私には息子がひとりいます。
息子が生後10ヶ月の時、私の姉が女の子を出産しました。息子にとっては歳下のイトコです。
私と姉は大人になってからも大の仲良しで、自宅も徒歩5分のご近所さん。お互い高齢出産の第一子ということもあり、目に入れても痛くない可愛がりよう。
ゆくゆくは子供同士仲良く遊ばせて一緒にお出かけしたいなあ、なんてのん気に考えていましたが、うちの子はやはり男の子。順調にいたずら大好きなヤンチャ坊主への道のりを歩みつつありました。
イトコちゃんが生後2ヶ月の時、姉の家に遊びに行くことになりました。息子は1歳になったばかり。ようやく歩き始めたところでした。
立ち上がって視野が広がるにともなって、好奇心からの探索行動もレベルアップ!なんでも触って、手に持ってガンガンガン。
うーむ。イトコちゃんに顔合わせするのはちょっと注意しないと危ないぞ。
「あーくん、イトコちゃんだよ。」
すると、息子はニコニコ微笑んで、ハイローラックのイトコちゃんに近づいて、そうっと頭を撫でるのです。
えーっ!?ママやパパにはケラケラ笑いながらガンガン叩くくせに、赤ちゃんにはヨシヨシするのぉー?
その後も息子はイトコちゃんと遊ばせるたび、ミルクの入ったガラスの哺乳瓶を持って飲ませようとしたり、ブランコを優しく揺らしてあげたり。
教えたわけでもないのに、イトコちゃんには優しく接しているのです。
意外。あーくんって、こんな優しい男の子だったんだ!!
そして先日迎えたイトコちゃんの1歳のお誕生日会。イトコちゃんもつかまり立ちから一人歩きの練習中です。
息子が遊びにきたのが嬉しかったのか、「私も出来るわよ」と言わんばかりに、息子の真似をするイトコちゃん。同じ遊びをしようと息子の腕につかまり、立とうとしました。
グググ、ギュ〜
「あーくんのあーくんのあーくんの!」息子がつかまれた腕を指して何かを訴えます。
ズルズル、ギュ〜
「あーくんのズボン!あーくんのズボン!」
わかるわかる。赤ちゃんに指でつままれると案外痛いんだよね。しかも体重かけて立とうとしてるし、ズボンずれちゃったね。
「ははは、あーくん、ママの気持ちわかったかな。全力でつかまれると痛いんだよ(笑)」
息子は今にも泣きそうですが、イトコちゃんは手加減しません。何度も息子が振り払おうとも後追いし、つかまってヨイショと立とうとします。
ついに髪の毛を引っ張られ、小さな指がほっぺをギュッとつかみ……
その瞬間、息子がとった行動は
「ガ マ ン! ガ マ ン!」
バシバシ!と自分の頭を叩き、半泣きになりながら我慢しているのです。
えぇーっ!?今この子、我慢って言った?たしかに、予防接種の時とかに我慢我慢、と言い聞かせたことはあるけれど…。
そっか。イトコちゃんはあーくんより小さいから、叩いたりつきとばしたりしてはいけないと思ったんだね。けど、訴えてもママが助けに来てくれないから我慢したんだね。
イトコちゃんを叩くわけにはいかないから、怒りのやり場がなくて自分を叩いたんだね。ママ、笑って見てただけだった。ゴメンね、反省。
しかし、我慢という抽象的概念を理解していることもさることながら、まさか自分から感情をコントロールして自制するなんて!!
わわわ…うちの子天才かな??
私は息子を膝に座らせ、話しかけてみた。
「あーくん、イトコちゃんにつかまれて痛かったけど、我慢したんだね。」
「…イトコちゃんは、あーくんのことが嫌いでギューしたんじゃないよ。あーくんのことが好きで、一緒に遊びたいからギューしたんだよ。でも、まだ小さいからうまく出来ないんだよ。だから、痛かったけど許してね。」
まだ1歳10ヶ月の息子。うんわかったよ、なんて気の利いた返事はまだ言えない。わかってくれたかなあ?きっとわかってくれたよね。
それから数日、毎日保育園に通う息子に声をかけてみた。
「あーくん。毎日頑張ってて偉いね。…ママね、あーくんの頑張り、ちゃんとわかってるからね」
すると息子は、ニコッと笑って
「ア リ ガ ト!」
えぇーっ、今この子、ママにお礼言った?
しかもありがとうの使い方正しいし!
物をあげたわけじゃないのに、抽象的な会話のシチュエーションを理解してありがとうって言えたの?……わわわ、うちの子天才かな?
なんて(笑)。
私はずっと、優しい気持ちって、パパママがああしなさいこうしなさいと教えて初めて理解できるのかと思ってたけれど、思い違いだった。
それはきっと、自分がされて嬉しかったり、してあげたいと思ったり、赤ちゃんを見て可愛いと思ったり、心の中から自然に湧き出てくるものなんだ。
これからも、優しい気持ちを大切に、すくすく育ってね!
ライター:うめママ