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公開 2018年11月22日  

出産しないと分からなかったかもしれない、実母と義母の気持ち <投稿コンテストNo.104>

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とにかく余計な神経を使わせないで!というのが出産に挑む女性の本音ですが、親の愛情はそうも言っていられないようで…。これは、けいさんの体験記です。

出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10250003515

>【第一話】から読む


夫婦には、夫の母と妻の母、二人の母がいますよね。私の出産のときの、驚きの二人の母の様子をご紹介します。

予定日を過ぎてもちっとも出てくる気配のない赤ちゃん。予定日を過ぎて最初の検診で、これ以上は胎盤の機能が低下してくるので入院だねと先生に言われました。

諸々の説明を受け、準備しておいた入院グッズを持って病室に。初めての出産、初めての入院です。

カロリー制限から解放された私は、ちょうど病院食のおやつの時間とのことでケーキがふるまわれたことにウキウキしていました。

出産時は、夫は陣痛室まで立ち会い、分娩室は一人で挑む。これは夫の希望。

「お父さんって、部屋で待っていて、産声を聞いて、はっ! ってするものだと思う」なんて言っていました。

まあドラマでそういうシーン多いですよね。そんなもんかと了承しました。

実母とはウマが合わないので立ち会わなくていいよと伝え、義母は産院の方針で立ち会えないことになっていたので、頼りは夫と助産師さんと先生です。


「夜ごはんは何かな」

私は遠足にでも着たような気分でウキウキしていました。今日の夜から陣痛促進剤を点滴することになったので、夫へ同連絡すればいいかを相談していると、看護師さんが入ってきました。

「あの、吉田さん、お母様がお見えです」

「ええ!? 来なくていいって言ったのに!」

看護師さんの後ろには、申し訳なさそうな実母の姿が。来ても喧嘩するだけだから来ないでいいよ、と何度も言っていました。それでも来てしまうのが心配性の我が母です。

そもそも、立ち合いOKだとしても、前日は夫以外来てはいけないことになっていました。

「明日も来なくていいってば! 今日もほんとはダメなんだよ!?」

「だって、心配で~」

うだうだいう実母に帰ってもらい、改めて相談していると、また看護師さんが。

「あの、吉田さん、お母様が……」

「え、またですか!?」

看護師さんは心配そうな顔で続けました。

「それが、旦那さんのお母様の方が……」

「ええ!?」

今度は夫が私よりもびっくりしました。


病院の方針で、夫側の親族は、妊婦に余計な気遣いをさせないよう原則立ち合い禁止となっていました。

どうしても希望した場合のみOKとのことですが、実母も立ち会わないことだし、特に義母立ち合いの希望は出していませんでした。

「気を遣うからお帰り頂くようこちらから説明することもできますよ」

「無理して会わなくていいぞ、大丈夫だから」

私の顔色を窺う二人。あ~~お義母さん来ちゃったか~。ドライな人かと思ってたけどこういう時にはダメって言われても来ちゃうタイプなんだな~意外だわ~。

そんなことを考えましたが、かといって邪険に追いやるのも可哀想というもの。

「せっかく来て頂いたし、お顔見たいです」

「いいのか?」

「うん、追い返すわけにもいかないよ」

そうして部屋に来て頂いたら、夫が激高しました。

「来られないよって説明しただろ!」

「だって……」

「だってもなにも、気を遣ってやってくれよ!」

「心配だから来たのに、そういう言い方されたんじゃ、もう私は金輪際関わらない、孫の顔も見ない!」

売り言葉に買い言葉。

あ~あ~あ~夫~、おかーさーーーん。

お義母さん怒って出てっちゃったよ~どうすんのこれ……。孫に会わせないわけにもいかんでしょ……。私が取り持つの? 新生児抱えて? 陣痛が来る前に、頭を抱える羽目になってしまいました。

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その後、面会時間が過ぎて夫は一度帰宅しました。私は陣痛促進剤の点滴を始めましたが、うんともすんとも言わず、赤ちゃんは元気に胎動しています。

ベッドに横になってスマホをいじっていると、マイナス思考がぐるぐると回っていきました。

自分の母も夫の母も、どちらも私達が伝えたことをそのまま叶えてくれなかった。

これから子育てしていくにあたって、二人に預かってもらうこともあるかもしれない。その時、こちらの指示通りにやってくれなかったらどうしよう。0歳にハチミツを舐めさせるようなことをしちゃうかもしれない! 

ああ、何でもいいけど陣痛きてくれないかなあ……。

結局、その日の夜に点滴できる最大量の陣痛促進剤を点滴しても陣痛は起こらず、翌日に持ち越しとなりました。


次の日は朝から点滴を開始すると、今度はしっかりと陣痛が起きました。

促進剤を追加すると、階段を上るようにズドンと痛みが大きくなります。産休に入ってからマタニティヨガを毎日やっていたせいか、助産師さんも驚くほどの速さで進んでいきました。

立ち合いで、最初にやってきたのは、なんと実母でした。来なくていいよと言ったのに、やっぱり来てしまったのです。

何で来たのと怒る気力もない私に、母は何故かニコニコしながら小さい頃の私の写真を渡して来ました。

「今こんなの見せられても困る……」

「そっか……」

しょんぼりする実母。

ああもう、余計な気を遣わせないで、痛いんだから!

お産の進みは本当に早く、当初は夕方ごろ生まれるだろうと言われていましたが、午前11時前には子宮口がもう8cmまで開いていました。

実母は私の横でおろおろしていて、私は八つ当たりしまくっていました。夫は昨日の話では午後から来ることになっているので、まだ病院に付きません。

もう間に合わないかもしれない! 焦って連絡するも、猛烈ないきみが来て我慢できないと訴え、分娩室に移動するところでやっと登場しました。


「遅いよ!」

「長丁場になるって言ってたから、ラーメン食べてた……」

「早くって言ったじゃん!」

夫にも八つ当たりです。夫は申し訳なさそうな様子で、分娩台の私の頭の横にぬいぐるみを置きました。

「なにこれ」

「いたらなごむかと思って」

「ありがと……」

もっと早くに見たら和んだかもしれない……。

脂汗をかきながら、そんなことを考えました。夫はマゴマゴしているうちに分娩室から出る機会を失い、結局立ち会うことになってしまいました。

本当は立ち合いをして欲しかった私は、内心ラッキー! と思いました。



その後、猛烈な陣痛に合わせて何度もいきみましたが、赤ちゃんはなかなか出てきませんでした。

助産師さんが分娩台に上って、いきむのに合わせて、私の肋骨あたりに痣ができるほど強くお腹を押してくれたのですが、それでも出てこず。

分娩台に上って一時間が過ぎたくらいで、主治医の先生が来て、会陰切開、つづいて吸引をして、ようやくの誕生となりました。

入ってきた先生が私を見て「これ、全然チカラ入ってないよ。まだまだいける」と仰ったのがショックすぎて、やけくそになっていきみました(笑)。


赤ちゃんと会えた喜びで、実母と義母へのモヤモヤした気持ちは消え失せていました。

実母は私が八つ当たりするのはいつものことだと受け流してくれました。

義母と夫はぎくしゃくしたままで、義母は赤ちゃんにも会わないと意地を張っていましたが、私が何度もお誘いし、退院する前に抱っこしてもらうことができました。


その時生まれた息子は、今1歳4ヶ月です。とにかく可愛くて大切で、私たちの宝物です。

将来この子に何かあったら、何を差し置いてでも駆けつけてあげたいと思います。

そう思うと、あの時やってきた実母も義母も、来るなと言われても、行って助けになりたいという思いが勝ったのかな、と思うようになりました。

母の愛は偉大です。私もそんな母達のようになれますように。


ライター:吉田けい


※ この記事は2024年10月10日に再公開された記事です。

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連載「第一回 記事投稿コンテスト 『出産』」 #104
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