この夏、マキシ丈ワンピースというものに、出合ってしまった。
もうすでにお手元にある方は、ほんとうにわかっていらっしゃる。
私はとんだ無知だったし、考えなしのおバカさんだった。
だってこの夏まで、マキシ丈ワンピースを、知らずに生きてきたのだから。
もしまだお持ちでない方がいらっしゃったら、なるべく早くに、手に入れていただきたい。
後悔することは、ないだろう。
そもそも、「マキシ丈」というものに抵抗があったのだ。
さかのぼると、それは私の子ども時代にまで、話は及ぶ。
私の母が「マキシ丈」、当時で言うところのロングスカートを、好んでよく履いていたのだ。
友達のお母さんたちは、活動的なジーンズや、パンツスタイルが多かったのに対して、私の母は会社の事務服か、たいていロングスカートを履いていた。
どうもこれが、私の目にはあまり、格好よく映らなかったのだ。
私には、周囲のお母さんが活発そうに、若々しく映るのに対し、母の姿はなんだか、時代錯誤で、非現実的な服装に見えたのだ。
「うちのお母さんはサリバン先生みたいな服を着とるな」
と、子ども心に思ったのだ。
念のため言うけれど、別にサリバン先生を揶揄するつもりはない。
主に時代錯誤、という意味合いだ。
つまり、マキシ丈=母、だったのだ。
それを履いてしまったら最後、私もサリバン先生みたいなルックになるのでは、と常に敬遠していたのだ。もう長い間。
ところが、つい先日、ショッピングモールでふと手に取った、ノースリーブのマキシ丈ワンピースが、なんだか妙に手に馴染んだのだった。
生地の質感がよかったのだろうか、その日がうんと暑い日だったから、ノースリーブに惹かれたのだろうか、手に取ると、思わず欲しくなってしまった。
なにかに突き動かされた私は、試着することもなく、それをレジに持っていき、翌日にはそれを着て外に出ていた。
鏡に映った私は、ちっともサリバン先生でも、もちろん母でもなかった。
マキシ丈ワンピースを着て、1日過ごしたら、感動と感激の嵐だった。
私はなぜ、今日までこんなに簡便で優秀な衣類を、遠ざけて生きてきたのかと、激しく後悔した。
マキシ丈ワンピースが、こんなに子育て中にありがたいものだとは、知らなかった。
まず、子どもといると、中にいようが外にいようが、ほぼ、座る、立つ、しゃがむ、立つ、の永久運動だ。
外にいれば、靴に砂が入ったとか、バッタがいたよほら見て、とか、サラサラの砂があったよ、とか、まぁ、呼ばれ続けている。
立ったかと思えばまた呼ばれ、座ったかと思えばまた呼ばれるのだ。
そして、言わずもがな、屋中にいても然りであって、やれ、カードを一緒に並べてとか、やれ、パズルをやろうよ、とか、やれ、おしっこが漏れたとか、床のあたりの用事で、やっぱり呼ばれ続けている。
そのすべての瞬間に、パンツが下から見える心配も、背中まわりからお肌やパンツが見える心配も、しなくていいのである。
マキシ丈ワンピースなら。
子育て中のお母さんは、下のお子さんを片手に抱いていることも、たびたびあるから、下のお子さんを小脇に抱きつつ、上のお子さんの靴に入った砂の処置をしていたりする。
両手がふさがるので、もはやパンツの件に関しては、諦めないといけなかったりするのだ。
だったらマキシスカートでいいのでは?と思った人は、落ち着いて考えてみてほしい。
手持ちのスカートは、ほぼウエストがゴムではないだろうか?
小さいお子さんがいるのだから、着脱、動きやすさ、すべて加味したら、ウエストがゴムになるのは避けられない。
マキシ丈のスカートはその裾の長さから、子どもにつかまれるのは、もはや自明の事実なのだ。
子どもが裾を掴む、それすなわち、ゴムウエストのスカートが、ちょっとした拍子にずり下がる、ということを指している。
やっぱり、パンツ問題から逃げられないのだ。
それが、マキシ丈ワンピースならどうだろう。
四方八方から、パンツ問題を徹底ブロックできてしまう。
「なにをしていてもパンツが見えないし、見えそうにもない……これなに……発明?」
初めてマキシ丈ワンピースを着た私は、始終そんなことを考えていた。
上の子とカードゲームをするときも、末っ子を抱き上げるときも、食べこぼしを片付けるときも、足元に子どもたちがまとわりついているときも、いつだってパンツの心配がいらなかった。
さらに、私が購入したものに関して言えば、両サイドにポケットがついていた。これが最高だった。
これからマキシ丈ワンピースを買う方は、ポケットが非常に大事なので、よく見て買ってほしい。
スマホをいったいみなさん、どうやって持ち歩いているのか、ほんとうに疑問なのだ。
子育てを7年やってきたけれど、模範解答が見つからずにいた。
電話がかかってきたときに、子どもが思わぬシャッターチャンスを見せたときに、しゃっと素早く取り出したいのに、両手、または片手がたいていふさがっているのが、母という生き物だ。
出先で鞄から出そうとしても、不自由この上ない。
家の中にいたって、ベランダに行ったり、お風呂を洗ったり、台所に行ったりずっとうろうろしているから、いざほしいときにスマホをおろおろ探すなんて日常茶飯事だ。
ズボンのポケットは、たいていお尻がピタッとしているから、立ったりしゃがんだりを、頻回に繰り返していると、そのうちスマホが、ポロリと落ちる。
鞄に忍ばせると、片手がふさがっている場合、取り出しにくい。
ゴムスカートのポケットにいれたりしたら、そのスマホ本体の重さで、スカートが地味にずり下がってくる。
ここで、マキシ丈ワンピースの登場だ。
マキシ丈ワンピースに、ポケットがあることの無敵さったらない。
いかなる姿勢でいても、スマホが落ちることもなければ、ワンピースという性質上、スカートがずり落ちたりもしない。
小脇に子どもを抱きながら、華麗にスマホを取り出せる。
この自由さ!この身軽さ!!!革新的ではないだろうか。
少なくとも私はこの7年間でこんなに身軽さを感じたことって、そうそうない。
つまり、全方位的に、マキシ丈ワンピースが、絶好調な今日この頃だ。
今生の普段着は、もうこれだけでいい、とさえ思ってしまう。
ワンピースなばっかりに、授乳できない問題があるのは、とても罪深いけれど、授乳中のお母さんは、授乳が終わったら是非、マキシ丈ワンピースのことを、思い出してほしい。
そして、全国のマキシ丈ワンピースユーザーのお母さんたち、自転車のタイヤに巻き込まないように是非、気を付けてね。
それ以外のすべての側面において、マキシ丈ワンピースって、最高の上を行く、最高の子育て服だから。