まいどおおきに!さとえみです。
皆サマー、夏ですね!お盆ですね!
今回は、ベルギー人の夫と国際結婚した私が、お盆の時期に思い出すエピソードをご紹介します。
いや〜、驚いたんですよね…。義実家のあるベルギーでのお葬式…。
日本での実母のお葬式が記憶に残っていたこともあり、日本とベルギーの違いには、驚くことがたくさんありました。
あくまでも私が経験したお葬式の話ではあるのですが、日本ではもうスピード重視といいますか…。
悲しんでいる時間がないくらいの勢いで、お通夜から告別式(途中で火葬が入りました)の流れがどどーんと来ました。
でも、ベルギーで経験したお葬式はもっと余裕を持たせた日程。
働いている人が多いこともあり「みんなが集まれる」ということを優先してるのか、亡くなってから1週間以上あけての告別式だったのです。
告別式までの間、ご遺体は教会の地下に安置されるのですが、そこが天然の冷蔵庫というくらい冷えています。
また、ベルギーでは土葬が多いため、エンバーミングというご遺体を長期保存するための技術もあり、こうした条件からお葬式を急ぐ必要がないのかもしれません。
日本のお葬式はビシッと黒一色で参列するため、着物をレンタルしたり、クリーニングしておいた喪服をおろしたり。
そうした準備を短期間で行うのは、少々骨が折れるものでもあります。
一方、準備時間的には余裕があるベルギーのお葬式で、真っ青なサマードレスで現れたご婦人も!
これを見た私は目玉が飛び出る思いでしたが、周りの人たちはそれをとがめることもなかったので、それほど珍しいことではないのだと理解してさらにショックを受けました。
もちろん、全体的には黒やグレーのきっちりした服装の人が多いのですが、Tシャツに短パンとサンダル姿の男性もいたので…やはり服装に関しては、日本よりはゆるいのだと思います。
私が知る限り、ベルギーでは基本的に、冠婚葬祭の時に現金を包んで渡す習慣がありません。
出産祝いですら、当事者が作成した「欲しいものリスト」に書かれた“物”を渡す場合がほとんどですし、お葬式の際にも香典にあたるものは存在しません。
日本では、現金を包んだ香典を亡くなった方の霊前に供え、基本的にはご遺族に対して渡す形となりますが、ベルギーでは花や手紙、写真といった思い思いのプレゼントを故人が眠る棺に入れます。
香典がないので、もちろん香典返しもありません。
故人の顔をさわったり、泣きながらキスをしたりする人もいます。
「適当」という言葉は適当ではないかもしれませんが、ベルギーで土葬の後に開かれた食事会は、比較的カジュアルなビュッフェでした。
我が家のベルギー人夫のようなベジタリアンや、宗教上の理由で食べられないものがある人にとって優しいシステム。
また、食事会はレストランを借り切って行われますが、ビュッフェの内容はパンにハムやペーストを塗ったものやサラダなど、ごく簡単に用意できるものばかり。
喪主にあたる人にとっても優しいと思いました。
そうなんです。ベルギーには「お盆」がないんです。
キリストの復活をお祝いする日というものは別にありますが、一般の人に対して、日本のように「亡くなった人の霊をお迎えする」という習慣はありません。
ご先祖さまは帰ってこないので、送り返す必要もありません。
お墓参りをする日はあるのですが、亡くなった人が「戻ってくる」という概念はないのだと思います。
このあたりは、仏教徒が多い日本とキリスト教徒が多いベルギーの「死」に関する考え方の違いが、習慣の違いとなって現れているのだと思うのですが、ベルギーにはもうひとつ興味深い「死」の制度があります。
ベルギーのお葬式での服装や食事等の習慣を見ていると、「きちんとしたい人はきちんとして、ゆるっとしたい人はゆるっとできる」という選択肢が常に用意されているように見受けられます。
そしてベルギーには、そもそも「死に方を選ぶ権利」があります。
だから合法である安楽死を選択した場合は、このような形での生前葬をする人もいるのです。
ちなみに、末期がん患者の家族として、日本の緩和ケアで誠心誠意対応してくださる医療関係者の方々を見てきた私は、ベルギーの安楽死の制度に考えさせられることが多々あります。
これは「死」そのものの選択というよりも、「死ぬ際に苦痛を受けるかどうかを選択する権利」なのではないか。
安楽死という制度についてはさまざまな国で議論がされていますが、制度の有無だけにとらわれるのではなく、置かれた状況の中で、まずは自分の「どうしたいか」がやはり大事なのではないか…。
お盆のある日本で、ふとそんなことを考えてみたのでした。(ただ今一時帰国中!)
メメントモーリ!(ラテン語で「死を忘るなかれ」という意味です)
ほなまたね!