「専業主婦なんだから家事も育児も普通にこなしてよ」
そんな言葉を投げかける、“私の中に住むモラハラ夫”が産後なかなか消えてくれなかった話をしようと思う。
もともと家事が得意ではなかったことに加え、初めての育児は分からないことばかり。
妊娠中に夫が転勤になり、周りに知り合いはゼロ。
唯一頼れる存在のはずの夫は、寝ている間に出勤し、帰りも深夜帰り。
夜泣きは2時間おき。
火がついたように泣くので産まれてすぐに夫には別室で寝てもらうことになった。
完全なワンオペ育児だった。
産まれたばかりの赤ちゃんとの生活は、常に寝不足、栄養不足。
哺乳瓶は何とか消毒していたものの、シンクには常に洗い物が溜まり、娘の沐浴で精一杯で私自身のお風呂は3日入らないことはザラだった。
自分の身体と同じくらい、部屋は汚れて散らかっていた。
食事は主にレンジで作れるパスタ。
それでも温かいうちに食べられればいい方で、たいてい温めたら娘が泣いて結局食べられずに冷たく固くなった小麦粉の塊を仕方なく口に運んだ。
洗い物をするくらいなら、お風呂に入る時間があったら、掃除をする暇があったら、ご飯を作るくらいなら、ただただ横になりたかった。
娘は可愛い。
世界一可愛い。
だけど私は限界だった。
自分を甘やかすことができるのも、母の強さ。一時保育に救われた<第三回投稿コンテスト NO.117>
12,148 View初めての育児で、自分が決めた「こうあるべき」に苦しめられていたというhicoさん。保育園の一時保育を利用するようになったのが、転機だといいます。
「ずっと家にいて育児しかしてないのにどうしてこんなに部屋が散らかるの?」
「こんな部屋で過ごさせて娘が可哀想」
「疲れて帰ってきているのにご飯一つできてないなんて」
娘を何とか寝かせて散らかった部屋で横になっていると、そんな言葉がぐるぐると頭を駆け巡った。
家族にこうしてあげたいと思えば思うほど、出来なかったときに苦しくなった。
私の中に住むモラハラ夫の正体は、罪悪感の塊だった。
こんなはずじゃなかった。
育児も家事ももっとしっかりやりたかった。
SNSで幸せそうな赤ちゃんと一緒に優しく微笑むママたちのように。
娘にも可愛い服を着せて、もっと清潔な部屋で、美味しい手作りのご飯を食べさせてあげたかった。
想像していた育児と実際のギャップにただただ涙が出た。
今思えばリアルの方の夫にもっと頼れば良かったのだが、夫自身も新しい職場で大きなストレスを抱えており、夫婦共倒れになるのを恐れ言い出せなかった。
心身共に弱っていた私は、たったそれだけのことで人生に絶望していた。
そんな私にも転機が訪れた。
週二回、保育園の一時保育を利用することになったのだ。
もちろんそこにも葛藤があった。
「働いてもいないのに、保育園に預けるなんて可哀想。」
結局のところ、預けることを決めた後もモラハラ夫の声はなかなか消えなかった。
娘を愛しているから一緒にいたい。
預けたくはない。
だけどこのままでは私が潰れてしまう。
悩んだ挙句、娘のために利用を決めた。
結論から言うと、これが、大、大、大正解だった。
もしタイムスリップができるのなら、悩みながら利用を決めたあの時の私をよくやったと褒めたたえたい。
一人の時間ができると、ひたすら眠った。
暖かい湯船につかり、レトルトじゃない美味しいご飯を食べた。
私はみるみるうちに回復していった。
娘と過ごす時間自体は減ったものの、自分の時間が取れることで気持ちに余裕ができ外に出かけられるようになった。
知り合いゼロの私だったが、出先で気の合うママ友にも出会えた。
私自身に気持ちの余裕ができたからかは不明だが娘の夜泣きも格段に少なくなった。
家事は相変わらず苦手で思い描いていたようにはできなかったけれど、それでも少しずつ、私の中のモラハラ夫の声が小さくなっていくのを感じた。
よく“母は強し”という言葉を耳にするが、自分を甘やかすことができるようになることも一つの強さだと思う。
娘を産む前の私はたくさんの“べき”で溢れていた。
“こうあるべき”という考えに固執して、自分で自分を苦しめていた。
人と比べて落ち込むことも多かったが、それをジャッジしているのはいつも自分だと気づいた。
「専業主婦なんだから家事も育児も普通にこなしてよ」
自分自身にそう言い続けてきた。
今でも私は、育児も家事もうまくこなせていないかもしれない。
部屋は散らかっているし、娘の一番の好物はレトルトカレーだ。
お菓子も与えすぎているかもしれない。
だけど、清潔な部屋よりも、手作りのご飯よりも、母親がストレスなく笑顔で過ごせていることの方が何倍も大切だと知っている。
「完璧に出来なくてもいいんだよ」
私の中のモラハラ夫が現れるたび、そう自分に言い続けていこうと思う。
そしてもし、同じ境遇で悩んでる人がいたら声を大にして言いたい。
私のように一時保育でも良いし、ファミリーサポートやホームスタート、家事代行だっていい。
自分一人で抱え込まず、どうかたくさんの人に頼って、出来るだけ自分を甘やかして楽しく育児してほしい。
それがきっと家族のためにもなるから。
2歳になった娘の後を追いながら、そう強く思っている。
(ライター:hico)
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