でもそれは理想通りの出産ができなかったからではなく、出産も子育ても理想通りになんていかないものなんだと身をもって感じられているというだけの事。

あの時初めて産声を聞いた感動と、今、日々悪戦苦闘しながらも感じている小さな幸せ達への感謝の気持ちを忘れずに、これからも泣いたり笑ったりしながら親子で成長し続けて行きたいです。



ライター:じゅえこ


※ この記事は2024年12月16日に再公開された記事です。

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連載「第一回 記事投稿コンテスト 『出産』」 #45
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