「カワイイ!」
出産後、初めて我が子を観た瞬間、私は思わず叫んでしまいました。
そして叫びながら私は、涙しました。
今日からこの最高にカワイイ赤ちゃんを、私は育てることができるんだ!
そう思うと嬉しくて嬉しくて。
しかし我が子との出会いを果たしたその日。
思いがけず私は、別の病院へ転院しなくてはならなくなるのでした……。
出産後、お尻に感じた謎の痛み…。喜びから一転、まさかの展開に<第三回投稿コンテスト NO.74>
12,317 View初めての子どもを出産し、これからの日々を思い、喜びに満ち溢れていた、めだちゃすさん。しかし、謎の痛みが彼女を襲い…。“出産のリアル”をつづったエモストーリーです。
我が子に出会えた喜びに涙!
お尻に激痛! もしかして、痔?
陣痛室での点滴後、私は病室に戻り、改めて赤ちゃんとの対面を果たしました。
「赤ちゃんを抱っこしてみますか?」
助産婦さんに尋ねられました。
もちろん真っ先に我が子を抱きしめたかったのですが、
あれ、なんか、お尻が痛い……?
違和感があり抱くことに不安を覚えた私は、泣く泣く初抱っこを旦那に譲ったのでした。
その後も痛みはあったものの、出産後はこんなものかと、貰った痛み止めを服用して横になっていました。
しかし夜になり、寝ようとしても寝つくことができず、徐々に痛みは増し……
痛、イタタタタ!
私は飛び起きました。
お尻をグイーッと押すようなその痛み……真っ先に思い浮かんだのは痔です。
これまで私は痔になったことがありませんでしたが、産後痔になる場合もあることを、聞いたことがあったのです。
痛みを堪えながらトイレに駆け込むと、産褥パッドは真っ赤に染まり、パンツまで血で濡れていました。
いきみ過ぎてお尻が裂けたのかも……!?
私は震える指でトイレのナースコールを押しました。
絶望……この病院では治療できません
助産婦さんに支えられながら再び向かったのは、分娩室でした。
分娩室のベッドに寝転ぶ頃には、お尻の痛みがピークに。
えっ、陣痛は終わったはずだよね? なんでこんなに痛いの?
まだ痛みに耐えなきゃならないの!?
頭の中はパニックで、とにかく痛みから逃れたかった私は、呪文のように麻酔をください、麻酔をくださいと呟いていました。
しかし私の願いも虚しく、酷い痛みの中始まったのは内診のグリグリです。
「これは……うちでは治療できませんね」
そう告げられても、麻酔を諦めきれなかった私は、泣いて医師にお願いしましたが、治療は転院先で受けることとなりました。
幸い転院先の県立病院は産婦人科からすぐ近くでした。
救急車に押し込まれ、旦那には手を握られ、看護師には「気をしっかり!」と声をかけられ、まるでドラマのようだなと、全てが他人事のように思えました。
そして県立病院で診察を受けて初めて、痛みの原因は出産後産道に血腫ができることによって起こる、「産道損傷」なのだと聞かされました。
血腫の大きさは拳大ほどで、そのままにしていると、出血多量で危なかったそうです。
医師と数人の助手が待機している手術室に運ばれ、そこで私は人生初の下半身麻酔と手術を受けました。
麻酔で痛みがひき、安堵するのと同時に私は後悔をしていました。
手術が失敗したらどうなるんだろう。
もしかしてもう赤ちゃんには会えないかもしれない。
それなら、痛みを我慢してでも病室で抱っこをしておけばよかった……。
薄れていく意識の中、頭に浮かぶのは生まれたての我が子ばかりでした。
新たな病院での入院生活
手術は成功しました。
しかし出血量が多く、輸血と術後の経過観察をしなければならないということで、そのまま県立病院へ入院となりました。
入院中は毎日、旦那や実母が私の赤ちゃんの様子を見に行ってくれました。
赤ちゃんの写真を送ってくれたり、赤ちゃんがどのように過ごしていたか、私が寂しくないようにと逐一報告してくれました。
とはいえ同室のお母さんたちが、赤ちゃんに母乳をあげる姿を見るのは辛かったです。
赤ちゃんの泣き声を聞きながら、私も一緒に泣いてしまいそうになりました。
でも今一番辛いのは、生まれたばかりなのにひとりぼっちで産婦人科にいる我が子だと、涙を堪えて自分を奮い立たせました。
術後の経過を良くするため体を動かすようにしたり、母乳がスムーズに出るよう3時間ごとに絞ったりと、離れたところでも私が赤ちゃんのために出来ることをしたのです。
我が子との再会!
3日の入院を経て、医師に許可をもらい元の病院へ戻れることになりました。
元の産婦人科にもどると、すれ違う助産婦さんや医師に、「大変だったね」「おかえり!」と声をかけてもらい、とても有り難かったですが気恥ずかしかったです。
病室で待っていると、赤ちゃんを連れて助産婦さんがやってきました。
いよいよ念願の我が子との再会! ……でしたが、ちゃんと私を母親と認識してくれるだろうか、泣かれないだろうかなどと考えると、ギリギリ胃が痛みました。
たった3日ぶりなのに、しわしわだった赤ちゃんの肌はつるんとしていて、つんと澄ましたその寝顔は少しお姉さんになったように見えました。
助産婦さんに支えられながら初めて腕に抱いたそのとき……なんと赤ちゃんは私ににっこりと笑いかけてくれたのです。
所謂「生理的微笑」だったのでしょう。
しかしその笑顔で、それまでの痛みや寂しかった気持ちも、一気にどこかに吹き飛んでいきました。
現在娘は4ヶ月を過ぎ、母子共に健康です。
まだまだ弱虫で失敗ばかりの母親ではありますが、我が子のそばにいられることに、感謝する毎日です。
(ライター:めだちゃす)
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