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公開 2020年01月10日  

本当に自分の子が一番?そんなわたしを変えた「恐怖」の正体<第三回投稿コンテスト NO.41>

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出産前から看護師として子どもたちと触れ合ってきたという「もちうさぎ。」さん。子どもが産まれてからも「わが子が一番かわいい」という気持ちにはなれずにいましたが…。



私は小児科で5年務めた後、現在保育園の看護師として働いています。

自分の子どもを腕に抱く前から他人の子どもを抱っこしていたわけですが、当然、自分の子どもをだっこするのによく聞く『ドキドキ・ワクワク・恐怖・感動』という感情はまた格別だと思っていました。

でも、蓋を開けてみたら…


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わ~、自分の子だと言う喜びはあるものの、赤ちゃんをだっこするのには自分でも驚くほど平然と行っている自分がいました。

慣れてしまっているんです。

それどころか、パパに「こうやってだっこすると楽だよ」なんて教えている始末。

分娩の後も、42時間という長い陣痛を耐えきった達成感で感動はすっ飛んでいました。



自分の子どもは、確かにすごく可愛い。

でも、同じ時期に産まれた友人の子どももやっぱり可愛い。

自分の子が一番!なんて思わないな…。

私は果たして母性なんてものがあるのかしら…?とちょっと悩んだ時期もありました。

それでも日々子どもと過ごしていくうちに、私にはある感情が段々と芽生えてきているのに気付きました。

それは、『恐怖』です。



はじめは、10ヶ月の時。

子どもが熱性けいれんを起こした時でした。

熱性けいれんなんて、今まで働いてきた中で散々見てきています。

対処法の説明も家族にしていた私なのに。

怖くて、オロオロする事しか出来ませんでした。

結局、冷静になってあとあとよく考えてみると、嘔吐の後にひきつけを起こした様子だったので熱性けいれんではなかったなと思ったんですが。

あの時は心臓が凍る思いでした。


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そして、うちの子には喘息があります。

2ヶ月の時にRSウイルスに罹患して入院した後、どうも気管が弱くなってしまったようで、季節の変わり目や風邪を引いたときに喘息になってしまう体質になってしまったのです。

喘息自体は1歳になった今オノンと言う薬を飲んだり、小児科へ吸入通いしたりすることで大きな発作は起こしていないんですが…。

その喘息がある事で、とても怖かったのがインフルエンザ。

子どもには軽度の卵アレルギーがあるため、インフルエンザワクチンを見合わせていたのがあだになりました。



保育園からもらってきたインフルエンザ。

0-5歳の小さな子どもがインフルエンザに罹患することはとても怖く、重症化すれば最悪死亡することも私は知っていました。

たかがインフルエンザじゃない。

インフルエンザ脳症。

呼吸器合併。

知っている単語がぐるぐると頭を回り、正直、生きた心地がしませんでした。

子どもに何かあったらどうしよう。

それは紛れもなく『恐怖』でした。

他の子には感じない、途方もない『恐怖』。

その時、初めてこの子が元気に生きていることが最大の感動なんだと旦那と話をしました。



「いなくなった時のことを想像したことある?」と聞いたら、「想像できない」と。

私は、きっと立っているのも難しいだろうと思うのです。

今まで働いてきた中で、出会って来たお母さんたちはみんなこんな思いをしていたのか…。

自分が痛い思いをするよりも痛い、自分が代わりに苦しんであげたいという思い。

頭では理解していたつもりでしたが、実際インフルエンザに苦しむ子どもを見て、ようやく心から理解出来ました。


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インフルエンザ自体は、タミフルがよく効いたのか2日目には熱が下がり、すっかり元気になってくれました。

私が恐怖していた合併症も何もなく、なんだか拍子抜けするほどあっさりと治ってくれたことに心から感謝しました。

入院していたらもっと大変だっただろうと思います。

2ヶ月の時とは比べ物にならないくらいよく動き、遊びの幅も広がっているものですから。

今は、落ち着きなく家の中をぐるぐると回ったり、とめどない「まんま」アピールを見せてくれます。



もちろん子育てには可愛いだけじゃないこともあります。

しんどいな、疲れたな…。

と、一日に5、6人の子どもの看護をしてきた私でも思う事があります。

でも。

おっぱいを初めてあげたこと。

一緒に笑ったり、ご飯を食べたり出来るようになってきたこと。

寝返り、おすわり、たっち…。歩き出した時、旦那と一緒にハラハラしたこと。



それは家族でしか味わえない。

もちろん、子どもはみんな可愛いです。

保育園の子どもたちも愛おしい。

けれど、同じなようで同じではなく、少しだけベクトルが違う愛おしさ。

病気になって初めて分かるというのも変な話ですが、子ども慣れしている私にとってはものすごく怖くて、同時に感動した思い出でもあります。

この子と、ずっといられますように。

一緒に歩んでいけることに感謝して、これからも日々過ごしていきたいです。


(ライター:もちうさぎ。)


※ この記事は2024年10月17日に再公開された記事です。

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