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公開 2020年05月06日  

不登校だった息子。「行かなくていいよ」と言った親の理想と、本音

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幅広いジャンルで活躍するライターの栃尾江美さん。SNSやブログでも精力的に発信されています。そのなかから、当時小学校3年生と年中だった息子さん2人が、不登校になり悩んだ様子を綴った「息子が学校へ行けなくなって」を前編・後編に分けてご紹介。【前編】



小学校3年生の長男が学校へ行けなくなった。それに伴い、年中の次男も保育園へ行かない。


夏休みに学童へ行けなくなった


我が家は夫婦で働いているので、小3の息子は夏休みに学童へ行く。

最初は、「友達にあだ名でからかわれるのが嫌だ」という。

何日もいやだいやだと言い続ける。

「気にしなくていいよ」と最初は声をかけていたが、本人が気にしているのだから仕方ない。

それ以前にHSCについて啓発しているkokokakuさんと知り合って、わが子はHSC(+HSS)ではないかと思っていたので、傷つきやすく、引きずってしまう気持ちがあるのだろうと想像できた。

※HSC(Highly Sensitive Child)とは、人一倍敏感な特性をもつ子どものこと。HSS(High Sensation Seeking)とは、活動的で刺激を追い求める性質のこと。


家にいる間、ずっと気持ちが落ちている。

うなだれている。

ある日、布団から出られなくなった。

無理やり起こす、リビングへ連れていく。

だけど気力がまるでない。

このままでは、どうなってしまうのだろう。

「行かなくてもいいよ」と言った。

もう、一人で留守番できるし。

「本当?ママ、ありがとう」

驚いた顔。

安心した顔。

救われた顔。

学童の先生に電話をした。

あだ名(名前をもじったもの)でからかわれることを話した。

学童の先生は親身になってくれた。

「名前でからかわれるのは、本当に傷つきます。子どもが自分で片づけられる問題ではありません。私たちがよく言って聞かせますので」

と言ってくれた。

私ははらはらと泣いた。

いったん解決した。

ところが、また、今度は別の友だちと小競り合いをして、行きたくない。

今度は、先生に注意されたことが嫌だ。

休む方が多くなってしまった。


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2学期の初日と、それから


学童だからよかったけど、いずれ学校が始まる。

私は怖かった。

学校に行けなくなったらどうなってしまうのだろう。

学童のように、どんどん休みがちになってしまったら……?

初日、不安な気持ちは的中した。

行くと言っていたのに、行きたくない。

体が動かない。

だらだらと用意をする。

何度言っても、怒鳴っても、全然動けない。

私はもう疲れてしまった。

これ以上、強制していかせることはできない。

だけどトボトボと、結局行った。

前の日まで私は、自殺防止のためのキャンペーンをたくさん目にした。

「逃げていいんだよ」

「行きたくないなら行かなくていい」

そんなメッセージ。

私は息子の背中を見ながら、一番大切にするものは何なのかと考えた。

一番大切なものはこの子の命だった。

強制的に行かせていたら、私はこの子を怒り続けることになる。

「死にたい」と親に言えなくて、遺書にだけ書いて、命を落としてしまった子どもたちのことを考えた。

それだけは絶対に防がなくてはいけない。

翌日もやはり「行きたくない」と言う。

私は前日の朝、彼の背中を見ながら思った最悪の事態を想像した。

「行かなくていいよ」そう言った。

でも本当は行ってほしい。

どうすればいいのだろう。


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学校の先生、スクールカウンセラーの先生


それから、2学期に行けたのは数日。

学校では、先生の判断で病気ということにしている。

学校の先生と、スクールカウンセラーの先生には、時間をもらって話した。

週に1日は、短時間だけど学校に行くことにした。


コミュニティで相談する


コミュニティで相談をした。

「行きたくないって言えるのはすごいよ」

「お母さんを信頼しているってことだよ」

「学校に行かなくたって大丈夫だよ」

そんな言葉をくれる。

とても勇気になった。

コミュニティの中に「自分が不登校だった」という人もいた。

その人はそのあとで自ら勉強をして、県で一番の大学にも通っている。

その存在が、私にとても勇気をくれた。

その後も、「時間がたくさんあるので漫画を読ませたいんだけど、小3だと何がいいかな」とか、たくさん相談した。


「自分の子ども」と考えると


「みんなは『学校なんて行かなくていいよ』と言うけど俺はそんな風にすっきり思えないんだ」

って言ってくれた人がいた。

そりゃそうだ。

「自分の子どもだったら」ってちゃんと考えてくれるのはとてもありがたい。

学校に意味があるのはわかってる。

実は子ども本人もわかっている。

長男はママのことが大好きだ。

学校に行けばママが喜ぶことも知っている。

みんなが安心するって知っている。

だけど、行きたくない気持ちをごまかせない。

これってすごく正直なことだ。

ただ、私はどうにもならない気持ちを抱えていた。

仕事もあるのでずっとこの子を見ているわけにはいかない。

一番は勉強の心配だ。

学校に行っている子は1日5時間も6時間も勉強しているのだ。

自宅でそんなに勉強するなんて、できるわけない。


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不登校だった子のお母さん


不登校だったという人のお母さんに話を聞くことができた。

今大学生だが、小3~中3まで不登校だったという。

LINEでつながってもらって。

たくさん話を聞いた。

いろいろな気持ちの変化。

子どものために必死で、罪悪感にもさいなまれて……。

だけど、学校へ行くことをあきらめてから、いろいろなことがよくなっていったという。

子どもにも笑顔が戻った。

自分も楽になれた。

そんな気持ちになれるまで、2年かかったのだとか。

「おかしくなっていたと思います」

その人は言った。

わかる。

よくわかる。

「今日は(学校へ)行ってくれるかもしれない」と思い続けて、それが叶わないということを、2年続ける。

そんなこと、心を壊さずにできるだろうか。

それを聞いたときにすごく心が晴れた。

行かない前提で考える。

それが私たちを健康にしていくし、長男のためである。

学校へ行かないのは本人も気にしているのだ。

それ以上罪悪感を植え付けてどうなるというのだ。

罪悪感はいらない。

行けるようになればそれでいいけど、行かなくてもよくなる方法を考えよう。


<後編へ続く>


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(編集:コノビー編集部 岡田)

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※ この記事は2024年11月10日に再公開された記事です。

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