1人のママがTwitterに投稿したマンガ『伝説のお母さん』。
たちまち多くの共感を呼んで拡散され、書籍化、さらにはドラマ化も果たしました。
一見、破天荒にも思えるこのストーリーが生まれたきっかけは?
作者・かねもとさんにお伺いしました。
"戦うママ"を大好きな世界観で感じたい!『伝説のお母さん』ができるまで
21,432 View育児×RPGの斬新な設定が話題のマンガ『伝説のお母さん』。
作品はどのように生まれたのか、作者のかねもとさんにインタビューしました。
大好きなRPG世界には、戦うお母さんがいなかった
―本作は、魔法やモンスターが登場するRPGの世界が舞台ですね。
なぜ、待機児童など現代日本が抱える社会問題をファンタジーの世界観に投影させようと考えたのでしょうか?
かねもとさん:
私はゲーム、特にファンタジーRPGが大好きなんです。
子どもが生まれてからもゲームをする機会があったのですが、ふと「そういえば、子どもがいながら戦う女性キャラがいない」と思ったんですね。
母親が主役の作品はマンガやドラマにもあります。
でも私は大好きなファンタジーRPGの世界観でお母さんが主役のお話が見たくて、自分で描くことにしました。
主人公が直面する「待機児童」は、これ1つの問題ではなくて、さまざまな社会問題の影響を受けています。
結果的に女性格差の話や夫婦間のエピソードなどが出てきた形です。
―作品には待機児童以外にも、父親の育児参加、職場復帰のむずかしさなど、さまざまな課題が登場しますね。
とてもリアリティがあったのですが、ご自身の体験が元になっているのですか?
かねもとさん:
夫の育児への不参加ぶりや、保育所への申し込み、母親がやって当たり前という空気は自分が感じたことが多いですね。
それ以外は自分の話やニュースで見聞きしたこと、友達との会話で感じたこと、SNSで語られている育児エピソードに感じた印象などです。
現実にはもっとひどい話が多いので、笑える範囲でしか生かしていないのですが…。
魔法は使えないけど…主人公夫婦と重なるところも
―主人公もはじめ、「女性は家庭で子育てするもの」という考えにとらわれていました。
周囲の手助けを受けながら戦いの場に復帰する姿は、ご自身と重なりますか?
私自身、上の子を産んだときはそれが当たり前だと思っていて、仕事から帰ってきた夫になにかを頼むことはありませんでした。
仕事の時間は自分の工夫で作って、一時保育を予約し、家のことはすべて私がやり、自由時間が欲しいとは言い出せず…という母親でした。
でも仕事の時間が増えたり2人目の子が生まれたりして、どうしても無理なところが出てきて、「これは、私ひとりでは無理だ」と夫と家事育児の分担をはじめました。
最初は色々と揉めましたが、今では仲間と言えるくらい一緒にやってもらってます。
その夫婦の戦いの過程は、魔法もモンスターも出てきませんが、主人公に通じるものがあるかもしれません。
すべてのはじまりは、一言のセリフだった
―作中で特に強い思いを込めた場面、思い入れのある部分を教えてください。
かねもとさん:
やっぱり「魔王が復活した!でも保育所があいてない」という最初のセリフでしょうか。
その一言からすべてのストーリーがはじまり、ここまでお話が広がりました。
なぜ保育所が空いていないのか、どうしてそれが大変なことなのか?と考えるきっかけになったことがこのお話を広げてくれ、私のなかでも大きな転機でした。
かねもとさん:
それから、これは作品の終盤になりますが「夫が仲間になった」シーンは私のなかでひとつのゴールだったので、特別な思いがあります。
魔法使い(主人公)の身勝手な夫を許すにはどうしたらいいのだろう?と悩みながら描いていました。
この作品を読みながら、同じようにパートナーの協力を得られず子育てをしているお母さんはいるはずなので、その人たちにとっても「夫がこうしてくれたら許せる」と感じてもらえる展開や言葉が欲しかったのです。
それを考え抜いた末に、過去のことを謝るとか家事育児の割合についてだけではなく、「夫と一緒に歩いていきたい」という結論になりました。
その気持ちがあれば、具体的にどうするかは家族の形だけあると思ったので。
―今回ドラマ化されたことで、さらに多くの方が作品を目にするようになりました。
どんな方にどのようなメッセージを届けたいですか?
かねもとさん:
どうして子どもが生まれると、女は母親のみに徹するべきという圧力があるのか。
女は〇〇であるべきという空気があるのか。
そんなもやもやを少しでも感じたことがある人に届いたらうれしいです。
でも、正解はひとつではないので、「こういうことを言っている人もいるんだ」ぐらいの感じで読んでほしいです。
魔法のない世界で戦うすべてのお母さんたちにとって、この作品が少しでも回復薬の役目を果たせますように。
―かねもとさん、ありがとうございました!
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