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公開 2019年08月31日  

ボッチだった私が、3姉妹を「仲良しグループ」にするのを止めた話

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お弁当グループに入れてもらえず、班から班へさまよった私。
長女と次女が2人で盛り上がっているのを横目で見ている末っ子。
「末っ子ちゃんも入れてあげてよ・・・!」
思わずそう言ったとき、私は一人で泣いていた。


末っ子ちゃんも入れてあげてよ…


最近、学校から帰ると、いつも長女と次女が2人でテレビゲームをしている。

マリオが穴に落ちるたびに次女が後ろにひっくり返って笑ったり、その上に長女が乗っかって笑ったり、それに次女が「重いよ~」とまた笑ったり。

2人がゲラゲラ笑って盛り上がっている中、少し離れたところで末っ子は1人で絵を描いていた。

「末っ子ちゃん、お母さんと一緒にお絵かきをしようか」と言っても、末っ子は「う~ん…」と曖昧な返事をして、ちらっと姉たちの方をみた。

私は2人の姉に「ちょっと末っ子ちゃんも入れてあげて」と声をかける。

すると長女が「あ~、どうかなあ、次女ちゃんに聞いてみて」と答え、次女も「え~っと・・・長女ちゃんはどうなの?」と答えを濁した。

「入れてあげてよ・・・」と私が再度頼むと、長女が「う~ん・・・」と唸って、そのままコントローラーを握っていた。

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末っ子はそれを聞いて、「大丈夫、末っ子ちゃんお絵かきしたいから」と色を塗り続けた。

私も末っ子と一緒にお絵かきをしたが、末っ子はずっと黙っていた。

末っ子が色を塗り終えて顔をあげると、「…ママ、なんで泣いてるの?」と聞いてきた。

私は「末っ子ちゃんも入れてあげてよ…!!どうしてそんな…たらい回しみたいな返事を…!!」と涙声で言った。

長女と次女はえっ…?と言う顔で私を見る。

末っ子もどうしたの?という顔で私を見る。

…やってしまった。


長女と次女がゲームの手を止めて、泣いている私のそばに来た。

「最近、長女ちゃんと次女ちゃんが2人でべったり遊んでいて・・・それでいつも末っ子ちゃんが入れないのを見てると…お母さん、ずっと胸のあたりが苦しくて…ごめん…誰も困っていなかったのに、お母さんが勝手に…」

わっと色々思い出す。

中学校、給食の班、どこにも入れなかった、私…


子育てと自分のつらかった過去は分けないといけない


私はポツポツと子ども達に話し始めた。

「お母さん、中学生のときにクラスで仲間はずれにされたことあって…」

「うんうん。」

「クラスで好きなグループでお弁当食べるのね。そのとき、グループに入れない子を作らないってルールだったの。だから、お母さん、どこかのグループに入れてもらわないといけなくて、『一緒に食べてもいい?』って1つ1つのグループに聞いて回ったの。」

「それで?」

「全部断られて、また始めに戻って聞いて…そのときはっきり断るんじゃなくて『え~?わかんない、隣の子に聞いて』『…え?私もわかんない。』ってたらい回しにする感じで、入れてくれなくて。 」

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「それはきついね」と、次女が顔をくしゃっとした。

「だから、今日のは見ててつらかった…末っ子ちゃんをたらい回しにしてるように見えちゃって… 。
ダメならダメで、『後で一緒に遊ぼうね、ちょっと待っててね』とかさ…はっきりしてあげて欲しかったんだ。」

長女が「いや、本当に、私は次女ちゃんはどうなんかなって聞いただけで。」と言う。

それを聞いて末っ子も「うん、末っ子ちゃんそんなにマリオ好きじゃないし…お絵かきしたかったし …」と言った。

私はそれを聞いて「そっか…」とうなずいた。

『末っ子はゲームに入れなくて寂しい』って、私が勝手にストーリーを作ってたんだ…。


「3人姉妹だと、2人で盛り上がって1 人が入れないときあるよね。
それを見るとしんどくなってしまう。
つらかった記憶と重なっちゃって。
昔の自分と子どもたちの気持ちは、きちんと分けて子育てしないといけないのに。」

私がそう言うと、長女がすぐに割って入り、「それは無理じゃないかなあ。」と言った。

「昔のつらかった記憶って、消したと思っても残ってるもんじゃない?
消そうとして頑張って無理が出てくるより、こうやって全部教えてくれて『そうだったんだ~』ってお母さんの気持ちがわかる方がいいよ。」と言った。

次女も「うん、どういう気持ちなのか聞かせてくれた方がすっきりするよ。お母さん、小さい頃大変だったんだね。私も一回仲間はずれにされたことあるから分かるよ。よく頑張ったよ。」と言って私のそばにピタッとくっついた。

そして、「よしよし」と言いながら、私の頭をゆっくりと撫でてくれた。


お母さんは何がつらかったの…?


次女が「でも、お母さんは何がつらかったの?みんなと一緒にお弁当を食べたかったのに食べられなかったこと?」と聞いてきた。

私が「ううん、そうでもない。1人で食べるのは別に平気。お母さん、1人でぼんやりするとリラックスできる方だし。」と答える。

すると長女が「じゃあ、班で食べなきゃいけないってルールを作った先生が間違ってたんじゃないかなあ。1人も2人でもグループでも、好きなスタイルでそれぞれ食べていいですよ、1人で寂しいって人は相談してねって感じにしたら良かったんじゃない?」と言った。

あ…!と思わず声が出た。

そのルールを作った『先生』って、『私』のことだ…。


3姉妹で、1人だけがお絵かきしている様子が苦しくて、2人がゲームで盛り上がっていたら心のどこかがモヤモヤして。

『いつも3人で仲良く遊ぶ姉妹』にしようとしていた。

2対1になるのは、いけないことだと思っていた。

誰かが家で1人になっていたら、それは寂しいことだから無くさないと・・・って思ってた。

そうじゃない。

1人でも2人でも3人でも、どんなスタイルでも楽しめる姉妹。

もし1人で寂しかったら、相談しやすいように寄り添っておけばよかったんだ。


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1人で過ごせる居心地のいい場所も、作っていこう


私は子ども用の絵のテキストを何冊か買ってきた。

リサイクルショップに行ってトレース台も買ってきた。

なぞって絵の練習ができるようなイラストの見本も買ってきた。

リビングに置いておくと、末っ子が絵を描き始めた。

長女と次女もテーブルにやってきて一緒にワイワイ絵を描き始めた。

しばらくすると次女は飽きてゲームをやり始めた。

みんなが自由にあちこち行ける空間。

そして、1人でも時間を楽しめる環境。

後は何があればいいかなあ…

「風船をたくさん膨らましておくといいよ。急に風船ゲームしたくなるときあるから!」と、次女。

ああ、工夫。子育ては工夫なんだなあ。

こうあるべきだとか、こうに違いない、とかじゃなくて。



誰かが気持ちを知ってくれているということ


あれから、子どもたちは3人で絵を描くことが増えた。

何の絵か当てるクイズにしたり、お絵かきしりとりをしたり、長女が書いた絵をみんなでぬり絵をしたり。

長女が絵を描きながら私に言った。

「この前末っ子ちゃんに謝ったんだ。次女ちゃんと2人で遊ぶことが多かったと思うよ、ごめんねって。もっと3人で一緒に遊ぼうねって。」

それを聞いて、末っ子がイシシ~!と笑った。


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「あのときお母さんが全部吐き出してくれて良かったよ。私、あれから色々考えてたんだ。」

「うんうん。」

「私が1年生の時、次女ちゃんと末っ子ちゃんが保育園ネタで盛り上がってて、それに入れなくてさみしいなって記憶があって。
だから、今度は末っ子ちゃんが入れない番!これは順番なんだ!って、そのさみしい記憶を埋めようとしてたところがあったかもなって。」

「そっか。長女ちゃん、1 年生のときが 1 番きつかったよね…引っ越したばかりだったから。」

「うん、あの時きつかったんだよなって気持ちがずっと心の中にあってね…。」

長女をハグすると、長女は私の胸に顔をうずめて力一杯しがみついてきた。

「こうやって昔の悲しい記憶を聞いてもらって、知ってもらって、慰めてもらうとね、もうその悲しい記憶を別の何かで埋めなくてもいいかなって思うよ。
言葉に出すの大事だね。
自分でもね、自分の気持ちがよくわかってなかった所があったから…。」

長女は少しスッキリした顔になって言った。

「誰かが自分の気持ちを知っててくれるって、いいもんだよね。安らぐよ。」



※ この記事は2024年11月19日に再公開された記事です。

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